九州一の大都市福岡市の最果てに向かって山へ海へ
福岡市はコンパクトシティと言われる。確かに街の中心に住めば歩いて食事も買い物もできて空港も近く便利だし、家賃も東京と比べて安い。
コンパクトシティは街の中心から狭い範囲でいろいろ事足りるという意味だが、逆に外側に目を向けると福岡市内といってもいろいろある。
公共交通を使って行ける範囲で、福岡市内を端から端まで移動してみたらダイナミックすぎて感動した。
福岡市はコンパクトというかゼルダの伝説だった
月曜日。
まずは福岡の副都心にある福岡タワーに上って市内を見渡してみる。
なんでも日本で1番高い海浜タワーなのだそうで、だからこそ海も市街も一望できるというもの。
入ろうとしたら韓国人観光客の団体が出てきた。福岡から韓国は日に何便も船が出るほど近くて、福岡はもとより九州全域で韓国人観光客はよくみるそう。
展望室まであがったら、天気が悪いながら市街や海どころか川(室見川)も山(油山)も山脈(背振山)も半島(糸島半島)も島(能古島、志賀島)も見えた。
この視界に入るのがだいたい福岡市だ。なんてよくばりセットな土地なんだ福岡は。
この距離感は既視感があった。ゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルドの冒頭で見た、目の前に広がる冒険世界。
福岡は移動してもメリハリがありそうだ。
福岡市の西北端はねこ住む絶海の孤島
翌火曜日。いよいよ福岡市の端に出発。いざという時のために食料や服などいろいろかばんにつめておく。
スタートは市内のフェリー乗り場「能古渡船場」から。
行き先は、船で65分の福岡市西区にある小呂島。
地図でみると長崎県の丸い島「壱岐島」の東側にちょこんと小さい島がある。これが福岡タワーからも見えない絶海の孤島、小呂島だ。
ずっと北にぽつんとあるのが福岡の北のはての小呂島
以前福岡市西区在住の友人から小呂島の話を聞いたことがあった。
西区の各地区の代表が集まる会議があるとき、ひとりだけ地区代表が泊りがけでやってくる島がある。
また島には宿はなく、船も日に1便か2便しかなく、2便ある日しか日帰りできないと。
そんな小呂島にいつか行きたかった。
フェリー乗り場に行き、切符売り場を買うとき念押しされる。「観光ですか?寝袋や食事は持ってます?島には宿はないですよ?」
「金曜日から風で出航してなかったんで、今ここで待ってた人を送る臨時便が出てってるんですよ。船が戻ったら出発しますがちょっと遅れてます」
「季節風が強いし風が強ければ欠航するからね。だから寝袋とか必要ですよ。チケット買います?」
調べてきたものの、なるほど、これは準備が必要だ。しかしそのために荷物も心も準備してきたし、この日は風が弱いと天気予報で書いてるし大丈夫なはずだ。
「往復ください」
片道大人1760円の切符を往復で買った。
船に乗ったのは数人で、みな仕事で島に行くようだ。船は福岡タワーから見えた島や半島をゆっくりと通り過ぎ、やがて左右どちらを見ても海しかなくなる。
船にはテレビがついていて、ラヴィットを流していた。ラヴィットが終わってジャパネットたかたの番組が終わり、ひるおびがはじまったころ船は小呂島に着いた。
雨の中、念願の小呂島についた。
福岡市の車が待っていて、船から降りてきた誰かを乗せると、すっといなくなった。
マンホールや案内板は紛れもなく福岡市だった。生憎の天気で周りは海しかみえないが、福岡市の端っこだ。
歩いてみると史跡に向かう未舗装の道を除けば1時間くらいで島の道をすべて歩き切れるサイズだった。
集落はひとつで、そこを散策しているとしばしばネコや人にあった。おばちゃんは優しそうでネコは人懐っこかった。
雨でもネコを何匹も見たので、きっと晴れてたらもっとネコがよってくることだろう。
山の上の小学校前まで歩いて海を見渡し、ネコを見る、それが福岡市西北端の小呂島の楽しみ方だった。
島にある店は昼に開く一軒と、自販機のみ。食堂はない。唯一の店では菓子も肉も飲料も酒も売っていた。貴重な食料だ。
福岡名物のとんこつラーメンはないが、福岡のラジオが流れていた。遠い本土の放送だ。
お土産品は小呂島の漁師めしが売られていたので購入した。
もし何日も帰りの船が出航できなかった場合は、ここで食料を調達して生き抜くことになるんだろうなと考えた。
一通り歩いて船着き場の待合所で待った。待っているのは僕ともうひとりだけだった。チケット売り場で当たり前のように切符を販売し始めるまで、欠航しないかドキドキだった。
福岡市内を結ぶ船は、数人の客を載せ14時半ごろに能古渡船場についた。福岡旅、すごかった。