腰を大切にするべきだと、20~30歳代のハードワークで学んだ
「月(にくづき)」に「要(かなめ)」と書いて、「腰」。
本当に腰は身体の要で、腰が痛いと何も出来なくなってしまう。
若い頃は「原稿書くのは手だから、腰が痛くったって書けるじゃない」などと思ってたが、30代の終わりに腰痛を体験して腰の大切さを学んだ。
編集者・ライター業は長時間イスに座り続けることが多い。
20~30歳代の20年間は、朝8時に原稿を取りに来る印刷所の方に脅えながら、月のうち何日かは会社で寝ていた。選択肢は、机に突っ伏して寝るか、仰向けに寝るか、イスを並べて寝るか、床に寝るしかなかった。
机に突っ伏して寝ると枕にする腕がしびれるし、仰向けに寝ると背もたれの上端が首に当って首がしびれる。イスを並べて寝るとズレが発生して背骨が痛くなる。床に段ボールを敷いて寝ると、ハウスダストを吸ってアレルギーが出る。
そんな生活をしていると、30代の終わりに腰痛になった。本当に腰が痛いと原稿を書くことなんてできない。それどころか、生活のほとんどが不自由になる。寝ている姿勢にも不自由が発生する。本当に腰が要なのだと知った。
整形外科にも、整体にも通った。基本的には腰の前後の筋力のバランスが狂っているのだという。上体を正しく前後の筋肉が支えられないのだそうだ。「運動をして、正しい姿勢で座りなさい」と言われた。ともあれ、1日1万歩歩く事を自分に義務付けて、なるべく正しい姿勢で座ることを心がけ続けたら、いつの間にか深刻な痛みはなくなった。
在宅ワークは至高のイスで仕事をするチャンス
2020年の春。コロナ禍で在宅勤務になった。在宅勤務でのサボりが問題になったりしているが、筆者はむしろ同僚に「仕事していないんじゃいか?」と思われるのが怖くて、ずっと仕事をし続けた。寝ている時以外は、ずっと座って原稿を書いたような感じだ。すると、当然腰痛が再発した。
仕事はしたいが腰は痛い……ということで、イスを買うことにした。
自宅なら、どんな立派なイスを買っても、誰に文句を言われることもない。また、自宅のデスクで使っていた事務イスも使い始めて20年になっていた。イスは長い間使うし、身体に触れている時間も長い。ここに投資をするのは正しい選択なんじゃないかと思った。
どうせ、買うなら今の自分にジャストフィットなイスを……ということで、知人に聞いて日本橋にあるワークチェアの専門店「WORKAHOLIC」という店に行くことにした。店名からして、私にふさわしい(笑)
この店には、何十というイスが並んでいて、実際に座って試すことができる。
当時は感染症対策ということで、完全予約制だったが、今も人気が高過ぎて完全予約制になっている。コンシェルジュサービスとしてお店の方が相談に乗ってくれるスタイルだったのだが、今はそれも有料に。普通にお店に行っても中には入れず、完全予約制の2時間のコンシェルジュサービス(3300円)のみの案内となっているそうだ。
ただ、イスは安い買い物ではないし、長い間使うものだから、手間ひま時間をかけて実際に座るのがいいに決っている。予約して店頭を訪れると、2時間はイスに座りたい放題なのだが、そのぐらいの手間ひまをかけて選ぶべき商品だと思う。
「高価なイスだからといって、あなたに合うとは限りません」とコンシェルジュの方はおっしゃっていた。これはまさにそうで、どのぐらい、どういう作業のために、どのような姿勢で座りたいかによって、最適なイスは違ってくる。
人類がオフィスワークをするための理想の姿勢を考える
基本的に大切なのはデスクの高さ。そこに高さがそろうように、肘掛けを持ってくる。必然的に腰の高さが決まる。多くの場合、脚が床から離れてしまうと疲れが溜まるので、そこにフットクッションを入れる。
PC仕事をする人は、上体を10度ぐらい後継させて身体を背もたれに軽く預ける感じに。正しく設計されているオフィスチェアだと背中を正しくS字形に支えてくれるランバーサポートがある。座面、背もたれがメッシュだと、汗がこもらず通気性がよく、クッションと違って劣化しにくい。
その上で、座った姿勢にマッチするようにキーボードとディスプレイを持ってこられるようにするのが理想。ディスプレイは姿勢の変化(働きながら、状態によって少しずつ動かすので)に合わせて位置を決められるアームマウントタイプが理想だし、キーボードも別体式のものがいい。
……というコンシェルジュの方のアドバイスを聞きながら、いろんなイスを試してみた。
その中で一番フィットしたのが、関家具が輸入するエルゴヒューマンだった。
キモはランバーサポート
エルゴヒューマンは台湾のニール・ウー氏がデザインしたオフィスチェア。
2005年に登場した新しいブランドだが、コストパフォーマンスの高さから、近年人気を博している。
元々は、ニール・ウー氏が、長時間同じ姿勢で精密な仕事をする歯科技工士向けのイスを設計した時に、その基本的な構造を思いついたのがルーツなのだそうだ。現在では世界50カ国に輸出される人気のイスになっている。
エルゴヒューマンの考え方によると、人にとって一番自然な姿勢は直立した姿勢なのだそうだ。背骨がS字を描いて一番の重量物である頭部を支える。
「座る」という本来的ではない姿勢で、腰のS字を支えるのがランバーサポートだという。背もたれや、ランバーサポート、ヘッドレストはアームで支えられ、それぞれ適度なクッション性を持つ。
筆者が購入したエルゴヒューマン・プロ(オットマン内蔵)は当時10万2400円(税別)だったが、今記事を書きながらAmazonで見てみたら15万1800円(税込)になっていた。円安の影響だとは思うが、ニーズが多いというのもあるのだろう。だいぶ値上がりしている。
ずっとエルゴヒューマン・プロに座る幸せ
かくして、エルゴヒューマン・プロを購入して約2年が経つのだが、大変満足している。
私はとにかく原稿を書くという仕事が好きで、ヒマさえあればエルゴヒューマン・プロに座って原稿を書いているのだが、一向に疲れない。
自宅の書斎(と名付けた小部屋)で仕事をしていて、出社する必要もないので運動不足になる。朝3km弱、夜4~5km、合わせて1万歩以上の散歩を自分に義務付けているのだが、取材に出掛けるのでなければ、それ以外のほとんどの時間をこのエルゴヒューマン・プロに座って過ごしている。
たぶん、毎日12時間以上は座っていて、文字を書き続けているが、実に快適だ。
身体に触れる道具、使用時間の長い道具は、金に糸目をつけるべきではないというのが持論だが、ワークチェアはまさにその最右翼だといえるだろう。
オットマンは使えるか?
若い頃のトラウマなのか、「イスの上で寝られる」と思ってオットマン内蔵を購入した。
たしかにフルリクライニングさせて、オットマンを出して休憩するのは至福の時間という感じがする。
しかし、隣の部屋に行けばソファもあるし、畳の部屋で寝ころぶこともできる在宅ワーカーとしては必要のないものだった。
ということで、今ではごくまれに、家族がリビングで楽しんでいて、仕事のテンションを保ったまま身体を休憩させたい時に、ひそかにオットマンを出して休憩するに留まっている。
INTERNET Watch編集部員やライター陣が、実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズをリレー形式で紹介していく「テレワークグッズ・ミニレビュー」。もし今テレワークに困りごとを抱えているなら、解決するグッズが見つかるかも!? バックナンバーもぜひお楽しみください。