米航空宇宙局(NASA)は2022年、次世代の大型月探査ロケットを発射台から打ち上げるのに苦労した。フロリダの悪天候と闘わざるをえなかったからだ。大雨や激しい雷を伴うハリケーンが接近し、リハーサルのために発射台で待機していたロケットを危険にさらした。ハリケーンの最中、発射エリアは4度も落雷に見舞われたという。
提供:TRUMPF/Martin Stollberg
幸いなことに、NASAは避雷針のおかげで発射台を守ることができた。避雷針は金属でできた巨大な構造物で、雷を引き寄せてその電流を安全に地面へと逃してくれる。避雷針の基本的な設計や考え方は、18世紀に発明された頃からそれほど変わっていない。だが2021年、科学者チームはスイス北東部で今までと異なるタイプの避雷針を実験した。
英国の学術誌Nature Photonicsが現地時間1月16日に掲載した論文によれば、科学者チームは絵画のように美しい標高2502mのゼンティス山の山頂で、レーザービームを使って雷を誘導する実験を行ったという。
提供:Scientify – UNIGE
2021年夏、この科学者チームは自動車ほどの大きさの高速パルスレーザーを、ゼンティス山にある通信塔の隣に設置した。そして、この年の7~9月にかけて、1秒間に約1000回パルスを発生させるこのピコ秒レーザーを、合計6時間以上にわたる雷雨の中で作動させた。観測期間中、この通信塔は少なくとも16回落雷に見舞われたが、そのうちの4回はレーザーの作動中に発生したという(そう、雷は2度落ちるものだし、それ以上落ちることもある)。
特に、7月24日に発生した雷は詳細に記録された。空が晴れていたおかげで、落雷の様子がハイスピードカメラではっきり撮影されたのだ。その映像には、雷がおよそ50mの距離をレーザー光線に沿って落ちていく様子が記録されていた。また、チームはこの施設に設置されていたVHF干渉計で、周囲の電磁波の活動を測定したほか、レーザーで誘導された数回の雷をX線で測定することにも成功した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。