【連載】税理士・高山弥生のよくわかる! 身近な税金の話(vol.3)
令和5年10月から始まる「インボイス制度」。インボイスとは「適格請求書」のことで、新制度の下では、このインボイスを用いて仕入税額控除を受けることができます。
主に事業の仕入れやフリーランスへの外注費などに関わってくる話であるため、会社員にはあまり影響がないと思っている人も多いようですが、実はそうとも限りません。
以前執筆した「今さら聞けない、会社員が知っておきたい「インボイス」の超ポイント」の記事では、インボイス制度下で会社員が会社の経費を使用するとき、会社からインボイスを求められる可能性があることをお伝えしました。※インボイス制度の基本について、詳しくは上記の記事をご確認ください。
ただ、いまやモノ・サービスの提供の形はリアル・オンラインと様々です。ネットで購入したとき、もしくはこちら側が事業者を選びづらいタクシーの利用など、インボイスのもらい方が分かりづらい例もあります。今回は、こうしたケースについてどのように対応すればいいのかを見ていきたいと思います。
Amazonでモノを購入する場合
たとえば、業務で使用するものをAmazonで購入する場合、インボイスをもらえるかどうかの判断はどう行えばいいのでしょうか?
Amazonでは出品者がAmazonである場合と、Amazonではない場合とがあります。出品者がAmazonの場合はインボイスを受け取ることができると思われます。では、Amazonではない出品者からインボイスを受け取ることはできるのでしょうか?
Amazonの出品者同士の掲示板であるセラーフォーラムには、公式からのお知らせとして次のような記載があります。
Q2. Amazonでの販売を続けるために必ず番号は必ず取得しなければならないのでしょうか?(筆者注:原文ママ)
A2. 現在はAmazonでの販売をするにあたり登録は必須ではありません。ただ、本制度の開始後、法人・個人事業主のお客様を対象とするAmazonビジネスでは、お客様が適格請求書を受け取れる商品かどうかを、商品ページ上で識別できるような仕組みとなることが予定されています。出品者様の売上に影響を与える可能性がございますので、番号を取得いただくことをおすすめいたします。
(引用:【重要】「適格請求書発行事業者登録番号」の取得とご報告についてのお願い Amazonセラーフォーラム)
これを見ると、インボイス制度が始まる頃には、Amazonのページ上で出品者がインボイス発行事業者かどうか分かるようになる予定とのことです。Amazonでの物品購入時は、インボイスがもらえる出品者かどうか確認してから購入することになります。
このときの注意点として、購入名義が従業員である場合です。インボイスには、受領者の氏名または名称の記載が必要です(図の6番)。
購入名義が従業員の場合、会社名の記載がないということになり、インボイスの記載事項を満たしません。
この場合、立替金精算書を作成し、従業員宛のインボイスと共に会社が保存する必要があります。この立替金精算書は、何か特別な様式が定められているわけではありませんので、現在会社で使用しているものを継続使用できると思われます。
クラウドソーシングで業務を発注する場合
クラウドソーシングとは、インターネット上で企業や個人事業主などが不特定多数の人に業務を依頼できる仕組みです。手軽に業務を依頼できるため、企業でも利用が広がっています。
インボイス制度が始まった後にクラウドソーシングで仕事を依頼する場合、ワーカーがインボイス発行事業者かどうかをチェックする必要が出てきます。
たとえばクラウドソーシング大手の「Croud Works」では、ワーカーがインボイス発行事業者かどうかについて、プロフィール画面等で確認可能になる予定だそうです。
上記以外にもネット上でモノ・サービスを購入できるサイトはたくさんあります。いずれのサイトを利用する場合も、会社の経費としてモノ・サービスを購入するのであれば、出品者がインボイスの発行を明示しているかどうか確認してから利用しましょう。
タクシーを利用する場合
リアルな店舗はお店の方に直接尋ねるなどして、またオンラインショップはインボイス事業者であるマークなどの確認や、利用前に直接確認することでインボイスを発行してくれるかどうかの確認が可能です。
しかし、それが難しいのがタクシーです。たとえ車体に「インボイス対応」と記載したとしても、それを確認している間に通り過ぎてしまいます。
個人タクシーは「全個連(でんでん虫グループ)」と、「日個連(ちょうちんグループ)」という2つの大きな組織があり、全国の個人タクシー事業者の95%を占めています。
この2つの団体の組合員全員がインボイス発行事業者になることを目指しているそうですが、強制力はなく、課税事業者と免税事業者が混在することになりそうです。
組合では免税事業者を選んだ組合員には、タクシーの行灯を変えて見た目を変える予定とのことです。しかし、せっかくつかまえたタクシーの行灯を見て乗車しないというのでは、残念ながら利用者にとっての利便性は下がるといえます。
【参考】免税のままの「個人タクシー」は行灯の形を変更 「インボイス対応」を組合に聞く
個人的に利用するなら気にならないインボイスですが、会社の経費にするには絶対に欲しいインボイス。これからは、経費を使用するときにインボイスがもらえるかどうか確認する、というワンステップが加わることになりそうです。
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高山 弥生 税理士 ベンチャーサポートグループ所属税理士
一般企業に就職後、税理士事務所に転職。「顧客にとって税目はない」をモットーに、専門用語をなるべく使わない、わかりやすいホンネトークが好評。税理士事務所の入所当初、知識不足で苦しんだ自らの経験をもとに、「高山先生の若手スタッフシリーズ」を出版している。インボイス関連では『消費税&インボイスがざっくりわかる本』『インボイスの気になる点がサクッとわかる本』がある。 URL https://vs-group.jp/
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年2月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。