電気料金大幅値上げ…毎月1万円まで無料になる「タダ電」、実際に安くなるのか検証


「タダ電」公式サイトより

 6月1日から北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の大手電力7社は、大幅に電気料金を値上げする。標準的な家庭の電気料金の値上げ幅は、平均15.9~39.7%と発表されており、なかでも最も値上げ幅が大きいのは、北陸電力の39.7%だ。元の電気料金に差があるので単純な比較はできないが、いずれも標準的な家庭でひと月あたり2000円前後の値上がりとなりそうだ。

 そんななか、毎月1万円まで電気料金が無料になるというサービスが開始され、ネット上を中心に話題になっている。

 サービスを展開しているのは、「新しいエネルギーサービスの企画・ 開発・運営」を行う株式会社エスエナジー。同社は5月29日、加入すると自宅の電気代が毎月1万円までタダになる電力会社「タダ電」の提供を開始。サービスについて、以下のように紹介されている。

・切り替え工事や費用も不要

・申し込みは専用のアプリをダウンロードし、必要情報を記入するだけ

・基本料・解約手数料もタダ。契約期限に制限はなく、解約時にも手数料は発生しない

 そんなうまい話があるのか。サービスについて調べてみると、基本料金はないが、使用料が1万円分を超えると、その後は1kWhごとに65円の使用料が加算されていく。例えば、東京電力の「従量電灯B」の料金単価は、最初の120kWhまで(第1段階料金)が30円00銭(6月1日以降/以下同)、120kWhを超え300kWhまで(第2段階料金)が36円60銭、上記超過(第3段階料金)が40円69銭となっているので、およそ2倍ほどの価格だ。

 つまり、基本料金もなく、使用料も1万円分までは無料だが、その無料分を超えると割高な電気代が積みあがっていくというスタイルだ。しかも、1万円まで無料とはいえ、現在の電気料金が1万円前後の家庭が乗り換えたら、お得になるというわけではないだろう。

 そこでBusiness Journal編集部は直接、「タダ電」の広報担当に話を聞いた。

――1万円まで無料ということですが、貴社の収益は電気代だけで賄えるのでしょうか。別の収益の柱(例えば広告収入など)があるのでしょうか。

「タダ電」広報担当者 「タダ電」は加入者様が利用するアプリ内での広告配信や、電気を1万円以上利用される方への電気の小売り事業を主な事業として展開を予定しており、そこで得た収益を無償で利用者様へ還元させて頂く予定です。

――1万円まで無料というのは、現状の電気代で1万円ではなく、御社基準(1kWh65円)で、という認識で正しいでしょうか。したがって約150kWhまで無料となるでしょうか。

「タダ電」広報担当者 はい。お客様は154kWhまでであれば完全に0円でご利用いただける形を想定しています。

(参考:利用想定とその価格について)

■1人暮らしの場合(おおよそ150kWhの電力使用量)
タダ電:0円
東京電力の場合:おおよそ5500円

■2人暮らしの場合(おおよそ230kWhの電力使用量)
タダ電:おおよそ5600円
東京電力の場合:おおよそ8400円

■3人暮らしの場合(おおよそ310kWhの電力使用量)
タダ電:おおよそ1万1500円
東京電力の場合:おおよそ1万1500円

――気に入らなければいつでも解約可能とありますが、たとえば1カ月で解約することも可能なのでしょうか。

「タダ電」広報担当者 はい。万が一ご納得いただけない場合は、いつでも無料で解約が可能です。

 大まかにまとめると、ひと月の電気使用量が150kWhまでであれば無料で利用でき、300 kWhまでであれば東京電力より安くなる可能性があるといえる。これから暑くなりエアコンを常時使用するようになれば、一般家庭で300 kWh以内に抑えることは難しいと思われるが、年間平均で上記範囲内に収まるという方は、検討してみてもいいのかもしれない。

(文=Business Journal編集部)

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