スマホなどの普及に伴い、よりいっそう身近になりつつあるモバイルバッテリ。最近のスマホは電池の消耗が激しい製品も多いだけに、モバイルバッテリを携行しておけば、長時間の外出時にも安心だ。
そんなモバイルバッテリは、容量が大きな製品への買い替えや、あるいは繰り返し利用による寿命の到来によって廃棄にいたることもしばしばだが、問題となるのはその処分方法だ。
モバイルバッテリに用いられているリチウムイオン電池は、衝撃や圧力によって発火する性質を持っており、これを原因とするゴミ収集車や処理施設の炎上事故は、全国で数多く発生している。
そのままゴミ回収の日に「不燃ごみ」として出すのはNG。きちんと定められたリサイクルの手順に則り、廃棄する必要がある。
今回はこうしたモバイルバッテリのほか、防災用途で近年普及しつつあるポータブル電源について、2023年3月時点での最新情報をもとに、正しい処分方法についてまとめてみた。
1年前に掲載した記事とは少々状況に変化も見られるので、すでに把握しているという人も、あらためてチェックしてほしい。
「JBRC加盟済み」「自社回収」のどちらかへの対応が実質必須
まずはモバイルバッテリから。モバイルバッテリの処分方法でもっとも確実かつ手っ取り早いのは、家電量販店などの店頭にある「小型充電式電池リサイクルBOX」に投入することだ。これならば無償で、また安全確実に、モバイルバッテリを廃棄できる。
ただしこの「小型充電式電池リサイクルBOX」に投入できるのは、一般社団法人JBRCに加盟するメーカーのモバイルバッテリだけだ。
JBRCは小型充電式電池の回収・再資源化のリサイクル活動を行なっている団体で、リサイクルBOXは加盟メーカーがコストを負担することで各地に設置されている。それゆえ、加盟していないメーカーの製品は自ずから対象外となる。
従って利用者がまず最初にすべきなのは、モバイルバッテリのメーカーがJBRCに加盟しているかどうかを、JBRCのホームページで検索、確認することだ。
そこに名前があれば、同じくJBRCのホームページで、最寄りにある「小型充電式電池リサイクルBOX」の設置店舗を探し、そこに手持ちのモバイルバッテリを持ち込めばよい。
ちなみに「設置済み」とリストに記載されている店舗であっても、BOXが店頭ではなくバックヤードに設置されていることが少なくない(対象外の製品が投入されるのを避けるためだろう)ので、現地に足を運んで見つからない場合は、店員に尋ねることをおすすめする。
もう1つ、メーカーによっては、自社での引き取りサービスを用意している場合がある。たとえばAnkerは、モバイルバッテリの返却窓口を用意しており、宅配便で送ることによって回収してもらえる。送料は利用者が負担する必要があるが、前述の「小型充電式電池リサイクルBOX」のある店舗まで足を運ばなくても済むのは利点だろう。
またJBRCに加盟していないメーカーでも、こうした窓口を用意している場合がある。たとえば百均ルートを中心にモバイルバッテリを販売しているE Coreは、Ankerと同様、ホームページ上でモバイルバッテリの回収を受け付けている。
こうした窓口を分かりやすくアナウンスしているメーカーは信頼してよいだろう。
さて問題となるのは、JBRCに加盟しておらず、かつ自社での回収窓口も用意していないメーカーだ。特にAmazonなどのECサイトで販売されている海外製モバイルバッテリは、これに該当するケースが数多く存在する。
この場合は自治体の回収頼みとなるが、これらの対応は自治体によってもまちまちで、前述のJBRCのBOXを案内されることもしばしばだ。
ただし、モバイルバッテリが市民権を得るようになったことで、回収スキームの整備に取り組む自治体は徐々に増えつつある。
たとえば東京都目黒区は2023年3月1日から、総合庁舎やコミュニティセンターなど区内10カ所の施設に設置した回収ボックスで、モバイルバッテリなどの回収を開始している。
