ヤフーは6月13日、2022年度の「広告サービス品質に関する透明性レポート」を公開し、2022年度に約1億3千万件の広告素材を非承認にしたことなどを発表した。
(左から)ヤフー マーケティングプラットフォーム統括本部 トラスト&セーフティ本部長 一条裕仁氏、日本広告審査機構 事務局長 川名周氏
前年度と比較して広告非承認数に大きな増減はなかった一方、入稿数が増加しため、非承認となった広告の割合は減少したという。
広告非承認数の比較
レポートではそのほか、2022年4月1日から2023年3月31日における、広告サービス品質向上のための審査実績などを報告している。
例えば、ヤフーの広告審査では、広告の素材単位への対応だけでなく、違反表現を繰り返す、大量の非承認広告を入稿する、といった広告のアカウント自体を停止している。2022年度下半期は3824件のアカウントを非承認にしたという。
アカウント審査非承認数の比較
開設後の審査でアカウントを非承認とした理由を、2022年度上半期と下半期で比較すると、「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」が増加。日常生活での水漏れ、解錠などの緊急時に事業者が駆け付けて対処する“暮らしのレスキューサービス”の広告を出稿する一部の契約者を対象に、本人確認を強化したことを要因に挙げている。
開設後のアカウント審査による非承認理由の内訳
なお、暮らしのレスキューサービスは近年、消費者トラブルが増加しており、政府も広く注意を呼びかけている。ヤフーは、暮らしのレスキューサービスの広告を出稿する一部の契約者を対象とした本人確認を、2022年10月から強化。加えて、サービス提供に関するユーザートラブルの情報が複数確認された場合にアカウントの停止措置を行う旨を周知するなど、消費者保護のための対策を強化しているという。
「暮らしのレスキューサービス」のトラブル例とヤフーの対応
「透明化法」への対応も
政府は2022年7月、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(透明化法)の規制対象として、新たにデジタル広告分野を追加。2022年10月3日には、ヤフーを含む複数のデジタルプラットフォーム事業者を規制対象に指定している。
ヤフーは、事業者指定日に、デジタル広告事業の透明性向上のため審査基準やデータの取り扱いなどの情報を集約した特設サイトを公開。透明化法の情報開示項目に沿って情報を開示している。
なお、透明化法は、デジタルプラットフォーム事業者に対して、広告主の声に耳を傾けることや、アドフラウドなどのデジタル広告の質における問題の対策状況を説明して広告主の理解を促進することなどを求めている。
これに対しヤフーは、広告主の理解促進のため、2022年度の透明性レポートを通してアドフラウド、ブランドセーフティの対策状況を公開。そのほか、広告掲載基準啓発のためのコンテンツやヘルプページのリニューアルなども実施している。
ヤフー マーケティングプラットフォーム統括本部 トラスト&セーフティ本部長の一条裕仁氏は「2022年度は、サポート窓口に寄せられる問い合わせを約26%減少できた。今後も高い透明性を目指したい」と語った。
問い合わせ数を26%削減
インターネット広告への意見は2年ぶりに2位に–ただし、依然として悪質な広告も
日本広告審査機構(JARO) 事務局長の川名周氏は、日本における2022年度の広告動向を消費者からの意見という視点から解説した。
「2018年頃からアフィリエイトプログラム×健康食品・美容商材に対するインターネット上の苦情が急増した。コロナ禍に伴う人々の不安増、メディアとの接触機会増などを受け、2020年度の苦情・照会数は1万1560件と過去最高だったが、その後2年連続で減少した。2022年度は1万2030件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある」とし、苦情は全体的に減少傾向にあると語った。
また、2022年度は、媒体別で見た場合の「インターネット」「テレビ」が逆転し、2年ぶりにテレビが1位に返り咲いたという。業種別で見ると、発毛効果やシミがはがれるといった誇大な表現に苦情が寄せられた「医薬部外品」が過去最高数で、2021年度に多かった「化粧品」「オンラインゲーム」などが減少。毛穴などの不快な画像・誤認させる定期購入といった苦情は依然あるとしながらも、インターネット媒体で出稿が多かった2業種が減少し、媒体順位の逆転につながったようだ。
ただし、川名氏は、「寄せられた苦情・照会数を業務委員会で審議し、上から『厳重警告』『警告』『要望』『助言』と区分し、『見解』として発信している。2022年度は全体数は4件減って26件の審議となった一方で、法令に違反する恐れが極めて高い厳重警告と警告が増えた。不適切なナンバー1表示や月額サービス料金のように装った割賦販売、詐欺的な定期購入契約などが依然として見られる」という。
媒体別で見ると、インターネットは21件。26件のうちの8割以上を占めたことになり、川名氏は、「インターネットの苦情は相対的に減っているが、悪質案件に近い広告は依然として存在する」と、注意喚起した。
2022年度の広告まとめ