【Hothotレビュー】M2 Max、96GBメモリ、4TB SSDのMacBook Proを堪能。化け物スペックをM1 Ultra/Max搭載機と比べるとどうなるか?

PC Watch

Apple「MacBook Pro(16インチ,2023)」34万8,800円~

 Appleは次世代Appleシリコン「M2 Pro」と「M2 Max」を採用した新型14インチ、16インチMacBook Proを2月3日より販売開始した。今回、M2 Max、96GBメモリ、4TBストレージを搭載する「MacBook Pro(16インチ,2023)」を借用したので、Apple製ノートのほぼ最上位構成のモデルがどれくらいのパフォーマンスを発揮するのか見ていこう。

 M2 Proは「M1 Pro」の約20%増の400億個のトランジスタ、M2 MaxはM1 Maxより100億個多い670億個のトランジスタを搭載。M2 ProとM2 MaxはM1 ProとM1 Maxよりも、CPU性能が最大20%、GPU性能が最大30%、Neural Engineが最大40%高速になっていると謳われている。

 また最大メモリ搭載容量が前世代の64GBから96GBへと引き上げられており(38コアGPUのM2 Max搭載モデルのみ)、クリエイティブアプリなどでより大容量のデータを扱えることを期待できる。

パフォーマンスを向上させつつ電力効率をさらに改善

 MacBook Pro(16インチ,2023)はOSに「macOS Ventura バ-ジョン13」、SoCにM2 ProまたはM2 Maxを採用している。

 M2 Proは10コアCPU/16コアGPU、12コアCPU/19コアGPU、M2 Maxは12コアCPU/30コアGPU、12コアCPU/38コアGPU版が存在するが、16インチモデルには10コアCPU/16コアGPUを搭載する、最安価なM2 Pro版は用意されない。

 メモリはLPDDR5規格のユニファイドメモリが採用されており、M2 Proでは16GB/32GB、M2 Max(30コアGPU)では32GB/64GB、M2 Max(38コアGPU)では32GB/64GB/96GBが選択できる。つまりSoCによって搭載メモリが限定されるわけだ。

 ストレージは512GB/1TB/2TB/4TB/8TB SSDを用意。Appleの技術仕様にはSSDの規格や、速度について記載はない。SSDの速度についてはベンチマークで確認しよう。

 ディスプレイは「Liquid Retina XDRディスプレイ」と呼ばれる、16.2型(3,456×2,234ドット)を採用。スペック表を見る限りは前世代から変更はない。オーディオ機能についても、フォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカーサウンドシステムということで前世代と同一だ。

 インターフェイスもThunderbolt 4×3、HDMI、SDXCメモリーカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック、MagSafe 3ポートという構成で前世代を踏襲。ただしワイヤレス通信機能は、前世代はWi-Fi 6、Bluetooth 5.0だったが、今世代はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3にアップグレードされている。

 なお外部ディスプレイの接続台数、解像度、リフレッシュレートなどは搭載SoC、ディスプレイの構成で異なる。その条件については下記表を参照してほしい。

 本体サイズは355.7×248.1×16.8mm、重量はM2 Pro版が約2.15kg、M2 Max版が約2.16kg。100Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大15時間のワイヤレスインターネット、最大22時間のApple TVアプリのムービー再生が可能と謳われている。Appleによれば最大22時間のバッテリ駆動時間はMac史上最長とのことだ。

 前世代の「MacBook Pro(16インチ,2021)」のバッテリ駆動時間は最大14時間のワイヤレスインターネット、最大21時間のApple TVアプリのムービー再生だった。今世代はどちらも1時間延長されたことになる。パフォーマンスを向上させつつも、電力効率をさらに改善したわけだ。

