日ハムに去られた札幌ドーム周辺地域の厳しい現状…札幌市の甘い収支予想に疑問も


日本ハムが「出ていった」札幌ドーム。札幌市の収支予測に懸念の声が相次いでいる(今年5月、本稿記者撮影)

「北海道日本ハムファイターズが離れてから、札幌ドーム周辺の賑わいがなくなった」

 このような話が聞かれる。日ハムが移転した北海道北広島市の「エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)」。本稿記者も何回か現地に足を運んだが、「満席」というほどではなく「まあまあ席が埋まっている」という印象を感じることが多い。では、一方で日ハムが「出ていった」格好となった札幌ドーム周辺の状況はどうなっているのか。実際に足を運び、現状をレポートする。

エスコンフィールドHOKKAIDO。球場内にあるサウナ施設なども魅力的だ(今年3月、本稿記者撮影)

札幌ドーム近くで話を聞いた

 現地を訪れたのは6月上旬。平日ということもあって、人影はまばらだ。札幌ドーム最寄りの札幌市営地下鉄東豊(とうほう)線の終着駅、福住(ふくずみ)駅に到着し、さっそく調査を進めることにした。

 札幌ドームは札幌市豊平(とよひら)区に所在する。ドームの前を「月寒(つきさむ)通」という道路が通っており、車の往来は激しい。福住駅周辺には高層マンションや飲食店が立ち並び、駅直結のスーパー「イトーヨーカドー」も鎮座している。ただ、居酒屋などの飲食店に限っていえば、福住駅の一つ隣にある月寒中央駅のほうが多く、比較的密集している。

 本稿記者はさっそく福住駅近くにある居酒屋へと向かった。今までの経験上、居酒屋こそがその地域の話題が集まる場所だと感じるのだ。店に入ると先客が数人おり、「どうぞ」と店主とみられる男性から席を案内された。まずはビールをいただき、一気飲みした。少し時間が経ったところで声をかけた。「ちょっとよろしいでしょうか」。その男性が「何か?」と近づいてきたところで質問を投げかけた。

「ファイターズが移転して、お店の状態はどうですか? 個人的に札幌ドーム周辺の飲食店の状況が気になっていたもので」

 それに対し、男性はこう答えた。

「(客の入りは定員の)半分程度。新型コロナウイルスの影響もあって一時はゼロに近かったが、それも落ち着いた。現在は持ち直している。(日ハムが移転するまでは)席がほぼ埋まっていた。混雑は当たり前で、来店する客に対して入店を断ることもあった」

「日本ハムが札幌ドームに居続けてくれたらよかったのに。でも札幌市は(日ハムの引き留めに)あまり乗り気ではないように感じていたし、いろいろなところからも同じような話が聞こえてきたのは事実。もうどうしようもない」

「客はまばら」が札幌ドーム周辺の現状

 居酒屋を後にし、また違う飲食店を訪ね、従業員に客の入りを聞いてみることにした。一つのデータより、複数のデータがあったほうがよい。

「(客の入りは)まあまあです。全体的に少し減ってはいるが、大幅に下がっているわけではない。日ハムが(北広島に)行ってから札幌ドームの(観客の)入りが多くないと聞いている。関係者も嘆いていた。毎週末ではないが(サッカーJ1の)北海道コンサドーレ札幌の試合がある。その日はいいが、それ以外の日は札幌ドームも飲食店も客がまばら。なんともいえない感情になる」

 本稿記者もコンサドーレ札幌の応援で札幌ドームを訪れることはあるが、すべての店舗に共通しているかは定かではないものの、従業員が話すことについて理解できる。ただ多くのサポーターは試合が終わるとまっすぐ家に帰るため、「そういった客を店に呼べたら、なおよい」と従業員は言う。

 以上が札幌ドーム周辺の現状だ。どの店舗も「(客の入りは)厳しい」というニュアンスを感じた。

ドームに五輪、風当たり強まる「猪突猛進」の札幌市

 札幌市は2022年6月、日ハム移転後の札幌ドームの収支予測を公表している。24年度以降、売上高は19億円台を維持するとされており、新型コロナウイルス感染拡大前の19年(39億7200万円)より約20億円減る試算だ。

 ただし、一部からは「本当に19億円も売上を維持できるのか」「あまりにも攻めた想定だ」などと指摘が相次いでいる。壁面にあったスポンサー広告は減り、今年3月に公開した1.5~2.3万人を収容するという「新モード」は「他にもそれくらいの人数を収容できる場所はある」などの理由で評判は芳しくない。

 札幌市側はまるで「猪突猛進」しているように感じる。東京五輪談合事件などの影響により30年の冬季五輪招致の動きは停滞している。札幌市への風当たりの強さは増すばかりだ。

(文=小林英介)

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