農研機構とNTT東日本ら、遠隔営農支援プロジェクト–国産タマネギの周年流通実現へ

CNET Japan

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と東日本電信電話(NTT東日本)、NTTアグリテクノロジーは6月6日、データ駆動型の「遠隔営農支援プロジェクト」の全国展開を進めると発表した。

 農研機構の専門家が有する知見や農業データ連携基盤(WAGRI)とNTT東日本やNTTアグリテクノロジーのICTを活用した遠隔営農支援の実績やノウハウを踏まえた仕組みを組み合わせる。


取り組みのイメージ

 最初の実証地として、この取組の契機となった秋田県大潟村にあるみらい共創ファーム秋田の圃場でタマネギの生産における遠隔営農支援に取り組むという。

 遠隔営農支援の仕組みは、生産者の農場や作物の映像・環境データを遠隔にいる専門家とリアルタイムに共有し、当該農場の土壌、気象、生育情報、作業履歴等のデータに基づき農研機構の標準作業手順書(SOP)に即した支援・指導を双方向のコミュニケーションにより行う。


遠隔営農指導のコックピットイメージとたまねぎ農場イメージ

2020年より3者連携協定を締結

 露地栽培を重点的に取り扱うのは、広域かつ電源の確保が難しい農場をエリアカバーできるネットワーク(Wi-Fi HaLowなど)やセンサーが必要で、技術的な難度が高いことに加えて、気象や土地・土壌条件による生育や病害の差が大きく、データを活用した栽培技術の導入により、大きな生産性向上の余地が見込まれることによるもの。


データ連携農業の地域実装に向けた取り組み

 第1段階は、農研機構の専門家が遠隔からタマネギ栽培の支援・指導を行い、効果検証及び技術の改善を図る。支援・指導には、NTT東日本、NTTアグリテクノロジーが提供する遠隔営農支援の仕組みを活用し、みらい共創ファーム秋田の生産者と専門家がリアルタイムで生産現場の映像やデータを共有し情報交換を行う)。また、WAGRIのAPも活用することで、農研機構のタマネギ生産SOPに即した技術的助言を行い、大潟村での新規就農者の収量が2~3t/10aであるところを、4t/10aのタマネギ生産を安定的に実現することをめざす。


第1弾の取り組み

加工用のタマネギ供給の多くを輸入に依存しているが、国産タマネギの周年流通実現を目指す

 第2段階では、AIも実装することで、気象情報や生育予測を踏まえた栽培作業計画、発生予察を踏まえた病害虫防除計画、市場動態予測を踏まえた出荷計画等を生産者に自動提示する仕組みも検討する。これにより、支援・指導を行う専門家の負担が軽減されることが期待できるという。


 第2段階はAIも実装していく

 たとえば、新規就農者には判りづらい病虫害も、病虫害診断サービスAPIを使用することで、どのような病虫害かを診断した上でその特性や対応する農薬の情報を得ることが可能になる。また、生育予測APIでは定植日と気象APIで得た気象予報データを使って、いつ頃どれくらい収穫できるかをシミュレーションすることができ、営農計画に反映可能。


専門家とAIが相互補完しながら効率的に生産者の問い合わせに対応していく

 これらのAIも併用することにより、経験の浅い、新しい産地の新しい就農者に対して“新たな社会実装ツール”の活用を通して熟練の技術継承に取り組むとしている。今後は、大潟村での取り組みを踏まえ、遠隔営農支援の適用地域や対象品目の拡大を通して3年を目途に全国展開を進めていく。


遠隔営農支援プロジェクトが描く将来図

Source