シャープ、円安、ディスプレイ不振で大幅減益に–新規事業に人員シフト「2023年度は確実に黒字化したい」

CNET Japan

 シャープは、2022年度第3四半期(2022年4~12月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比3.9%増の1兆9670億円、営業利益は99.6%減の2億円、経常利益は99.8%減の1億円、当期純利益は前年同期の708億円から、マイナス72億円の赤字となった。


2022年度第3四半期累計連結業績概要

 シャープ代表取締役副社長 執行役員の沖津雅浩氏は、「注力分野であるブランド事業では、スマートライフや8Kエコシステムが伸長するとともに、前年同期に新型コロナウイルスの拡大により、大きな影響を受けたエレクトロニックデバイスも増収となり、前年同期を上回った。営業利益、経常利益、最終利益は、円安の影響があったこと、ディスプレイ事業の不振が続いたことなどから、大幅な減益となったものの、営業利益および経常利益は黒字を確保した」と総括した。


シャープ 代表取締役 副社長執行役員の沖津雅浩氏

 営業利益においては、為替影響でマイナス304億円。連結化した堺ディスプレイプロダクト(SDP)が367億円の減少となった。

 2022年度第3四半期(2022年10~12月)の売上高は前年同期比4.9%増の7090億円、営業利益は前年同期の248億円からマイナス21億円の赤字、経常利益は前年同期の337億円からマイナス100億円の赤字、当期純利益は前年同期の283億円からマイナス175億円の赤字となった。

 第3四半期累計(2022年4~12月)のセグメント別業績では、ブランド事業の売上高は前年同期比4.7%増の1兆476億円、営業利益は63.0%減の226億円。そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比8.7%増の3599億円、営業利益は37.4%減の226億円となった。「スマートライフは、欧米の調理家電、国内の洗濯機などが大きく売り上げを伸ばした。また、空気清浄機は、プラズマクラスターネクストなどが好評で国内シェアを維持したものの、市場全体の低迷の影響を受けて前年同期を下回った。エネルギーソリューション事業は、海外EPCと国内家庭向けの売上げが大きく伸長したが、国内EPC事業が前年実績を下回った」とした。


第3四半期累計セグメント別売上高

第3四半期累計セグメント別営業利益

 白物家電では、1円の円安で営業利益に年間9億円のマイナス影響が出るとしており、これが国内白物家電事業に影響。今回の減益理由にも円安の影響をあげている。

 「原材料費や物流費の高騰が影響しているが、徐々に戻りつつある。物流費は2023年度には解決すると見ている。だが、白物家電は第4四半期が最も大きく利益率が低下すると想定している」とした。

 シャープでは、国内の白物家電については、新製品への切り替え時に価格転嫁を行ってきたため、その成果が出るまでに他社よりも時間がかかる傾向にあった。「欧米についてはスムーズに価格対応ができ、順調に売上げを伸ばしている。テレビは2022年12月から2023年1月にかけて新製品への切り替えを図り、価格対応ができた。エアコンは2023年2月に新製品への切り替えが完了し、価格への転嫁が終わる」と述べた。

 また、「洗濯機や冷蔵庫の販売台数は前年実績を下回っているが、付加価値製品への転換が進み、金額ベースでは前年実績を上回っている。行動制限が緩和される一方で、エネルギー価格が上昇しており、2023年度の白物家電の販売台数は厳しい状況になると見ている。しかし、台数が減少しても、付加価値製品の比率が上昇していることからもわかるように、買い替えの際には良いモノを購入するという流れがある。冷蔵庫や洗濯機、エアコンは台数よりも金額の方が伸びるだろう。とくにエアコンは、2023年のキーワードは『省エネ』になり、電気代高騰を見据えて各社が『省エネ』を打ち出してくるだろう。電子レンジ、掃除機、空気清浄機などは、コロナ特需の反動がある。空気清浄機は年間200万台規模の市場で推移するだろう」などと予測した。


スマートライフ

 8Kエコシステムの売上高は前年同期比5.7%増の4492億円、営業利益は39.6%減の110億円。「第3四半期は、ビジネスソリューション事業が前年同期比で10%を超える増収となったのに加えて、増益を達成。MFP事業も各地域で着実に伸長した。スマートオフィス事業やインフォメーションディスプレイは欧米を中心に売上げを伸ばした。だが、テレビ事業は減収となった。アジアや米州でテレビの売上げが伸びたが、市況低迷の影響を受けた中国、欧州、日本ではテレビが減収となった。テレビ事業では約20億円の特許費用が一過性費用として発生している」という。


8Kエコシステム

 ICTは、売上高が前年同期比2.4%減の2384億円、営業利益は前年同期の53億円から、マイナス115億円の赤字に転落した。

 「PC事業は世界的な需要低迷の影響により減収となった。だが、国内のB2Gや教育向けPC、ソリューション関連の売上げは伸長した。通信事業は、スマートフォンのラインアップ展開や非スマートフォン商材の強化により増収となった」という。

