確定申告の受付が始まった。申告期間は3月15日(水)まで。昨年の申告最終日は利用者急増でe-Taxシステムの接続障害が発生した。まだまだ時間はあるが、期限ギリギリの申告は避けたい。
前編の冒頭でもe-Taxで申告する人が急増していることをお伝えしたが、国税庁のデータから少し深掘りしてみた。右肩上がりのグラフは、国税庁の発表資料からe-Taxの提出方式ごとの推移を表している。グラフの下段、緑系の部分は納税者自身がe-Taxで申告をした人数で、令和3年は3つの方式合わせて442.4万人となっている。方式による内訳は「ID・パスワード方式」「マイナンバーカード方式」が始まった平成30年分から令和2年分までは「ID・パスワード方式」が多く、令和3年分で「マイナンバーカード方式」が逆転している。
同じデータを各年の申告方式ごとの構成比率でも見てみよう。上から順番に、ピンク色の確定申告会場は絶対数も比率も激減。赤色の地方公共団体会場の利用者は増加傾向だが、ピンク+赤の会場に出向いて申告を行う人の合計の比率は減少傾向、令和3年分は2つ足して約31%だ。
オレンジ色、人数・比率とも最大なのは税理士による代理送信。数では増えているがe-Tax全体の伸び率が高いため比率では減少傾向となっている。令和3年分の比率は36%だ。
急増しているのは平成30年分からスタートしたID・パスワード方式とマイナンバーカード方式。平成29年分はわずか5.5%だったが、令和3年分では従来方式を加えた3方式による「自宅からe-Taxで申告した人」の合計比率は約33%まで急伸している。この勢いで増加すれば1~2年後には税理士による代理送信を抜いて最大勢力になりそうだ。
昨年は提出期限前日から接続障害が発生したが、今年は急増するe-Tax利用者 vs 増強された(はず)のe-Taxサーバー、どちらが勝るか、早めに申告を済ませて高みの見物と行きたいものだ。
実は筆者、昨年は接続障害の被害者というほどではないが少しトラブルの影響を受けた。Facebookで当日の様子を振り返ると、申告期限前日の3月14日12時に「残り36時間 確定申告…頑張ります」と投稿。いろいろな人とコメントのやり取りをしつつ14時半に領収書の写真を投稿、整理が完了したのが16時ごろ。15日の午前中に障害発生に気付き「深夜に確定申告書が完成。朝起きて最終チェックをしてe-Taxで送るだけ…と思ったらe-Taxに接続障害が発生。試すとマジでつながらない。どうする←俺」と投稿するも、12時半ごろに「お陰さまで無事e-Taxで送信できました。やよいの青色申告から接続するときに少し重かった感じですが、1分ほどで完了です。ちなみに国税庁のe-Taxシステムに直接つなぐと10分ほど待たされます」と十数時間で深夜に申告書作成は終わり15日の昼過ぎに完了していた。
クラウドから履歴が取り込めなかった時代は1週間の大仕事だった確定申告。筆者自身が慣れたこともあるが、時間短縮の要因はこのアグリゲーション機能による履歴取り込みとe-Taxによる提出だ。ここ数日、Facebookで知人の「確定申告が楽になった」という投稿も目にしたし、Twitterで「確定申告 e-Tax 楽」を検索すると多くの人が恩恵を受けているようで、e-Tax利用者の増加はまだまだ続きそうだ。
前編でも紹介した確定申告の作業の流れを再確認しよう。9つのステップのうち、①から③のステップを前編で説明した。「え~っ、まだ3分の1」と悲観することはない。確定申告で大変なのは経費や売上を記帳するまで(=④まで)。クラウドから取引履歴を取り込める比率によるが、③まで済めば半分、④まで進めば6割くらいと思われ、着実にゴールに近付いている。後編では、④の手入力から⑨のe-Taxで送信までを紹介しよう。
前編と同様、この記事は【概要】と【実践】の2段階で構成されている。初めて確定申告をする人や、これまで手書きやExcel、クラウドに対応していない青色申告ソフトを利用している人は【概要】だけ目を通していただきたい。概要の項の下段にある次の概要へジャンプするリンクをクリックすれば概要だけツマミ読みができる。
【実践】では、実際の操作を説明。「分かりにくい固定資産の登録」「家事按分の考え方」などの具体的な手順をキャプチャ画像を使って説明するので、確定申告の作業を始めてから必要な部分だけトリセツ的に読んでいただきたい。
前編に引き続き、【実践】のパートで使用する青色申告ソフトは、MM総研の「クラウド会計ソフトの利用状況調査」で事業者別シェアトップの弥生株式会社が提供する「やよいの青色申告 オンライン」。
