♪夏が来れば思い出す♪、筆者は尾瀬に行ったことはないが、7月になると思い出すのは2017年(平成29年)の税務調査。6年が経過したが、ここ10年で最もインパクトのある夏の出来事だった。個人事業主など確定申告をする人には、なんとも嫌な響きを持つ税務調査。その税務調査、今年は例年以上に調査を受ける人が急増しそうだ。
令和4年11月に国税庁のサイトで公開された「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」というPDFがある。税務署の事務年度は毎年7月1日から翌年6月30日まで。令和3年事務年度は令和3年(2021年)7月から令和4年(2022年)6月を指す。およそ1年前に終了した事務年度だ。そこには1年間に税務調査を行った実地調査件数、申告漏れ件数、申告漏れ所得金額などが記載されている。
先月、6月に終わった令和4年事務年度の税務調査結果は11月に公開される。そして現在は令和5年7月。令和5年事務年度がスタートしたばかりだ。それが何を意味するかを考えてみたい。
「所得税及び消費税調査等の状況」を平成28事務年度までさかのぼって実地調査件数、申告漏れ件数、申告漏れ所得金額をグラフにしてみた。左軸が実地調査(青線)と申告漏れ(オレンジ線)の件数、右軸が申告漏れ所得金額(棒グラフ)だ。
平成28事務年度(2016年7月~)から平成30年事務年度(2018年7月~)まではゆるやかに増えている。筆者が税務調査を受けたのは2017年7月なので平成29事務年度の7万2953分の1は筆者だ。申告漏れが指摘されたので6万338分の1でもある。
順調に?増えていた税務調査の件数が令和元年事務年度(2019年7月~)から減少する。そう、理由は新型コロナウイルスだ。確認すると、志村けんさんが亡くなったのが2020年3月29日。最初の緊急事態宣言が出されたのは4月7日に東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県、4月16日に対象が全国に拡大された。2019年7月から2020年6月の調査期間のうち、2020年3月または4月以降は訪問して実地調査は困難だったと思われる。調査期間が3~4カ月短縮され件数は減少した。
2020年7月から始まる令和2事務年度は、平成30事務年度に対し3分の1に激減した。こちらも確認すると、医療従事者にワクチンの先行接種が始まるのが2021年2月(全国知事会の2021年2月22日付緊急提言)。令和2事務年度が終わるころにやっと一般の人はワクチン接種予約に奔走していた時期となる。この時期によく2万件を超える実地調査ができたと筆者は驚いている。
令和3事務年度が始まった2021年の夏は自衛隊の大規模接種会場に予約が殺到したころ。徐々にワクチン接種が進み、事務年度の後半で実地調査が増えたと思われ件数はV字回復の傾向となる。
令和4年事務年度は終わったばかりで件数の公開は11月。筆者が適当に予想したのが右端のグラフだ。そして今、グラフにない令和5年事務年度がスタート。新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けが「2類相当」から「5類」になり、もし筆者が税務署の関係者なら「今年度は取り戻すぞ」「平成30事務年度を超えるぞ」と気合いを入れて税務調査を開始すると思う。この夏はヤバイ……かもしれない。
税務調査は個人事業主の所にもやって来る! 税務署から電話が来てから追徴課税を納めるまで――実録:ある個人事業主の「初めての税務調査」体験記
昨年夏、スマホの着信表示を見て驚き、スマホを落としそうになったことがあった。画面には「昭和税務署」と表示されていた。起業して11年。人生初の“税務調査”の事前通知だ。法人はともかく、個人事業主で税務調査を受けた人から話を聞く機会は滅多にない。今回は筆者の税務調査体験記をお届けしよう。
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