太陽光発電プロジェクトを阻止するため暗躍している活動家グループがいるとの報道

GIGAZINE
2023年02月21日 07時00分
メモ



太陽光発電は風力と並んで環境にやさしい再生可能エネルギーの筆頭とされていますが、設置のために森林が伐採されるような環境負荷も指摘されています。このような地元住民の不安をあおり、太陽光発電プロジェクトを中止に追い込むことを目的に活動をしている市民団体について、アメリカの公共ラジオであるNPRがまとめました。

How misinformation about solar power hinders the fight against climate change : NPR
https://www.npr.org/2023/02/18/1154867064/solar-power-misinformation-activists-rural-america

バージニア州のシェナンドー・バレーで牧場を営むロジャー・ハウザー氏はNPRに、「この土地で親子3世代にわたって牛を飼って生計を立ててきましたが、近年のコスト増に圧迫されて経営は厳しくなる一方」と語ります。そんなハウザー氏にとって、ソーラー事業社が土地を借りたいと申し出たのは渡りに船でした。

by Ryan Kellman/NPR

畜産業は多くの温室効果ガスを排出しますが、ハウザー氏の牧場で太陽光発電を行えば2万5000世帯分の電力を生み出すことができます。老後の資金を確保できる上にエネルギーを生み出せることに気を良くしたハウザー氏は、ソーラー事業社の申し出を承諾しましたが、地元の反対派グループによる4年間にわたる活動の結果、大規模な太陽光発電プロジェクトを規制する法律が制定されてしまいました。

この時、地元グループと共同で反対活動を展開した市民団体が「Citizens for Responsible Solar(責任あるソーラー発電の市民)」です。NPRによると、2019年に発足されたCitizens for Responsible Solarの論調は、風力業界に反発する他の活動家のキャンペーンによって洗練された戦略と多くの共通点があり、少なくとも10の州で太陽光発電プロジェクトと戦う地元グループを支援してきたとのこと。

コロンビア大学サビン気候変動法センターでエグゼクティブディレクターを務めるマイケル・バーガー氏は、「各地に出現した地元グループが同じことを主張し、同じオンラインキャンペーンの資料を使っているので、偶然の一致ではないとの感覚があります」と話しました。

またバーガー氏は、再生可能エネルギーに対する地元の反対を助長する全国的な取り組みがあるようだと指摘した上で、「このような運動の出現は、気候変動やエネルギーが政治化され、現実的な問題への対応として必要なエネルギー転換が政治性を帯びるようになってしまったことを意味しています」と述べています。


Citizens for Responsible Solarを設立したのは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の下で働いた経歴があり、その後も保守派の政治団体と強いつながりを維持しているとされているコンサルタントのスーザン・ラルストン氏です。同氏はまた、「風力発電機の騒音ががんを引き起こす危険性がある」とするドナルド・トランプ元大統領の主張を擁護したことや、化石燃料企業への投資家である共和党支持団体から巨額の資金を受け取ったことでも知られているとのこと。ただし、ラルストン氏はCitizens for Responsible Solarが化石燃料企業から資金を受け取ったことを否定しています。

ラルストン氏はNPRに対し、「Citizens for Responsible Solarはボランティアを主体とした草の根団体です。この団体が反対しているのは太陽光発電ではなく、農地や森林への建設プロジェクトです」と話しました。

ラルストン氏の主張とは裏腹に、業界アナリストは「Citizens for Responsible Solarは、健康や環境リスクに関する誤った情報をオンラインで広め、太陽光発電事業への反対をあおっています」と指摘します。例えば、Citizens for Responsible Solarのサイトでは「太陽光発電は信頼性の低いエネルギー」とされていますが、実際には「電力網の整備により再生可能エネルギーでも安定した電力の供給が可能」だということがエール大学の調べで分かっています。

また、「農村地帯での大規模な太陽光発電プロジェクトが土地を破壊し、かえって気候変動の原因になる」との主張に対しても、「ソーラーパネルは樹木より単位面積当たりの二酸化炭素削減量が大きい」という正反対の調査結果があります。


もちろん、他の大規模プロジェクトと同様に太陽光発電プロジェクトが地域に悪影響をもたらすことは十分有り得るので、そのような懸念は正当なものです。しかし、Citizens for Responsible Solarのようなグループが問題となっているのは、誤った情報を流して地元の土地所有者を自然エネルギー反対派に仕立て上げている点です。

サビン気候変動法センターが2022年に発表した資料によると、再生可能エネルギー開発を阻止または制限することを目的としたアメリカの地方政策は121件も提起されており、これは前年比18%の割合で増加しているとのこと。

バージニア工科大学で再生可能エネルギー施設立地プロジェクトの責任者を務めるロナルド・マイヤーズ氏は、「このような誤情報を訂正するのは非常に困難です。そして、政治家はこうした誤解に巻き込まれるのを大変恐れます」と述べました。

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