二重の極みを練習していた中学時代。結局、机を粉にすることはできなかったが、今でもたまに練習しちゃう。まぐれでできないかなーって。『るろうに剣心』には謎の説得力があると思う。真顔レベルが他のジャンプマンガの比ではないのだ。
しかしながら、冷静になって考えたら、結構意味不明なことを言っている気がする。例えば「無限刃ロジック」とか。
・まず無限刃とは何か
無限刃とは、『るろ剣』史上最強の悪役である志々雄真実(ししおまこと)の愛刀。これを打ったのが新井赤空(あらいしゃっくう)という奇才の刀鍛冶である。
赤空は刀の殺傷能力を追求した人物で、『殺人奇剣』と呼ばれる刀シリーズを作っていた。奇剣というだけあって日本刀と言えるのかどうかよく分からない刀が多いシリーズなのだが、無限刃はその『殺人奇剣』の集大成的存在だ。
・無限刃ロジック
じゃあ、無限刃の力は何なのか? 炎が出るイメージが強い人も多いと思うが、あれは志々雄が使うからこそできる副産物。赤空が意図した本当の能力とは、常に同じ感覚で使い続けられるというものである。
馬鹿な! 刃物はどれだけ斬れても刃こぼれするからそんなことは不可能だ!! 作中、赤空はこの問題をある発想の逆転により解決する。その逆転的発想とは、あらかじめ殺傷能力を保つ程度に刃こぼれさせておくというもの。最初から斬れなきゃずっと同じ! これぞ無限刃ロジック!!
ってなるかーい! 冷静に考えると意味が分からない。ギザギザにしたら刃こぼれする速度はむしろ増すのでは? なお、無限刃で検索したらYahoo知恵袋で似たような質問をしてる人が何人もいた。無限刃ロジックはみんな引っかかっているポイントなのかもしれない。
・第二十六代藤原兼房さん
そこで念のためプロに聞いてみることにした。質問した人物は、第二十六代藤原兼房さん。岐阜県関市の刀匠であり、なおかつ、『~剣心VS志々雄~るろうに剣心と日本刀の世界展』で展示されている無限刃を再現した1人だ。
今回の展示の無限刃は、二十五代目と二十六代目の藤原さん親子で打たれたものであり、刃にギザギザをつけたのは第二十六代藤原兼房さんであるという。史上、最も無限刃のギザギザとガチで向き合った刀鍛冶と言えるのではないだろうか。真剣だけに。
・プロの答え
Yahoo知恵袋では「不可能」という回答が相次いでいるが、第二十六代藤原兼房さんの答えいかんによってはこの流れも変わりかねない。なにせ実際に作った人なわけだから。というわけで聞いてみた。原作の無限刃の能力であるギザギザによって使用感が変わらなくなるロジックはありえるんですか?
第二十六代藤原兼房さん「使用感については人を斬ったことがないので分かりません。でも、言えることがあるとすれば、この刀で斬られるのは普通よりも痛いでしょうね。傷口がスパッとキレイにならないので。斬られたところも普通よりえぐれるでしょうし」
──斬られる側が普通より痛い刀というのはドSの志々雄らしいですね。刀身の見た目も原作のように、少し離れて見たら真っすぐに見えるくらいギザギザが細かいですが、このギザギザってどうやってつけたんですか?
第二十六代藤原兼房さん「秘密。企業秘密です」
──とのこと。使用感が変わらない能力については「そもそも試したことがないのでよく分からない」というのがプロの回答。謎の解明には至らなかったが、その回答には技術が経験と試行錯誤によって積み上げられてきたことを感じさせられた。
・ロマン
逆に言うと、作った人ですら分からないのだから無限刃のロマンは保たれたとも言えるだろう。炎を出す副産物的能力もありえないとは言い切れない。なにせ志々雄だしな。ちなみに、第二十六代藤原兼房さんいわく、今回作った無限刃の真ん中から先の刃紋は炎をイメージしたものになっているという。
近くで見ると、爆発するような刃の働きになっているのも見どころの1つなのだとか。この刃の働きは裏から透かして見るとより見えやすいらしい。無限刃は全方位から見えるように展示されているので、展示に行った際は裏側も確認してみるといいだろう。
参考リンク:関鍛冶伝承館企画展「~剣心VS志々雄~るろうに剣心と日本刀の世界展」
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.