6月21日に投稿された、ひとつのツイートが大きな波紋を広げている。それは「内定取り消しを受けました。信じられない。社名晒そうかな」という内容で、合わせて企業からの内定取り消し通知が添付されている。
そこには「ご応募いただいたポジションについて、内定のご案内を差し上げましたが、残念ながら採用の方向性に変更が生じたため、内定を取り消すこととなりました」として、ツイート主に内定取り消しを知らせている。
だが、その内定取り消しの理由が問題視されている。
「当社の選考プロセスでは、候補者の適性と組織のニーズに基づいた判断を行っておりますが、他の候補者の方がより適切にマッチする結果となりました」
すなわち、“ほかにより良い人材がいたから、あなたの採用は取り消すことにした”と言っているわけだ。昨今、ほとんどの企業において内定取り消しは、従業員の解雇と同じくらい慎重な対応が求められている。そんななかで、メール一本で、しかもまったく合理的とはいえない理由で内定取り消しを行う企業があるということに、SNS上はあきれかえる声が続出しているのだ。
山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、このツイートにある内定取り消しは違法との見解を示す。
「内定とは、法律上、『始期付解約留保付の雇用契約』といいます。すなわち、(1)雇用がいつから始まるかが決められ、(2)ただし、一定の条件の場合は雇用契約が始まる前に解除する、という条件がつけられた契約です。
ここで、『一定の場合に解除できるという条件(雇用契約はスタートしない)』は、あらかじめ『内定書』に記載しておかなければ内定者にとって不利になります。このため、『内定書』に記載されていない理由や条件で内定を取り消すことは違法となります。
今回、『他の候補者の方がより適切にマッチする』との理由で内定を取り消したわけですが、おそらくそんなふざけたことは『内定書』に記載されていないでしょうから、今般の内定取り消しは違法です」(山岸弁護士)
また、ブラック企業アナリストの新田龍氏も、件のツイートを受けて「被害を受けられた方は災難でしたが、そんな遵法意識に欠ける会社はサッサと見限って新たな就職先を探しつつ、その求人を見つけたナビサイトや就職情報誌にきちんと報告して、内定取消企業が今後媒体を使えないよう出禁処分にしてやってくださいね」とアドバイスを送る。
さらに続けて、「過去内定取消が認められたケースでさえ、損害賠償や精神的苦痛に対する慰謝料が発生した判例もあります」と述べ、場合によっては慰謝料等を請求することが可能となる可能性も示唆する。
内定取り消しが違法であるとしても、このような企業に就職したいとは思わないだろう。あらためて、ガバナンス意識の高い企業に就職できることを願うかぎりだ。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)