マンション購入者、新築は中古より年収300万円高い&若い…返済負担率の意外な差


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「gettyimages」より

 マンション価格が新築、中古ともに大幅に上昇するなか、年収などによっては簡単には手が届かない存在になりつつありますが、それでも多くの人が苦労しながらも購入しています。実際、マンションを買っている人はどんな人なのか、新築と中古でどんな違いがあるのか、自分たちの条件だとどちらを買うことができるのでしょうか。

中古マンション価格は新築の6割強に

 新築マンションも中古マンションもこの数年、急速に価格が上昇していますが、なかでも中古マンションの価格上昇が際立っています。新築価格が高くなりすぎているため、中古に目を向けざるを得ない人が増えたためか、中古マンションへのニーズが高まり、それが新築マンション以上に中古マンションの価格を押し上げる力になっているのでしょう。

 たとえば、図表1にあるように10年前の2012年度には、新築マンションの発売価格の平均は4563万円で、中古マンションの成約価格の平均は2515万円でした。中古なら新築の55.1%の価格で手に入ったわけです。それが、2022年度になると新築の平均価格は6907万円まで上がり、中古も4343万円ですから、新築マンションに対する中古マンションの価格の割合は62.9%になります。まだまだ中古には新築に比べて割安感があるとはいっても、その割安感がしだいに小さくなっているのは間違いありません。

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sf_202204-202303.pdf (reins.or.jp)

中古の割安感が一番大きいのは埼玉県

 ただ、新築マンション価格に対する中古マンション価格の割合は、エリアによって微妙に異なっています。図表2にあるように、2022年度の平均価格をみると、都区部では新築が9899万円で、中古が5827万円ですから、中古なら新築の58.9%で手に入る計算です。それが都下だと新築が5218万円で、中古が3401万円ですから、新築価格に対する中古価格の割合は65.2%です。新築に比べると安いとはいえ、都区部に比べると割合が若干高くなっていて、中古の割安感が少し弱くなっています。

 周辺3県の新築価格に対する中古価格の割合は、神奈川県は64.8%、埼玉県は54.2%、千葉県は58.5%となっています。新築に対する中古価格の割安感は、埼玉県が一番大きく、次いで千葉県、都区部の順で、神奈川県や都下は割安感がやや弱くなっているといってよさそうです。エリアによって異なる面があるので注意しておきたいところです。

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都区部の新築は千葉県の中古の3.7倍

 いずれにしても、新築と中古では大きな価格差があるのは間違いありません。極端にいえば、都区部の新築の平均価格は9899万円に対して、千葉県の中古マンションは2650万円ですから、およそ3.7倍の価格差があります。こんなに差がありますから、新築と中古の購入者をみると、購入価格や自己資金などが大きく違ってくるのは間違いありません。

 国土交通省では毎年「住宅市場動向調査」で、住宅の形態別にどんな人がどんな資金計画で住宅を買っているのかなどの調査を実施しています。その最新版である令和4年度の調査結果では、住宅の形態別の購入資金や自己資金比率は図表3のようになっています。新築マンションと中古マンションを比較すると、新築の購入価格は5297万円で、中古は2941万円です。中古マンションの購入価格は新築マンションの55.7%です。図表1にあったように、首都圏全体の新築マンションと中古マンションの価格を比較すると、中古は新築の62.9%でしたから、それに比べると中古マンションの割合は若干低くなっているようです。

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001610299.pdf (mlit.go.jp)

中古マンションは価格の半分近い自己資金を用意

 この価格差がありますから、資金構成をみると、自己資金の割合にも差があります。新築は購入価格の42.8%の自己資金を用意していますが、中古はそれを上回る49.3%に達しています。中古マンションは価格が新築よりかなり安いこともあって、購入価格のほぼ半分の自己資金を用意して買っている人が多いようです。中古マンションを買う人のほうが、堅実な資金計画を立てているといっていいでしょう。

 その結果、年間の住宅ローン返済額をみると、図表4のようになっています。新築マンションは148.1万円で、中古マンションは101.3万円でした。中古マンションのほうが年間では46.8万円、月額にすれば4万円近く少なくなっています。しかし、年収に占める年間返済額の割合を示す返済負担率は、新築マンションが17.4%に対して、中古は16.6%です。年間の返済額には46.8万円の差があるのに、返済負担率はさほど変わりません。それが何を意味するのかといえば、新築マンションを買う人と中古マンションを買う人では年収に大きな違いがあるということです。

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新築マンション購入者の平均年収は960万円に

 図表5が購入した物件形態別の平均年収と平均年齢です。新築マンションの年収は960万円に対して、中古マンションは657万円ですから、年収には300万円以上の差があります。新築マンションは平均価格が5279万円ですから、ある程度の年収がなければ買えなくなっています。ことに都区部などの高額物件だと、どうしても年収1000万円以上の人が中心になるのではないでしょうか。

 最近は、夫婦共働きで、どちらもそれなりの年収を得ているパワーカップルが増えていて、そうした人たちが高額物件の売れ行きを支えているという見方があります。夫婦で1500万円、2000万円といった年収を得ているカップルが1億円、2億円のマンションを買うケースが珍しくなくなっているようです。

 それに対して、中古マンション取得者の平均年収は657万円で、夫婦共働きの場合でも、夫婦どちらか、あるいはどちらもパートなどの非正規社員として働いている世帯が少なくないのではないでしょうか。

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平均年齢は中古マンションのほうが高い

 注目しておきたいのが、平均年齢です。新築マンション購入者のほうが中古マンション購入者に比べて年収が300万円以上高いのに、実は年齢をみると中古マンションのほうが高くなっているのです。新築の平均が44.8歳に対して、中古マンション購入者の平均は46.3歳です。1.5歳ほど中古マンションを買った人のほうが年齢が高くなっています。

 年功序列の給与体系が根強く残っているわが国では、一般的に年齢が高くなるほど年収が高くなるものですが、このマンション購入者の年齢をみるとそうなっていません。むしろ、年収の高い新築マンション購入者のほうが、年収の低い中古マンション購入者より若くなっています。

人生設計のなかにマンション購入を

 類推すると、新築マンション購入者はビジネス社会で比較的順調に出世し、収入も高くなる幹部社員が多く、若いうちに頑張って自己資金を増やし、40歳代前半のうちに新築マンションを買っています。それに対して、中古マンション購入者はさほど収入が上がらないため、若いうちにマンションを買えず、40歳代の後半になって何とか中古マンションを購入するケースが多いのではないかとみられます。その分、慎重な人が多く、年収が低いなりに自己資金をシッカリと増やして、購入価格の半分近い自己資金を用意、住宅ローンの返済額を抑えています。

 新築マンションを買うとローン負担などが重くなりますから、どちらがいいとか悪いとか決めつけることはできません。自分たちの年齢、年収などに応じてマンション購入をどう考えればいいのか、こうしたデータを参考に人生設計の参考にしていただければ幸いです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

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