『空気投げ』── それは、”柔道の神様” と呼ばれた「三船久蔵(みふね きゅうぞう)」十段が編み出した、伝説の投げ技と呼ばれているものだ。私(耕平)は柔道の経験が全く無いが、漫画かなにかでその名前は何となく知っていた。
そして私が習っている武術の稽古会で、合気道を教えている先生と一緒になった。その後の食事会で交わした何気ない会話の中、柔道経験が全く無い私に対して、その先生は伝説の技『空気投げ』を、なんと30分もあればマスターさせられると豪語してきたのだ!
絶対に怪しい……武術の経験は多少なりともある私の知見から疑う余地しかなかったが、物は試しと道場に乗り込んだところ、そこには信じられない光景が待っていた!
・そもそも『空気投げ』とは?
「合気道の先生が、ド素人に柔道の伝説の投げ技を30分でマスターさせる」そんなことが本当にできるのか? を検証すべく、千葉県浦安市にある入船中学校柔道場に足を運んだ。出迎えてくれたのは「合気道投げっぱなし道場」を主宰している、廣末 高明(ひろすえ たかあき)先生だ。
「合気道投げっぱなし道場」とは、”誰にでも10分で合気修得” をコンセプトに、難解な合気道をわかりやすく指導しているのが特徴らしい。さらに、そこで習得した技を高めるために投げっぱなしの場を提供しているといった団体だ。そんなわけで道着に着替えて、さっそくチャレンジ!
ところで空気投げとはどういうものか? まずは見ていただこう。まずは組み合って……
足腰に頼らず、腕だけを使って絶妙な体捌き(たいさばき)で……
投げる!
これが伝説の技と呼ばれる「空気投げ」だ!
そして先生が一言。
「この技を30分で伝授します!」
・『空気投げ』を教わる
いや、どう考えても怪しいだろう。もはや疑いの余地しかないが、さっそく指導していただく。まずは礼から。
廣末先生いわく、伝説の投げ技『空気投げ』は、いくつかのステップを踏んで体得できるという。まず最初に、お互い座り合って投げ技に必要な腕の感覚を養う。まずグッと握って力だけで倒そうとすると、全然上手くいかない。
そこで先生から「相手の肘や肩を意識して動かすように力を伝える」と言ったアドバイスを受ける。実際、先生がやってみると簡単に投げられてしまった。
これを踏まえ、実際に私がやってみると……
おっ、できた!
全く力を意識しないで、腕を通して感覚を伝えるだけで投げられる……これは面白い!
腕からの力の加え方を覚えたところで、次は体の重心を強化する方法を指導してもらう。ここで必要なのは体の中心に軸を作りながら、かかとの方に重心を持っていくことだ。
まず中心に軸ができるよう、両手を合わせて体の中心に持ってくる。
そして細かいジャンプを繰り返しながら、かかとに重心を持ってくることを意識して、ジャンプできなくなるくらいまでに重心を移動する。
その重心を保ったまま、先生が握った私の腕を頭上に振り上げると……
力を使わず、投げてしまった。
何とも不思議だ……。もう一つ、重心の移動による投げを体験してみる。まず先生の指導のもと、お互い立って腕を引っ張り合う。
そして先ほどと同じようにジャンプしながら、かかとに重心を持ってくると……
やはり、簡単に投げられてしまった。
そして、私が同じことを試してみると……
「えっ? 先生やらかしてない??」ってくらい、本当に簡単に投げることができた。自分も同じやり方で投げられているので、嘘偽りないことは確かだ。
・いざ『空気投げ』を実践!
ここまでで準備は完了。いよいよ空気投げに挑む。まずは先生が私を投げてみる。
すると……
あっさり投げられてしまった。
次に今まで教わったことを踏まえて、先生相手に投げてみる。まずはジャンプして……
教わった通りに投げる!
出来てしまった。
少しブサイクな感じはあるが、紛れもなく柔道の伝説の技を、ド素人が体得できたのだ。しかも30分で教えると言っていた廣末先生だったが、実際には20分程度しか経っていなかった。そのことを先生に告げたところ……
満面のドヤ顔!
いや〜、すげぇ。柔道や合気道など、投げを中心とした武道の経験は無かったが、これはハマりそうだ。そんなわけで伝説の投げ技を習得してみたい! と思っている人は、ぜひ「合気道投げっぱなし道場」の門を叩いてみてはいかがだろうか?
参考リンク:合気道投げっぱなし道場
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.