【表1】Appleシリコン搭載MacBook Proのスペック比較
MacBook Pro (16インチ, 2023) MacBook Pro (14インチ, 2023) MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)
OS macOS Ventura バ-ジョン13 macOS Monterey バ-ジョン12
CPU M2 Pro(12コアCPU、19コアGPU)
M2 Max(12コアCPU、30コアGPU)
Max(12コアCPU、38コアGPU)
※12コアCPUは高性能コア×8、高効率コア×4
※NeuralEngineはすべて16コア
※メモリ帯域幅はM2 Proが200GB/s、M2 Maxが400GB/s
M2 Pro(10コアCPU、16コアGPU)
M2 Pro(12コアCPU、19コアGPU)
M2 Max(12コアCPU、30コアGPU)
M2 Max(12コアCPU、38コアGPU)
※10コアCPUは高性能×6コア、高効率コア×4、12コアCPUは高性能コア×8、高効率コア×4
※NeuralEngineはすべて16コア
※メモリ帯域幅はM2 Proが200GB/s、M2 Maxが400GB/s
M2(8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、10コアGPU、16コアNeural Engine)
※メモリ帯域幅は100GB/s
メモリ M2 Pro:16GB/32GB
M2 Max(30コアGPU):32GB/64GB
M2 Max(38コアGPU):32GB/64GB/96GB
※ユニファイドメモリ、LPDDR5
8GB/16GB/24GB
※ユニファイドメモリ、LPDDR5
ストレージ 512GB/1TB/2TB/4TB/8TB SSD 256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ 16.2型(3,456×2,234ドット、254ppi、16:10.343、光沢、フルスクリーンの持続輝度:最大1000cd/m²、ピーク輝度:1600cd/m²、コントラスト比:1,000,000:1、色域P3、10億色対応、最大120HzのProMotion、ミニLEDバックライト、タッチ非対応、スタイラス非対応) 14.2型(3,024×1,964ドット、254ppi、16:10.392、光沢、フルスクリーンの持続輝度:最大1000cd/m²、ピーク輝度:1600cd/m²、コントラスト比:1,000,000:1、色域P3、10億色対応、最大120HzのProMotion、ミニLEDバックライト、タッチ非対応、スタイラス非対応) 13.3型IPS液晶(2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、500 cd/平方m、色域P3、数百万色以上対応、60Hz、LEDバックライト、タッチ非対応、スタイラス非対応)
通信 Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
インターフェイス “Thunderbolt 4(充電、DisplayPort)×3、HDMI、SDXCメモリーカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック、MagSafe 3ポート Thunderbolt 4×2(充電、DisplayPort)、3.5mmヘッドフォンジャック
接続可能な外部ディスプレイ M2 Pro:
・最大2台(Thunderbolt経由で最大6K/60Hz)、最大2台(Thunderbolt経由で最大6K/60Hz、HDMI経由で最大4K/144Hz)
・最大1台(HDMI経由で8K/60Hz、4K/240Hz)
M2 Max:
・最大4台(Thunderbolt経由で最大6K/60Hzを最大3台、HDMI経由で最大4K/144Hzを1台)
・最大3台(Thunderbolt経由で最大6K/60Hzを最大2台、HDMI経由で8K/60Hzを1台または4K/240Hzを1台)
最大1台(Thunderbolt経由で最大6K/60Hz)
カメラ Webカメラ(1080p) Webカメラ(720p)
バッテリ容量 100Wh 70Wh 58.2Wh
バッテリ駆動時間 最大15時間のワイヤレスインターネット、最大22時間のApple TVアプリのムービー再生 最大12時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生 最大17時間のワイヤレスインターネット、最大20時間のApple TVアプリのムービー再生
本体サイズ 355.7×248.1×16.8mm 312.6×221.2×15.5mm 304.1×212.4×15.6mm
重量 M2 Pro:約2.15kg
M2 Max:約2.16kg
M2 Pro:約1.60kg
M2 Max:約1.63kg
約1.4kg
セキュリティ Touch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン)
同梱品 140W USB-C電源アダプタ、USB-C – MagSafe 3ケーブル(2m) 96W USB-C電源アダプタ(※10コアCPU搭載M2 Proは67W)、USB-C – MagSafe 3ケーブル(2m) 67W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)
カラー シルバー、スペースグレイ
【表2】MacBook Pro(16インチ,2023)の標準構成モデルの価格
SoC M2 Pro M2 Max
CPU 12コア
GPU 19コア 38コア
メモリ 16GB 32GB
ストレージ 512GB 1TB
価格 34万8,800円 37万6800円 49万8,800円