「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無償キャンペーンを実施中で、「セルフプラン」なら全ての機能が使えて1年間無料。この記事を読みながら実際の操作を無料で試すことができる。
「やよいの青色申告 オンライン」は、昨年はWindowsではマイナンバーカードの読み取りにICカードリーダライタを利用、Macではスマートフォンを利用してe-Taxで申告書を送付した。今年はWindowsもMacもスマートフォンを利用してe-Taxによる申告ができるので、Windowsユーザーは驚くほど楽になった。
クラウドに取引データがない入出金を手入力で記帳しよう
現金支払いの取引を手入力で記帳する【概要】
青色申告ソフトがクラウド対応になって間もなく10年。その間にiPhoneでモバイルSuicaが使えるようになったり、現金払いだった百均や郵便局でスマホ決済やクレジットカードが使えるようになったり、事業経費の取引履歴のデータ化がかなり進んだと思う。「最近現金で経費を支払ったのは……、いつだっけ?」と思い出すのが困難なほどだ。
初めて確定申告をされる人は1年前に支払いの履歴のデータ化など意識しなかったと思われ、取り込み期限が過ぎた履歴や現金で支払った経費がそこそこあると思う。これからも現金でしか支払えない経費は存在する可能性があるので、データがない取引は手入力で記帳しよう。
青色申告には複式簿記の記帳が必要だ。「複式簿記って何?」と思う人もいるだろう。心配は無用、簿記の知識がない人も「やよいの青色申告 オンライン」の指示に従って入力すれば複式簿記によって記帳される。仕訳(=勘定科目の選択)も「文房具」と入力すれば「消耗品費」、「プロバイダ」と入力すれば「通信費」と判別(仕訳)してくれる。
レアな品目の仕訳もINTERNET Watchの読者なら検索すれば見つけられる。そもそも仕訳は多少違っていても納税額に間違いは発生しない。そんなゆる~い意気込みで作業を進めればいいだろう。16年前、簿記の知識など皆無だった筆者は青色申告ソフトを買って初めての確定申告を乗り越えた。複式簿記はもちろん、「出納帳」を「スイトウチョウ」と読むことも知らなかった筆者でさえ自力で青色申告ができた。時代は進化し、自動入力・自動仕訳ができる現在は、青色申告のハードルがかなり低くなったと感じている。
銀行口座の履歴を手入力で記帳する【概要】
前編で紹介したPayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)のように過去数年分の入出金履歴を取り込める銀行もあれば、三菱UFJ銀行のように前月より古い履歴が取り込めない銀行もある。初年度で前年分の銀行の取引履歴が取得できなかった場合は手入力をしなければならない。
銀行口座の設定が事業口座の場合は、勘定科目が「普通預金」、補助科目が銀行名となる。個人口座に設定した場合は勘定科目が「普通預金」、補助科目が「個人用」、または勘定科目が「事業主借」となる。屋号があれば法人口座を用意することになるが、個人名で仕事をされる人も、普段使いの口座とは別に事業用の口座を用意した方が記帳は楽になると思われる。
“売上”と“回収”を手入力で記帳する【概要】
経費と売上、どちらを先に記帳してもよい。これまで経費の記帳を説明したので、次は売上の記帳だ。売上は、物販系はその場で現金受け取りもあるが、法人取引では「月末締め翌月末振り込み」といった“掛け売り”が一般的だ。また、フリーランスの場合は、入金時に源泉徴収されることが多い。出版社から原稿料を受け取る場合は必ず源泉徴収されるが、委託業務(制作物の納品やコンサル料など)では法人から個人事業主への報酬は、法人側の税理士の考え方によって源泉徴収されるケースとされないケースがある。加えて、入金時に振込手数料が差し引かれるケースもある(筆者に限って言及すると、昔は振込手数料が差し引かれることがあったが、最近は引かれた記憶がない)。
このように売上・回収の記帳方法は、「源泉徴収の有無」「源泉徴収が税込計算か税別計算か」「振込手数料の有無」で入金金額が異なり、さらに記帳方法は「源泉徴収を前処理(売上時)か後処理(入金時)か」と、いくつかのパターンがある。
