Googleのサンダー・ピチャイCEOは1月20日、社員へのメールとブログ記事で、約1万2000人の人員削減を行うことを発表しました。この人員削減はGoogle全社員の約6%にあたり、割合ではAmazonやマイクロソフトとほぼ同じです。
ピチャイCEOはブログで、今回の削減は「焦点を絞り、コストベースを再構築し、人材と資本を最優先事項に振り向ける」ためだとし、人工知能(AI)が今後の重要な分野になると述べました。なぜ、GoogleがここまでAIにこだわるのか、その理由についてテック系メディア「The Verge」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:THe Verge(1) ,(2) ,The New York Times ,Google
対話型AI「ChatGPT」の台頭に焦るGoogle
Googleは2014年のAI研究機関「DeepMind」買収などの投資により、AI分野では早くから大きなリードを築いてきました。しかしその一方、その研究成果は一部が明かされるのみで、大部分は一般ユーザーに公開されていません。
そんなGoogleが危機感を抱かせたのが、OpenAIが一般公開したチャットAI「ChatGPT」です。米メディア「The New York Times」の報道によると、ChatGPTのリリースにあたり、Googleの経営陣は「コード・レッド」を宣言したとのこと。これは、Googleにとって「火災報知器を鳴らすようなもの」だと指摘しています。
GoogleがChatGPTの登場に焦る理由は、同社のビジネスモデルにあります。Googleのビジネスの中心は20年以上「検索エンジン」であり、収入源はそれに付随した広告配信です。しかし、高度なチャットAIは「ネット検索」そのものの代替手段となる可能性があるものです。
コード・レッドは「ビジネスを根底から覆しかねない巨大な技術革新の到来」に、同社が近づいていることを示すもので、これは同社の収益の「8割以上」を占める広告ビジネスの終焉を示します。Googleは早くから高度なチャットAI「LaMDA」を開発してきましたが、「The New York Times」によれば、収益を得るのが難しいという理由でいまだに一般公開には至っていません。
Googleはこの新技術をオンライン検索の代わりとして展開することには消極的かもしれない。昨年、同社の収益の80%以上を占めたデジタル広告の配信には向いていないからだ。
まだまだChatGPTには課題が多く見られますが、ユーザーにチャットAIの時代を予感させるには十分な内容です。さらにOpenAIは、Googleのライバルであるマイクロソフトとパートナーシップを結び、検索やOfficeソフトといったマイクロソフト製品に同社のAI技術を統合することを予定しています。
テック系メディア「The Verge」によれば、対するGoogleは「今年中にチャットボット機能を搭載した検索エンジンのバージョンをデモする」計画があるとのこと。さらには、人工知能を搭載した20以上のプロジェクトを公開するとしています。
同メディアによれば、Googleはチャットボット検索のデモでは、「事実を正しく伝え、安全性を確保し、誤った情報を取り除く」ことを優先し、AIが間違った情報を明確に応答してしまう問題に取り組んでいるとのこと。一方で、AIが正しく運用されているかどうかをチェックする審査プロセスを加速させる方法にも取り組んでいるそうです。
また、研究・AI部門を統括するGoogle幹部が発表した報告書では、「画像の作成と編集」を行う画像生成スタジオ、製品の試作品をテストするためのアプリ、「MakerSuite」というブラウザウィンドウ内から、他の企業がAI試作品を作るために使えるツール群などに言及した新製品の存在が明かされています。他にも「PaLM-Coder 2」というコード生成ツールや「Colab + Android Studio」というスマートフォン向けアプリの構築を支援するツールも開発中だそうです。
AIの進化の速度は早く、精度の問題はあれど、チャットAIはすでに「人を助ける知能」として実用性のある粋に達しています。収益の8割以上を占める広告ビジネスがなくなれば、いくら強大なGoogleでもひとたまりもありません。これまでAIのリリースに慎重だったGoogleですが、ネット検索時代の終焉が迫っているという警鐘が鳴らされる中、同社はAI分野でも覇権を取ることに必死になっているようです。