青信号の人と、それを真似たい人
歩行者用の青信号に描かれている、歩く人のサイン。
すっかり見慣れてなんの違和感もないが、よく考えると体中を真っ青に光らせながら横断歩道を渡る人というのは実際には見たことがない。
最近の信号はLEDの粒でできていたりするので、たとえば体じゅうにLEDをたくさんつけて歩けば、等身大のあの人が再現できたりするのではないか。
いままで信号機に閉じ込められていた彼も、喜んでくれるに違いない。
※2007年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
これが青信号の人だ
上の写真は近所の信号だが、こんなふうに黒地に青く光る信号機が最近ふえているらしい。
おそらくは消費電力を抑えるために、光の粒はLEDでできているように見える。ということは、LEDさえあれば「歩く人」とまったく同じようにして光ることができるはずだ。
信号機の「歩く人」と、実際の歩く人(自分)。夢のコラボレーションをなんとしても実現させたい。
クリスマス用のイルミネーションを買ってきた
さっそく、クリスマスにもみの木などに飾るためのイルミネーション用のLEDを秋葉原で買ってきた。
LEDが100個リードでつながったもので、長さは10m。ためしに体にかるく巻いてみたが、長さは十分のようだった。あとはこれをきちんと巻きつけていけば、夢が完成するにちがいない。
体に巻きつける
最初はリードを髪や衣服に直接固定しようとしたのだけど、すぐにはがれてしまってうまくいかないようだった。薄手のレインコートを買ってきて、ガムテープと洗濯ばさみで固定していく。
しかしこれはなんだろう。ぼくが想定したようなファンタジーからはどんどん遠ざかっていくのが分かる。手伝ってくれている知人も言葉少なだ。
ただ、青信号の人は光ってこそ真価が発揮されるのだと思う。まだ途中ではあるけれど、いよいよLEDの電源を入れてみることにしよう。
どうだろう。青信号の人に近づいているだろうか。
うん、分かる。自分でもわかっている。これは青信号の人ではなくて、目覚める前のサイボーグかなにかだ。映画の前半ぐらいにちらっと出てきて、後半では完全体として主人公とたたかうのだ。
それでも、最後までやってみなければ分からない。全身に巻きつけたとき、そこには憧れの「歩く人」が現れるかもしれない。そう信じて、汗だくになるのもかまわず作業をつづけていった。
完成
10mもあるとはいえ、体中に巻くにはすこし短いようだった。体の前面にだけ貼っていくように作戦を変更し、30分ほどしてついにすべてを巻きつけることができた。
青信号の人の姿を思い出し、ポーズを真似てみる。ここまでの間に彼の気持ちがだいぶ分かってきたような気もする。
さあ、いまこそ電源を入れてみよう。あの青信号の人にようやく会うことができるだろうか?
そこに現れたのは青信号の人ではなかった。途中の予感は的中し、サイボーグは今まさに覚醒したようだった。
しかしまだ、まだ分からない。外に出て本物の彼の下で歩いたとき、そこには不思議な調和が広がることがあるかもしれない。
実際に外に出てみようじゃないか。
電源装置を持っていく
外に行くにあたって問題なのは、電源をどうするかだ。このイルミネーションを光らせるには家庭用の100V交流電源がいる。
考えた末、パソコン用に使う無停電電源装置(UPS)を使うことにした。パソコンにつながる電源が切れたときに緊急用に電気を流してくれるUPSだが、夜中にイルミネーションを光らすために使ったっていいはずだ。
本物の信号機の下でためす
終電ちょっと前、駅からやや離れた信号には、それでもまだ人通りがあるようだった。
目下の懸念点は、手元のUPSが数秒ごとに「ピーッ」と鳴り、通りに小さくひびくことだ。自分がコンセントにささっていないぞ、という警告音なのだが、当たり前だ、ここは外だ。
なお、向こうには交番がある。何事もありませんようにと、ぼくは心の中で念じた。
赤信号から青へ、そして渡りきる
そしていよいよ夢のコラボレーションのときは来たのだった。
改めてこの写真を見て、「青信号はじつは緑」という古来からのトラップにまんまとはまっていたことに気づく。でも、まあいいじゃないかとも思う。それ以前にそもそも何かが大きく間違っているような気もするからだ。
もう一歩だったけど、永遠に満足です
ほんとうは、青信号の人のように全身をこうこうと光らせたかった。そして色味もちゃんと緑色にして、ついでに赤色LEDも巻きつけて赤信号の人も再現したかった。今回はそのどれもが中途半端になってしまったのが大変残念だ。
しかし、収穫もある。室内の写真を見る限り、ぼくは青信号の人にはなれなかったものの、別の何かにはなれたようだ。今後はそちらの可能性をさぐっていきたい。
また、今回ほど外での撮影を心配したことも珍しかった。体を青白く発光させながら、手元には妙な機械がピーピー鳴っている男。完全にアウトである。青信号の人になりたい件に関しては今回でじゅうぶん満足しました。