賢くなくていいが、愚かなバカにはなるな

アゴラ 言論プラットフォーム

黒坂岳央です。

投資の神様、ウォーレン・バフェット氏のパートナーとしてバークシャー・ハサウェイを支えてきたチャーリー・マンガー氏は本稿タイトルにつけた名言を残している。

投資の世界において、投資家は誰もがみな賢く他者を出し抜こうとするものだが、同氏いわく「愚かなバカにならないように努めよ。そしてそれは意外なほど難しい」という。

この言葉は投資の世界だけでなく、人生論、ビジネス哲学などに通じている金言に感じられる。

Mihaela Rosu/iStock

成功と失敗の再現性

世の中、とかく「成功するための秘訣、裏ワザ」みたいな主張が多い。ビジネス、投資の世界でも「知識ゼロの主婦でも年収一億円」とか「遊んで寝てるだけでも一億円」みたいなイージーに見せる手法がはびこっているし、英語学習などでも同じく「たった○ヶ月で英語ペラペラ」みたいなものは数多い。こういった主張がはびこる理由はまさしく、「賢く他者を出し抜きたい」という市場ニーズがあまりにも強烈だからである。

しかし、皮肉なことにこうした主張は発信者以外が成功することはない。端から再現性などない秘密の魔法のようにいっていることがほとんどだからだ。そう、成功の再現性にまつわる話はウソと誇張も少なくない。

その一方で、注目するべきは失敗の再現性である。筆者個人的には学ぶべきはこちらからだと思っている。その最たるものが犯罪行為だ。

昨今、全国的に強盗や詐欺で賑わせているが、一番割りを食っているのは末端の若者実行犯である。そもそも犯罪の99%は、メリットよりデメリットの方が明らかに大きい行為だ。犯罪をして得をするケースはほぼない。だからはじめからやるべきではないのだ。しかし、自分で考える力がなければ安易に流されて犯罪に手を染めてしまう。だが「犯罪は損をするからやらない方がいい」と知識として知っていれば確実に回避できる。

これは勉強法などでも同じことが言える。たとえば英単語を暗記する時に、一単語ずつ手で書いて覚えるとか、聞いてもさっぱりわからない状態でひたすら聞き流すとかは明らかに悪手である。人間の脳の機能性を度外視した勉強の期待値効果はゼロであり、その再現性はほぼ100%だ。つまり、こうした効果がない勉強法を一つずつ理解して確実に回避することで、たとえベストでなくてもベターな勉強法にはたどり着ける確率は高まる。

勉強でも投資でも、効果がまったくない愚かな方法を回避することには大きな価値がある。

賢くなくても幸せに生きられる

人生は極端に賢くなくても、幸せに生きることができる。それだけ世界は多様性を認め、セーフティネットも準備をしている。株のトレードで少ない元手から1億円を作ったり、起業してあっという間に月収1億円に達するような人物になれなくても、多くの人は幸せをつかむことはできる。

だがその逆に愚かなことをすれば人生はアッサリ不幸になる。等身大の幸せな人生を歩んでいても、犯罪に手を染めたり反社会的な行動をして悪評が立てば生きづらくなる。失敗すると一発で人生退場アウトな「やらなくてもいい余計なこと」を控えるのはとてもインパクトがあるのだ。

今回の話は親が子供を育てる上でもアプライできると思っている。「公務員は安全パイだから」とか「有名大学に入れ」といった親の成功戦略を子供に伝えることは勧められないが、「犯罪はダメ」「薬物には絶対手を出すな」といった人生を棒に振るレベルの失敗パターンだけは教えてもいいと思っている。

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