M2 Max(12コアCPU、38コアGPU)、96GBメモリ、8TBストレージという最上位構成のモデルの価格は91万8,800円

今回借用した、M2 Max(12コアCPU、38コアGPU)、96GBメモリ、4TBストレージという構成のモデルの価格は75万800円

本体天面は完全にフラット。ボディには100%再生アルミニウムが使用されている。カラーはこのスペースグレイに加えて、シルバーが用意

底面には吸気口はいっさい存在しない。ネジは分解防止のためか星形の特殊ネジが使われている

ディスプレイは16.2型(3,456×2,234ドット、254ppi、16:10.343、光沢、フルスクリーンの持続輝度:最大1,000cd/平方m、ピーク輝度:1,600cd/平方m、コントラスト比:1,000,000:1、色域P3、10億色対応、最大120HzのProMotion、ミニLEDバックライト、タッチ非対応、スタイラス非対応)を搭載

キーボードは日本語(JIS)、英語(US)、英語(UK)などが選択できる

本体前面(上)と本体背面(下)。前面の凹みに指をかければ、片手でディスプレイを開ける

右側面にはSDXCメモリーカードスロット、Thunderbolt 4、HDMI、左側面にはMagSafe 3ポート、Thunderbolt 4×2、3.5mmヘッドフォンジャックを用意

Cinebench R23のCPU(Multi Core)は14,790

 最後にパフォーマンスをチェックする。今回はM2 Proを搭載する「Mac mini (2023)」、M1 Ultraを搭載する「Mac Studio (2022) 」、M1 Maxを搭載する「MacBook Pro (16インチ, 2021) 」を比較対象機種として採用した。それぞれの機種の主なスペックについては下記の表を参照してほしい。

 なおベンチマークを実施する際には、「システム設定→バッテリー」でエネルギーモードを「高出力」に設定している。ただしバッテリベンチマークだけは「自動」に設定した。

【表4】テスト機の主なスペック
MacBook Pro (16インチ, 2023) Mac mini (2023) Mac Studio (2022) MacBook Pro (16インチ, 2021)
SoC M2 Max M2 Pro M1 Ultra M1 Max
CPU 高性能コア×8、高効率コア×4 高性能コア×8、高効率コア×4 高性能コア×16、高効率コア×4 高性能コア×8、高効率コア×2
GPU 38コア 19コア 64コア 32コア
Neural Engine 16コア 16コア 32コア 16コア
メモリ 96GB 16GB 128GB 64GB
ストレ-ジ 4TB 1TB 2TB 2TB
OS macOS Venture バージョン13.2 macOS Venture バージョン13.2 macOS Monterey バージョン12.3.1 macOS Monterey バージョン12.0.1

 まずCPU性能については、Cinebench R23のMulti CoreでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約101%、Mac Studio (2022)の約61%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約119%だった。

Cinebench R23.200

Cinebench R23.200実行中の消費電力は最大69.855W、平均67.37W、アイドル時の消費電力は平均18.74W

 一方、Geekbench 5.4.6のMulti-Core ScoreでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約100%、Mac Studio (2022)の約63%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約119%のスコアを記録した。

 「M2 MaxはM1 MaxよりもCPU性能が最大20%高速」というAppleの発表をほぼ裏付ける結果となったが、高性能コアを16コア搭載するM1 Ultraには、世代が古くても及ばない結果となったわけだ。