源泉徴収は、原稿料・講演料などで100万円以下の報酬はその10.21%、100万円を超える部分は報酬の20.42%が差し引かれて(源泉徴収されて)支払われる。10.21%、20.42%の税率は、消費税を含まず計算する場合と消費税を含めて計算する場合がある。念のために付け加えると、源泉徴収は税金を先に納税することで、確定申告で最終的な納税額が確定したら相殺される。例えば確定した納税額が20万円で源泉徴収分が15万円なら5万円を納税、源泉徴収分が30万円なら10万円が還付される。毎月支払われる原稿料から分割して納税することで、1年分=数十万円の税金を納めるよりは精神的な負担は小さくなる。
少し具体的な説明をしよう。仮に1万円の売上の場合、源泉徴収がされなければ消費税を含め1万1000円が入金される。源泉徴収される場合は消費税を含まず計算すると源泉徴収額は1021円(1万円×10.21%)で入金額は9979円、消費税を含めて計算すると源泉徴収額は1123円(1万1000円×10.21%)で入金額は9877円となる。
さらに振込手数料。振込手数料は銀行ごとに差があり、窓口、ATM(現金・カード)、インターネットバンキングなど方式でも金額が異なる。法人が振込を窓口で1件1件行うとは思えないので、メガバンク3行の法人用インターネットバンキングの振込手数料を表にしてみた(自行宛は同一支店を含まず)。
初めて取引をする法人から入金があったとしよう。通帳に記載されるのは相手の企業名でどこの銀行から送金されたのかは分からない(振込手数料は分からない)。仮に1万円の売上に対し9489円の入金があると1万1000円との1511円の差額は「源泉徴収額1021円+振込手数料490円」か「源泉徴収額1123円+振込手数料388円」と逆算し、後者の振込手数料が388円という端数の可能性は低いので前者と想像される。
実際には取引先から何回か(何年も)入金があれば源泉徴収、振込手数料のルールが特定できる。しっかりした法人はその都度「支払い明細書」を送ってくれるし、1月には年間の源泉徴収額が記載された「支払い調書」が届くので問題はないが、これらは取引先の義務ではないので何も送られてこない企業もあるため源泉徴収の入金処理は慎重に行いたい。
やっかいなことに相手の窓口担当者(編集者など)は源泉徴収されることは知っていても、税込・税別計算、振込手数料などの詳細は知らないと思われ、面識のない経理担当者に連絡するのも気が引けるので自力で想像することが多い。おそらく読者の中にもサラリーマン時代にお勤めの会社が個人事業主に支払う際の処理方法を知らない人は多いと思われる。
源泉徴収がなければ売上・回収の記帳方法は簡単だが法人取引をする個人事業主は避けられない。ここではいくつかのパターンで売上・回収の記帳をしてみよう。
“売上”と“回収”を手入力で記帳する【実践】
売上の記帳
売上の記帳は、①源泉徴収なし、②源泉徴収あり(消費税を含まず計算)、③源泉徴収あり(消費税を含めて計算)の3つのパターンを説明しよう。いずれも振込手数料はなし、②③は売上時に源泉徴収を処理するケースだ。
<売上の記帳 パターン①>
納品が終わり月末に請求書を発行。初取引の場合、この段階では源泉徴収の有無、振込手数料の有無は分からないことが多いので単純に売上が1万円、消費税が1000円のケースを記帳してみよう。筆者の場合、最終的に源泉徴収される取引先でも請求書と売上の記帳はこの「売上+消費税」に統一している。
1月末に売上1万円、消費税1000円を記帳してみよう。「かんたん取引入力」で[収入]タブの[取引例を探す]をクリックし、表示名の一番上にある[商品の販売・売上]を選択する。科目は「売上」となった。掛け売りなので取引手段はプルダウンメニューから[売掛金]を選択。残りの欄を順次記入しよう。回収予定日は2月末、摘要は「原稿料」、取引先はプルダウンメニューから[インプレス]を選択、金額は税込の売上1万1000円とし登録すれば完了だ。
<売上の記帳 パターン②>
筆者の取引先で1社だけ、先方の希望で(ルールで)請求書に源泉徴収分を分けて明記している会社がある。明細はこんな感じだ。
税別報酬 10,000円
源泉徴収 -1,021円(消費税を含まず10.21%)
消費税 1,000円
請求金額 9,979円
このケースを記帳してみよう。金額入力の手前までは同じ。源泉徴収の額が消費税を含まず計算されるパターンなので金額欄は1万円と入力し「うち源泉徴収税額」にチェックを付ける。右側に源泉徴収税額の1021円が自動的に計算される。金額の欄を消費税を加えた1万1000円に訂正し登録する。
<売上の記帳 パターン③>