余談だが東京都の場合、23区内で回収を受け付けているのはこの目黒区のほか、江東区(燃やさないごみ)、練馬区(不燃ごみ)などごく少数で、ほとんどの区は収集不可。
逆に23区外は、立川市、三鷹市、調布市、町田市、小金井市、狛江市、東久留米市(いずれも有害ごみ扱い)と、収集体制が23区よりも充実していたりするのがおもしろい。
このように自治体ごとに対応が異なるのは東京に限ったことではなく、どの市区町村でも同様であり、さらに確実に受け付けてもらえるわけではない。
それならば購入の段階で「JBRC加盟済み」もしくは「自社で回収窓口を用意している」のいずれの条件も満たさないメーカーの製品は、対象から外してしまうのがベターだろう。
たとえ価格的にお買い得でも、それは回収コストが上乗せされていないのが一因と考えられるからだ。
ちなみに各自治体のページの多くには、ほかのごみに混入していたモバイルバッテリが原因と見られる発火事故の写真が掲載されているが、たまたまどこかで起こった事故の写真を右へ倣えで転載しているわけではなく、ほとんどが別々の火災事故の写真であることに驚く。
それだけ多くの火災事故が多発しているわけで、窓口の整備が進みつつあるのは、それらの対策という意味合いも大きいのだろう。
ポータブル電源の回収は実質的にメーカー頼み
続いてポータブル電源についても見ていこう。モバイルバッテリと比べても大容量で、家電製品の駆動をも可能にするポータブル電源は、従来はキャンプなどで利用するために販売されていたが、最近は防災用途での訴求も増えている。
もっともポータブル電源は、回収に当たってのルールがモバイルバッテリ以上に定まっていないのが現状だ。前述の小型充電式電池リサイクルBOXのような統一された回収先もなく、現時点ではメーカーによる回収ほぼ一択となる。
しかしメーカーによる回収についても、現時点で各社ごとに大きな差がある。
たとえばポータブル電源を数多くラインナップするAnkerは、前述のモバイルバッテリと共通の窓口でポータブル電源の回収を受け付けている。送料はユーザー持ちになるが、統一された窓口が用意されているのは、ユーザーとしてもありがたい。
また同じくポータブル電源の大手に当たるJackeryも、利用者送料負担による回収を受け付けている。昨年3月に筆者が調査した段階では、同社は自社での回収を行なっておらず、自治体の条例に従って廃棄するようアナウンスしていたので、この1年間のうちに新たに専用の窓口を設け、受付を開始したようだ。
その一方で、国内メーカーの1つであるJVCは、ポータブル電源の回収や廃棄処理を受け付けておらず、自治体に相談するようアナウンスしている。
また廃棄物処理法の規制対象となることを理由に、宅配便などでの送付は受け付けていないことをホームページ上で明言している。
ただし前述のモバイルバッテリと同様、自治体が必ずしも対応しているとは限らない以上、投げっぱなしの印象は否めない。
試しに筆者在住の自治体に問い合わせたところ、有害ごみとして回収可能であるとの回答があったが、回収自体を行なっていない自治体も少なくなく、全体としてはモバイルバッテリよりも状況はさらにシビアな印象だ。
総合的に考えると、メーカーが回収窓口を用意していないポータブル電源は、前述のモバイルバッテリと同様、最初から購入しないのがベターだろう。
バッテリに劣化はつきものであり、それらの処分・回収方法も含めて提供していないのであれば、それは製品として不完全であると言っても過言ではないからだ。
ただし今回のJackeryのように、たとえ従来は不備があっても、あらためて回収スキームを整備するなど、体制を整えてきているメーカーもある。
こうした目に見えないところでの取り組みはユーザーとしても評価すべきだろうし、同様の対応が各社で進み、ユーザーがよりいっそう安心して製品を選べる状況になっていくのを期待したい。
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