スシロー、ペロペロ少年に6700万円請求の妥当性…どこまでが損害か、親に支払義務は


スシロー、ペロペロ少年に6700万円請求
スシローの店舗(「Wikipedia」より)

 回転寿司チェーン大手のスシローが、醤油ボトルや湯飲みなどを舐め回す迷惑行為をした少年に対し、6700万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたことが報じられ、大きな話題となった。さらに、ここから増額する見込みだとも報じられている。

 これに対し、少年側は迷惑行為については認めているものの、迷惑行為を収めた動画がネット上で拡散されることまでは想定していなかったなどとして、損害賠償の算定について争う姿勢を見せている。

 そんななか、どんなに請求額が増えても何千万円もの賠償命令は出ないとの見方や、賠償金は全額支払わなくても逮捕されることはない、親には連帯して支払う義務はない、などさまざまな見解が出ている。反対に、一部で「親が肩代わりして責任を負う」と報じているメディアもある。

 スシローのみならず、さまざまな飲食店がSNS上における迷惑行為動画の舞台とされ、大きな被害を受けている。店舗が特定されると、客足が遠のくなどの実害が発生しており、店側は迷惑行為を行った人物に対して損害賠償請求などの対応をするケースが相次いでいる。

 そこで、実務的な観点から、どの程度の損害賠償が落としどころとなる可能性があるのか、直接的な損害額のみならず再発防止策などにかかった費用まで含めて賠償請求できるのか、また親・保護者にも支払いの責任は発生するのか、仮に破産した場合に免責されるのか、などについて、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士に見解を聞いた。

「何を『損害』とするかによって、『損害額』は変わります。本件で考えられるのは、『このアホな行為により減った店の売上、その分』が損害となります。一部では、下落した株価分も損害という素人コメントもありますが、被害者は株主ではなく会社なので関係ありません。

『6700万円』という数字は、弁護士が理論的に積み上げて計算した額なので、“盛っている”としても相当な金額ではないでしょうか。

 なお、裁判が進むにつれて『和解』の協議があるかもしれませんが、アホが『なにがしかのお金』を支払うことが前提で進められるでしょうから、支払能力がない場合、『和解』はまず無理でしょうね。ここで、親が利害関係人として参加して『なにがしかのお金』を払うという協議が進むのであれば、親もこの『和解』成立後に支払責任を負います。

 これに対し、『判決』の場合は、民事上の責任能力(だいたい12歳以上)があれば、ごく例外を除いて親は責任を負いません。

 ここで、アホに金銭の支払いを命じる『判決』が言い渡されたとして、支払えない場合であっても、このアホは『破産』によって『免責』、すなわち支払いを免れることはできません。なぜなら、今回の場合、『不法行為による損害賠償』と言い、『借りた金を返せない』『買った品物の代金を支払えない』という借金とは違うからです。

 まぁ、この後、働けど働けど、スシロー社から何十年にもわたって『判決』で認められた損害を賠償するまで強制執行などを受け続けるのでしょうね。あとに続かないように、厳しく追及すべきです」

 この少年の両親が憔悴しきっている様子などが、たびたび報じられているが、他人に迷惑をかける行為をするとどれほど大きな結果を生むことになるのか、全国的に広く知られるきっかけにはなったといえるだろう。

 過去にも、Twitter上で迷惑行為動画を公開して多額の損害賠償を請求される事案が続出したことがあるが、年月が過ぎて再び迷惑行為動画が多発するようになった。今回のスシロー事案が風化されることなく、長く戒めとなることを願うばかりだ。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

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