もう1つ、源泉徴収の額が消費税を含めて計算されるパターン。金額入力の手前までは同じ。金額欄は1万1000円と入力し「うち源泉徴収税額」にチェックを付ける。右側に源泉徴収税額の1123円が自動的に計算されるので、そのまま登録する。
前述のとおり筆者は源泉徴収の有無にかかわらず、記帳はパターン①の売上+消費税で統一していて、入金処理の際に源泉徴収の記帳をしている。そもそも取引先に記帳方法が知られることはなく、やりやすい方法で記帳すればよい。
3つの記帳方法の結果を見てみよう。右側の売上1万1000円は同じ(青線)。左側のパターン①は源泉徴収をしていないので売掛金は1万1000円。パターン②は消費税を含めず計算しているので売掛金は9979円(翌月の入金額も同額の9979円)、源泉徴収税は1021円(赤線)。パターン③は消費税を含めて計算しているので売掛金は9877円、源泉徴収税は1123円(赤線)となった。
固定資産・減価償却費を設定し、決算作業を開始しよう
固定資産の登録と減価償却費の計算【概要】
膨大な量の経費と売上の記帳が終わったらゴールは間近だ。残る作業は「固定資産の登録と減価償却費の計算」「青色申告決算書の作成」「確定申告書の作成」「e-Taxで送信」となる。
まずは初めて確定申告する人が苦労する「固定資産の登録と減価償却費の計算」から説明しよう。10万円未満の備品は「消耗品費」として記帳する。消耗品費は10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産のことで、百均で買った文具も9万円のスマホも消耗品費となる。「消しゴムは消耗するけどボールペンはさして消耗しなくね」とか「スマホは何年か使うぞ」と悩むことはない。10万円未満は消耗品費というルールだ。
これに対し、10万円以上のものは「固定資産」となる。クルマやお高めのパソコン、高額なカメラなどは固定資産だ。固定資産はジャンルごとに耐用年数が定められていて、クルマは6年、パソコンは4年、カメラは5年などとなっている。長期に使用するから価格=価値を数年に分割して経費にしていく(=残存価値を下げていく)ことを減価償却という。
例えば仕事用に51万円のカメラを5月に購入したとしよう。購入した時点では固定資産を入手して51万円を支払ったことを記帳する。この段階では経費にはなっていない。決算時に減価償却の方法を毎月定額で5年=60カ月に分割して経費にする処理をすれば、1カ月分は8500円で5~12月の8カ月分の6万8000円がその年の経費として減価償却費に計上される。翌年からは12カ月分の10万2000円が経費となり60カ月継続される。
このように10万円以上のものは固定資産を購入したことの記帳と、減価償却費として分割して経費算入する2段階の処理が必要となる。
決算作業開始、固定資産・減価償却の確認【概要】
確定申告の作業もいよいよ後半戦。ステップとしては半分終了だが、労力的にはすでに半分を超え、終盤戦に入ったと思う。メインメニューの[確定申告]をクリックすると「確定申告の手順」が表示される。Step 1~4となっていて、「減価償却の計算」「青色申告決算書の作成」「確定申告書の作成」「電子申告(e-Tax)」という流れだ。
最初のStep 1「減価償却の計算」は前述したように固定資産を記帳し、減価償却の方法を登録していれば、この作業はほとんどない。開業前に購入していて、これからの仕事で使用する固定資産(クルマ、カメラ、パソコン、専用機器など)があればStep 1で追加しよう。
決算作業開始、固定資産・減価償却の確認【実践】
メインメニューの[確定申告]をクリックすると「確定申告の手順」が表示される。念のため確定申告が2022(令和4)年分になっていることを確認。申告方法の選択は「電子申告(e-Tax)」と「書面提出」が表示されるので、「電子申告(e-Tax)」を選択しよう。
すでに固定資産・減価償却の登録は済んでいても、必ずStep 1の[開始]をクリック「減価償却費の計算」を開こう。固定資産を購入して“買ったこと”を記帳した際に、減価償却の登録まで済ませた人は確認するだけだ。「しっかり登録したから確認はいらない」はNG。ここで完了作業をすることで、固定資産の令和4年の減価償却分が経費として計上される。もし未登録の固定資産があれば、ここで追加しよう。
登録済みの固定資産の内容が表示されるので、確認して間違いがなければ[完了]をクリックしよう。戻るとStep 1の右側のチェックマークが緑色に変わり、完了を知らせてくれる。