Geekbench 5.4.6

 GPU性能については、GFXBench MetalでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約100~193%、Mac Studio (2022)の約62~161%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約111~140%のスコアを記録した。

 Appleは「M2 MaxはM1 MaxよりもGPU性能が最大30%高速」と発表しており、今回はそれより少し高めのスコアを記録している。一方、64コアGPUを搭載するM1 Ultraとは、テスト項目によって勝敗が入れ替わっている。M2 MaxはM1 UltraよりGPUコアは少ないが、特定のベンチマークではスコアが上回ったことになる。

GFXBench Metal

 ストレージ性能については、Blackmagic Disk Speed TestのシーケンシャルリードでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約119%、Mac Studio (2022)の約111%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約110%だった。

Blackmagic Disk Speed Test

 AmorphousDiskMark 4.0のシーケンシャルリード(SEQ1M QD8)でMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約112%、Mac Studio (2022)の約103%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約103%のスコアを記録している。

AmorphousDiskMark 4.0

 あくまでも4TBのストレージを搭載したMacBook Pro (16インチ, 2023)という前提条件だが、今回のマシンの中でストレージ性能が最も高いということになる。

 実際のアプリでも処理速度を計測してみたが、LightroomでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約66%、Mac Studio (2022)の約74%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約40%。

Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像

 Premiere ProでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約57%、Mac Studio (2022)の約104%、MacBook Pro (16インチ, 2021)の約97%、iMovieでMacBook Pro (16インチ, 2023)はMac mini (2023)の約85%の所要時間で処理を終えた。

Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し

iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し

 Premiere ProでMacBook Pro (16インチ, 2023)とMacBook Pro (16インチ, 2021)の優劣が逆転しているのは、ベンチマーク実施時期が異なることによるアプリのバージョン違いが原因と思われる。今回のPremiere Proの結果はあくまでも参考に留めてほしい。

 高負荷時の発熱をチェックするため、Cinebench R23.200を連続で10分間実行したあとに表面温度を計測してみたが、キーボード面は排気が当たるディスプレイ下部で最大53.4℃、底面は排気口近くで44.7℃を記録した(室温27.2℃で測定)。直接触る場所の温度が高くなっているわけではないので、実用上は問題ないだろう。

Cinebench R23.200実行中のキーボード面(排気が当たるディスプレイ下部)の最大温度は53.4℃(室温27.2℃で測定)

底面の最大温度は44.7℃

ACアダプタの最大温度は42.8℃

排気は背面側のみに行なわれる

 バッテリ駆動時間についてはディスプレイの明るさ6/16、音量6/16という条件でYouTube動画を連続再生してみたところ、19時間33秒動作した。スペックでは最大15時間のワイヤレスインターネット、最大22時間のApple TVアプリのムービー再生とされているので、それに近いバッテリ駆動時間を記録したことになる。

 もちろん高負荷な処理を実行し続ければバッテリ駆動時間はもっと短くなる。しかし日常的な用途ならモバイル用途にも活用できるスタミナ性能を備えていると言えよう。

ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16でYouTube動画を連続再生した際の動作時間は19時間33秒

ACアダプタなしで最高性能を発揮、スタミナ性能も申しぶんなし

 Cinebench R23.200で3万を超えるスコアを記録しているWindows搭載ノートPCも登場しているが、Appleシリコンを搭載したMacBook Proの強みはバッテリ駆動でもACアダプタ駆動と同じパフォーマンスを発揮できること。

 メモリを最大で96GB搭載できることも大きなアドバンテージで、バッテリ駆動時間はYouTube動画連続再生で19時間33秒と突出している。もちろんビジュアル、オーディオ品質も現行ノートブック随一と言えるほどハイクオリティだ。

 ACアダプタなしで、さまざまな場所で長時間ハイパフォーマンスを発揮できるクリエイティブマシンを探しているのなら、MacBook Pro (16インチ, 2023)は有力な候補と言えよう。

Source

コメント