安さ、爆発
子どもの頃初めて触れた「安さ爆発」というコピーが今でも脳にこびりついている。
「安さ」が「爆発」である。何がなんだか分からないがとにかくすごく安いということだけは伝わってくる。もう、すごく安いんだろう。爆発するくらい。
「破格のお値段」とか「出血大サービス」とか、勢いに全てを任せてしまった言葉の先頭にいる感じがする。安さ爆発。
この言葉を実際にやってみて、コピーのおかしみを噛み締めたい。
「安さ」のDIY
さあ、「安さ」を「爆発」させよう。
まず「安さ」だが、発砲スチロールで「安さ」と作ることにした。
「安さ」とは、物の値段が低い様子、その概念である。概念を、爆発が可能な質量のあるものに置き換えようとすると、それはもう記号をそのまま立体にするしかない。例えば、安いからといって駄菓子を爆発させたらそれは「駄菓子爆発」なのだ。「安さ爆発」ではない。
スチロールカッターで切っていく。滑らかに切れる。スイッチで熱のオンオフができるので使いやすい。
「さ」も切る。「さ」のDIY。
できた。
「安さ」ができた。「安さ」が初春の光を受けてフローリングの上に佇んでいる。買い物をする時、お店でご飯を食べる時、僕たちが意識をする概念はこんな感じの物体なのだ。立たせやすかった。
「爆発」はどうする
次は「爆発」である。辞書で調べると「多量のガスと熱を発し、大きな音・火花・破壊作用を伴う現象」とある。イメージはできるが火薬を使うのは避けたい。「安さ爆発」とは破壊ではないのだ。その生々しさは今は要らない。
安さが突き抜けた結果、度を超えている表現として「爆発」にたどり着いたのであって、爆発を忠実に再現する必要はない。マンガ的な「ドカーン!」でいいのだ。
そこで、こんなイメージから、
風船に「安さ」を作って割れるまで膨らませてみることに。
さっき作った安さでは大きすぎたので、小さい安さを作り直した。小さくても安さは安さ。爆発したら目が飛び出るほど安い。
「目が飛び出るほど安い」と思ったが、これは爆発というか「安さ破裂」だ。安さ破裂はあまり安くなさそう。
下から衝撃を加える作戦
イメージを考え直してみる。
こんな感じでどうだろう。
こんな装置を作った。
こんな仕組みです。ラップの芯を下に引っ張って手を離す。すると「安さ」の床下に衝撃が加わり爆発したように跳ね上がるのではないか。
あ、良い……!
安さ爆発の瞬間。安さがコミカルに跳ねて飛び散った。イメージに近い!