同じ長さの音であっても、2つの短いビープ音の連続より、長い1つのビープ音の方が長く再生されたと感じる「ワン・イズ・モア・イリュージョン」と呼ばれる錯覚を応用し、1000人を対象とした調査で、実際に聞こえる音と同様に、無音でも時間の感覚がゆがむことをジョンズホプキンス大学のイアン・フィリップス氏らの研究チームが報告しています。
The perception of silence | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2301463120
Echoes of Absence: Study Suggests We Can ‘Hear’ Silence – Neuroscience News
https://neurosciencenews.com/hearing-silence-23610/
Silence can be ‘heard’, can distort one’s perception of time, research says
https://www.devdiscourse.com/article/entertainment/2518954-silence-can-be-heard-can-distort-ones-perception-of-time-research-says
Experiment Shows Humans Really Can Hear Silence After All : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/experiment-shows-humans-really-can-hear-silence-after-all
研究チームのチャズ・ファイアストーン氏は「哲学者や科学者たちはこれまで、無音が知覚できるのかについて議論を重ねてきましたが、この議論の解決を目的とした科学的研究はこれまでありませんでした。そこで、私たちは実際に聞こえる音と同様の錯覚を無音の状態から得ることができれば、私たちの脳が音と同様に無音を認知できる証拠になると考えました」と述べています。
研究チームは「ワン・イズ・モア・イリュージョン」と呼ばれる、1回の長いビープ音が2回の短い連続ビープ音よりも長く聞こえるという錯覚を応用しました。実験では、にぎやかなレストランや駅をシュミレートしたサウンドが再生され、途中ですべての音が突然停止し、短い沈黙が生まれた後、再度サウンドが再生されました。
合計1000人を対象としたこの実験は「ワン・サイレンス・イズ・モア・イズ・モア・イリュージョン」と呼ばれ、参加者には「どちらの再生停止の時間の方が長かったか」についての質問が行われました。
7回にわたるテストの結果、参加者はすべての実験を通して元の「ワン・イズ・モア・イリュージョン」と同様に無音の状態でも1回の長い再生停止が2回の短い再生停止時間よりも長かったと報告しました。フィリップス氏は「音の聴覚処理に現れる特有の錯覚や効果は、無音でも発生しました。このことは人間が無音を聞くことができることを示唆しています」と述べています。
研究チームのゴー・チェ・ルイ氏は「無音は言葉通り音ではありません。音の欠如です。しかし、我々の調査によって人間は無音を認知できることが判明しました」と述べています。
研究チームは今後、音の途切れによる無音以外の沈黙を聞くことができるかどうかの調査に加え、無音を聞ける程度の調査を行う予定です。研究チームの今後の研究結果によっては、さまざまな聴覚障害の治療に役立つ可能性が期待されています。
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