Interop Tokyo実行委員会は、6月14日~16日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催するネットワーク技術のイベント「Interop Tokyo 2023」の特別企画として、宇宙に広がるインターネット市場をテーマにした「Internet x Space Summit」の詳細を発表した。
今回で30回目を数えるInterop Tokyoは、スローガンとして「To the next 30 years」を掲げている。「インターネットの『今』への挑戦の答えを披露することに加え、次の30年先も見据えた『新しいインターネット』をお見せし、体験できる場をお届けする」という。参加費は、基調講演と展示会は事前にオンライン登録を行うと無料で、当日の登録は5000円。特別企画として行われる「Internet x Space Summit」も同様だ。
「Internet x Space Summit」の講演は、登録・参加費が不要で、当日、会場ステージ(小間番号4H32)に足を運べば聴講できる。ただし、基調講演「The Interplanetary Internet – 宇宙へ広がるインターネット市場 -」は事前登録が必要だ。
現在、月はもとより火星への有人飛行の挑戦が活発になっている。例えば、これまで国家が主体だった宇宙開発は民間企業にも広がっていることもその1つだ。一方のインターネットは、すでに人類の活動を支える社会や経済のインフラに発展している。
そのため、地上のインターネットと同様に宇宙でのインフラ構築が期待されており、近年、数多くの政府機関、学会、民間の取り組みが進んでいる。将来的には、インターネットが地球を越えて惑星間や宇宙を網羅するインフラに成長することで、新たな産業やビジネスチャンスが生まれることが予想される。
このような現状を踏まえ、Interop Tokyoの特別企画として「Internet x Space Summit」を開催。IPNSIGとWIDEプロジェクトの協力のもと、インターネットが宇宙空間に広がることで生まれる可能性を探るという。
「Internet x Space Summit」の基調講演「The Interplanetary Internet -宇宙へ広がるインターネット市場-」では、金子洋介氏(IPNSIG Chairperson)と村井純氏(Interop Tokyo実行委員長/慶應義塾大学 教授/WIDEプロジェクト ファウンダー)が登壇。「地上から宇宙へ拡大する通信ネットワーク、そして宇宙をフィールドとしたインターネット市場を展望する」としている。
また、金子洋介氏(JAXA 宇宙探査イノベーションハブ主任研究開発員)は、「JAXAの宇宙通信分野の取り組み -全体像-」としてJAXAの全般的な通信技術について講演する。
宇宙での通信手段として注目されているのが光通信だ。現在の人工衛星は、電波を使って通信を行っている。光通信では、電波よりも周波数が高いレーザー光を使用しているため、高速な通信が可能だ。
このような光通信の講演として、小竹秀明氏(NICT ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター 宇宙通信システム研究室 主任研究技術員)による「Beyond 5G/6Gを実現する衛星光通信技術と非地上系ネットワーク(NTN)」、佐藤洋平氏(JAXA 第一宇宙技術部門 JDRSプロジェクトチーム主任研究開発員)による「光衛星間通信システム(LUCAS)の初期運用状況について」が挙げられる。
宇宙での通信となると、送受信者が数十万kmから数百万km離れていることも想定しなければならない。ここで問題となるのは、通信回線に電波やレーザー光を用いても大きな遅延が発生することだ。このような遅延を想定したネットワーク「DTN(Delay and Disruption Tolerant Networking)」の開発が進んでいる。
このDTNに関する講演として、Alberto Montilla氏(Spatiam Corporation CEO, Dr.)による「Delay and Disruption Tolerant Networking(DTN)Platform, by Spatiam」、金子洋介氏(IPNSIG Chairperson)とOscar Garcia氏(IPNSIG Board Member and Project Working Group Lead)による「IPNSIG Project developments and DTN demonstration」が予定されている。
なお、「国際宇宙探査の概要と月探査のための通信・測位アーキテクチャの検討状況」は、1日目は田邊宏太氏(JAXA 国際宇宙探査センター 宇宙探査システム技術ユニット 技術領域上席)、2日目は古賀勝氏(JAXA 国際宇宙探査センター 宇宙探査システム技術ユニット主任研究開発員)、3日目は牧野克省氏(JAXA 国際宇宙探査センター 宇宙探査システム技術ユニット主任研究開発員)が登壇するが、3日とも内容は同じだ。
同様に「Interplanetary InternetとDelay/Disruption Tolerant Networking- 惑星間でのユビキタスネットワーキング実現に向けて-」は、2日目には鈴木清久氏(JAXA 追跡ネットワーク技術センター主任研究開発員)が、3日目には森永優氏(JAXA 追跡ネットワーク技術センター研究開発員)が登壇する。
また、このほかにも多数の講演が予定されているとしている。