 PC事業では、上期から欧州における構造改革に取り組んでおり、収益は改善方向に向かっているという。

 「PC事業は、固定費の削減、売価への転嫁、付加価値のある製品の比率を高めるといった取り組みに加えて、PC単品での販売から、ソリューション事業の強化、VRとの連携、スマートオフィスの提案を進めていくことが大切である。国内B2B市場では価格転嫁も進み、ブレミアムモデルへのシフトも成果が出てきている」と語った。


ICT

 デバイス事業の売上高は前年同期比0.9%増の9767億円、営業利益は前年同期の209億円から、マイナス112億円の赤字に転落。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比5.2%減の6244億円、営業利益が前年同期の149億円の黒字からマイナス245億円の赤字となった。エレクトロニックデバイスは、売上高が前年同期比13.8%増の3522億円、営業利益は前年同期比120.7%増の133億円に拡大した。

 「ディスプレイデバイスは、大型液晶やPC、スマホ向けディスプレイの市況が厳しいものの、車載向けパネルなどが伸長した。だが、堺ディスプレイプロダクトの連結影響により赤字となった。また、エレクトロニックデバイスは、2022年モデル向けのデバイス販売が堅調だった」とした。


ディスプレイデバイス

エレクトロニックデバイス

通期業績見通しを下方修正「想定以上にディスプレイの需要が低迷」

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)通期の業績見通しを下方修正した。売上高は11月公表値に比べて1500億円減の前年比2.2%増の2兆5500億円としたほか、営業利益は450億円減とし、マイナス200億円の赤字を見込む。売上高の1500億円減のうち、ディスプレイデバイス事業で1000億円減、ブランド事業で500億円減としている。また、営業利益の450億円減のうち、ディスプレイデバイス事業で350億円減、ブランド事業で100億円減とした。11月時点では公表していた経常利益と当期純利益は、現時点で合理的な算定が困難であるため未定とした。通期での最終赤字を想定しているという。


2022年度連結業績予想

 「第3四半期までの実績や、足元の事業環境を反映し、業績予想を修正した。前回の業績見通し公表以降、想定以上にディスプレイの需要が低迷し、白物家電やテレビなどの主力市場である国内、ASEANでも市況が悪化した」とした。

 その上で、「2023年度の黒字化に向けて、ディスプレイデバイス、PC、通信、テレビなどの各事業において抜本的な構造改革に取り組んでいる。そのため、現時点で、合理的に算出することが可能な営業利益までを開示した」と説明した。

 ディスプレイデバイス事業は、スマホやPCなどの最終製品の市況在庫の増大や、需要減速に伴う売上減少を織り込んでいる。ブランド事業では、白物家電やテレビにおいて、日本国内の低迷や、2022年10月以降の物価上昇などの影響により、急激に冷え込んだアジアでの販売減を織り込んだという。

 構造改革の内容は、「現在は精査中である」としながらも、既存事業の人員整理、海外拠点の再編に乗り出す姿勢を示す。具体的には、欧州PC事業の人員のスリム化、通信事業の構造改革、テレビのマレーシア工場の人員整理、SDPの固定資産の減損を含めた検討を行っているという。業績が厳しい国内事業部門においても、これから成長を目指す新規事業に人員をシフトするという。「負の遺産は2022年度中に出し切り、2023年度は確実に黒字化したい」(シャープ 常務執行役員 管理統轄本部長の小坂祥夫氏)とした。

 2023年度は、ディスプレイデバイス事業を除いて、すべての事業を黒字化する計画を打ち出すという。

 沖津副社長は、「シャープを取り巻く事業環境が急激な変化を続けるなかで、2022年度の業績は大変厳しいものになる見通しである。危機的状況にいち早く対応し、2023年度に確実に黒字転換を図るべく、すべての不振事業において、2022年度中に抜本的な構造改革をやり遂げる覚悟である。厳しい状況にあるからこそ、構造改革と並行して、持続的な成長基盤の構築に向けた事業構造の転換を加速していく」と述べた。

 SDPについては、2022年に子会社化を決定した際には、テレビパネルが高い価格で取引されていたり、米中貿易摩擦問題を背景に、日本で生産している液晶パネル事業を拡大できると想定したりしていたが、パネル価格が大幅に下落し、この下落傾向が2023年6月まで続くと予想されていることなどを示しながら、「子会社化を決定した当時とは状況が大きく変わっている。だが、子会社化したからには、これから有効活用することに取り組む。中小型パネルの生産も準備している。全体の稼働状況を見ながら中小型の生産を進めたい」とした。

 なお、2022年11月時点では、調理家電やスマホといった一部製品について、日本国内のEMSでの生産に移行することを検討していることを明かしていたが、「一時のような円安の状況ではなくなっており、検討していたものについては、2023年度もいままで通り海外生産を継続することを決定した」と述べた。

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