青色申告決算書・確定申告書を作成しよう
青色申告決算書の作成(基本情報・家事按分)【概要】
Step 2は「青色申告決算書の作成」。作業としては、申告者の氏名・生年月日・住所などの基本情報と、配偶者、扶養家族などの情報を登録する。記帳済みの経費の中で、家事按分が必要なものは比率の登録などを行う。例えば電気代のうち、7割が事業使用で3割が個人使用であれば、電気代の3割分が経費から差し引かれる。これらの作業により、損益計算書、固定資産と減価償却、貸借対照表などの青色申告決算書一式を完成させることができる。
青色申告決算書の作成(基本情報・家事按分)【実践】
Step 2の[開始]をクリックすると基本情報の入力画面が開く。氏名や住所など基本情報を記入しよう。同時に配偶者、扶養親族、業種名、屋号なども記入する。配偶者は所得により配偶者控除の額が異なるので注意。扶養家族は年齢により控除額が異なるので誕生日の記入でタイプミスなどに注意したい。その次は売上、仕入の確認。月ごとの売上、仕入の金額が表示されるので、間違いがないか確認しよう。
次はStep 2の最重要ポイント「家事按分」だ。初期設定で補助科目を設定した水道光熱費の右側に[補助科目ごとに事業割合を設定する]と表示されている。ここにチェックマークを付けると「科目の設定」で補助科目とした電気代、ガス代、上下水道代が表示される。
補助科目の設定をしていないと、全ての水道光熱費の合計しか表示されないが、初期設定をしておいたので、電気代、ガス代などが個別に1年分の合計額が集計されている。ここでは事業割合を電気代は70%、ガス代、上下水道代は10%とした。このように最初に補助科目を設定していないと、データを取り込むときに補助科目ごとに分けることもできないし、異なる事業割合で按分することができない。
按分される可能性が高い通信費(通話代)もここで按分する。個人的な意見としてはLINEやFacebookなどの無料通話が普及し、家族・友人などプライベートの通話料が発生する機会は減った。通話料が取引先企業などに限られる人は按分する必要はないと思われる。
水道光熱費と通信費(通話代)以外に按分する経費がある人は[水道光熱費や通信費以外の科目についても家事按分をしますか?]を[はい]にすると、その下のほかの勘定科目が表示されるので、按分する必要がある科目を探して事業割合を記入しよう。ここでは車両費を70%とした。
水道光熱費以外にもプライベート使用と事業使用が混ざる科目は、最初の科目設定で分けておくと最後の最後に幸せになれる。もしこの段階で按分する必要のある科目に気付いたときは、残念だが科目の設定に戻ろう。補助科目を作成して、手作業で「東京電力は電気代、東京ガスは……」と1つ1つの補助科目に分けてからここへ戻ろう。
参考までに、プライベートでも買い物や旅行にも使用するクルマに関する経費は、車両費と旅費交通費に分けられる。仕事で支払った高速代、駐車料金は100%事業の経費なので「旅費交通費」で仕訳する。仕事の電車移動やホテル代も同じく旅費交通費だ。ガソリン代や月極駐車場、車検、車両購入費、保険、税金などは「車両費」に仕訳して按分しよう。車両費は基本の勘定科目ではなく、自分で勘定科目を設定する申告ソフトもあるが、「やよいの青色申告 オンライン」ではデフォルトで科目設定されているので、うまく使い分けて欲しい。
余談だが、筆者自身の「やよいの青色申告」には、使用していない(17年前に設定した)科目がいくつもある。租税公課(自動車税)の補助科目に設定した車両費、損害保険料(自動車保険)の補助科目に設定した車両費は何年も使用していない。自動車税も自動車保険も車両費にまとめて仕訳すれば楽になることに気付いたのは起業から数年後だった。起業直後に判断するのは難しいが、よく検討していただきたい。
この後も従業員、消費税など質問・確認項目が続くが、フリーランスで従業員なし、免税事業者ならスルーだ。最後に決算の内容を確認して完了となる。完了すると青色申告決算書のPDFがダウンロードできる。書面提出の人は印刷して郵送または税務署に持参しよう。
確定申告書の作成(源泉徴収・所得控除)【概要】
Step 3は確定申告書の作成。Step 2の青色申告決算書は事業内容の申告、この確定申告書は個人の納税の申告となる。配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など個人の部分を確認・記入する。サラリーマン経験のある人は年末調整に近いイメージを持ってもらいたい。
