お祖父さんの遺品のカメラレンズを使えるようにしてみた

デイリーポータルZ

祖父と言っても義理の祖父、夫のおじいちゃんである。20年近く前に他界しているため、筆者は会ったことすらない。
聞いた話によれば、出征後に造船業、和洋服の仕立屋、肉屋、駄菓子屋など職を転々とし、老後は釣りや木工など、趣味のことを楽しんでいたそうだ。

彼の趣味の1つに写真があったらしい。親族の中で唯一カメラを扱う筆者の手元に、遺品のレンズたちが舞い込んできた。

古いカメラレンズは「オールドレンズ」と呼ばれ、条件さえ合えばまだ使うことができる。それぞれのレンズを使って、筆者のカメラで写真を撮ってみた。

まずは賢人達に訊いてみよう

先日、カメラ好きのDPZライターたちが集まる座談会企画があった。メンバーは安藤さん伊藤さん地主さん。そしてぜんぜん詳しくもなんともない、カメラエンジョイ勢の筆者。

どうしてこんなガチ勢たちの座談会にお呼びいただいたのかは分からないが、遺品のレンズたちを見てもらうには絶好の場と思い、事前にお願いして持ち込ませていただいた。

遺品のカメラ機材は、埃にまみれたカメラバッグ2つぶん。そのうち1つにレンズを詰めてきた(撮影は編集部の石川さん)。
中にはギチギチにレンズと機材が詰まっている。

 賢人たちは「めちゃくちゃ重かったでしょう!」と、レンズを複数台背負ったことがある人にしか分からない労りをしてくれた。みな普段から機材の重みで肩を鍛えているのだろう。

オールドレンズを次々取り出す筆者。写真がブレるほどの速さで見にきてくれる賢人たち。

安藤「MINOLTAとTOKINA製のレンズが多いね。」

地主「レンズフードとフィルターもたくさん入ってる。」

※レンズフードとフィルター…どちらもレンズを保護したり、光の余計な写り込みを防ぐための道具

JUNERAY「別のバッグにMINOLTAとCANONのフィルムカメラがあったので、たぶんそれら用に使ってたんだと思います。」

伊藤「カメラバッグに入れておくのは、正直保存方法としては一番よくないよね。」

JUNERAY「そこが問題なんですよね……私が開封したときには、すでにカビちゃってたレンズも多くて。」

出てきたレンズたち(の一部)。年季の入った布やティッシュに包まれた謎のパーツもある。

安藤「ヘリコイドもちゃんと動くし、マウントアダプターがあれば使えるんじゃないかな。」

※ヘリコイド…回してピントを合わせるリング
※マウントアダプター…他メーカーのレンズを使えるようにする変換器

伊藤「僕のカメラ、SONY製のAマウントだからレンズのいくつかは装着できると思いますよ!ちょっと撮ってみましょうか?」

JUNERAY「え、いいんですか!そんな大事なカメラに!!」

伊藤さんが持つSONYのα77 Ⅱはマウントが以前のAマウント。コニカミノルタ社はかつてSONYと共同でカメラを開発していたため、Aマウント規格のカメラならアダプターなしでそのまま装着することができる。

※マウント…カメラとレンズの接合部の規格 なんかメチャいっぱいある

すごい、すでに使えそう!!

伊藤「あっほらほら!写りはちゃんとしてるよ!」

伊藤さんに撮っていただいた生茶のキャップ。なんてことない写真だが、「撮れた」という事実がとても嬉しい。

JUNERAY「カビてるレンズなのに、ピントもボケもすごい綺麗じゃないですか…?」

伊藤「あんまり知られてないことなんだけど、レンズってカビてても意外と撮れちゃうんだよね。」

JUNERAY「えっ」

地主「あるある、普通に使ってたレンズを買い取り査定してもらったら、ちょっとカビてますねって言われたり。」

安藤「カビのせいでピントがうまく合わなくても、ふわっとした写りが案外良かったりね。」

賢人達のおかげで、オーパーツみたいに思えたレンズ群が、どんどん実用的な道具になってくる。
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伊藤「この望遠レンズなんていいなあ!JUNERAYさんのZ fcに着けたら、かなりかわいいんじゃないかな?」

JUNERAY「軽量小型が売りのミラーレス機に、この巨大な筒を……?」

Z fcは筆者の愛機(マウントはZ)。巨大な望遠レンズが着いているところが想像できないが、伊藤さんがかわいいと言うならかわいくなるのだろう。

伊藤「この望遠レンズは鳥なんか撮るのにいいですよ。ほら。」 

伊藤さんが撮ってくれた、会議室の壁掛け時計。反対側の壁の端っこなのに、ここまでクローズアップされて、その上きれいに写っている。

安藤「お祖父さん、いいもの遺してくれましたねえ。」

地主「これは使わないと損ですよ。」

JUNERAY「レンズと一緒に入ってた細々した道具も使えそうでしょうか……?」

伊藤「レンズフードやフィルターなんかはサイズが合えば使えますよ。レンズに対してレンズフードの数が多い気がするけど……。」

このサングラスみたいなフィルターは、光の反射を防止するためのものらしい。水面越しの水中や、ガラスの向こうの被写体を綺麗に写せるのだそうだ。

地主「ただ、このデジタルカードが謎なんですよね。全く見たことない形。何に使ってたんだろう。」 

安藤「これは僕も見たことがないなあ。」

メモリーカードのような形の謎のカード。書いてあるアルファベットの意味も含めて、もしご存知の方がいたら教えてください。

動作することがわかった以上、筆者には使う義務がある(ような気がする)。

調べたところ、オールドレンズはフランジバックが短い、ミラーレス機での使用に適しているらしい。つまり筆者のZ fcで使える可能性が大きい。

※フランジバック…マウントからイメージセンサーまでの距離

マウントアダプターを購入し、素人にもできる範囲での清掃を施してから、撮影してみることにした。

地主「ここにきて、JUNERAYさんが安藤さんに次ぐレンズ持ちになりましたね。」 安藤「僕のコレクション見たら本当に引くと思いますよ。」

⏩ とりあえず清掃してみる

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