e-Taxの準備を整えて、申告書をネットで送信しよう
グッと楽になった国税庁のe-Tax事前準備【概要】
ここで一旦「やよいの青色申告 オンライン」から離れ、国税庁のサイトでe-Taxの事前準備をしよう。過去にマイナンバーカードでe-Tax申告をした人、ID・パスワード方式でe-Tax申告をした人で、「利用者識別番号」を持っている人は不要だ。
加えて必要なのはスマホアプリ。「弥生 電子署名」アプリとマイナポータルアプリをe-Taxで申告書を送る前にインストールしておこう。
グッと楽になった国税庁のe-Tax事前準備【実践】
「やよいの青色申告 オンライン」は昨年はMacだけスマホ認証が利用できたが、今年はWindowsでもスマホの利用が可能となり、驚くほど簡単にe-Taxで申告書の送信ができるようになった。また、国税庁側も以前はブラウザーに拡張機能を追加したり、e-Tax「事前準備セットアップ」のインストールが必要だったりと面倒な作業が必要だったが、スマホで認証できるようになりグッと楽になった。
初めてe-Taxで申告する人は「利用者識別番号」を取得しよう。まずは「e-Tax ソフト(WEB版)へようこそ」を開こう。ここでエラーメッセージがポップアップする人がいると思われるが、無視して[閉じる]をクリックする。上段右側の「初めてe-Taxを利用される方へ」の[開始届出書の作成・提出]をクリック。届出書の選択画面は[個人の方]を選択する。
上段の進行表示のバーにあるように、氏名、納税地、暗証番号を記入すると利用者識別番号が通知される。
入力が終わると確認画面に進むと思われるが、筆者はすでに番号を持っているので、再発行をすると過去の情報が全て確認できなくなるためここまで。
参考までに以下のページにこの先の手順が書かれている。説明画面は昨年以前の古い画面となっているが、内容は同じだと思われるので参考にしていただきたい。
次はスマホアプリだ。「弥生 電子署名」アプリとマイナポータルアプリをインストールしよう。
前述のとおり、「やよいの青色申告 オンライン」は、昨年はWindowsではマイナンバーカードの読み取りにICカードリーダライタを利用、Macではスマートフォンを利用してe-Taxで申告書を送付した。今年はWindowsもMacもスマートフォンを利用してe-Taxによる申告ができるので、Windowsユーザーはメッチャ楽になった。そこで必要となるのがマイナンバーカードの読み取りができるスマートフォン。対応するスマートフォンは以下のリストで確認することができる。
iPhoneは2016年発売のiPhone 7以降の機種が利用できる。iPhone 7の発売から6年半が経過しているので、iPhoneユーザーはほとんど利用可能と考えられる。Androidは機種によって利用できたりできなかったり。おサイフケータイ、FeliCa、NFC(Type-B)などスペックで判断するのは難しそうなので、一覧を見て機種ごとに確認した方がよい。全般的にはAndroidは対応していない機種がそこそこあるようだ。
もしマイナンバーカードに対応したスマートフォンを持っていない場合はどうするか。
- 昔使っていたiPhone 7以降か、対応したAndroidスマートフォンを利用する(Wi-Fi接続で利用可)
- 家族など親しい人からiPhone 7以降か、対応したAndroidスマートフォンを数分間だけ借りる
- e-Tax用のデータを書き出し、国税庁の「e-Taxソフト(WEB版)」で送信する
筆者は普段はiPhone 12を使用しているが、以前使用していたiPhone 7が手元にある。実際にWi-Fi接続でiPhone 7を利用して申告書の送付ができることを確認済みだ。対応機種にある中古スマホを確定申告用に持っておくのも選択肢としてありだろう。
どうしてもスマホが用意できない人は、3.のe-Tax用のデータを書き出し、国税庁の「e-Taxソフト(WEB版)」で送信する方法となる。手順は弥生のサポート情報を参考にしていただきたい。
「確定申告e-Taxオンライン」で申告書を送信【概要】
いよいよ最後、「確定申告e-Taxオンライン」で申告書を送信する。作業はあっと言う間に終わるが、途中でマイナンバーカード、マイナンバーカードの暗証番号、e-Taxの利用者識別番号とその暗証番号を入力するので、操作を始める前に再確認しておきたい。マイナンバーのパスワードは3~5回間違えると市役所・区役所などに出向いてリセットする必要があるので慎重に作業しよう。