「人工知能」と称してアーティストやその他のクリエイターの権利を侵害する製品を作りだしたとして、Stability AI、Midjourney、DeviantArtの3社に対して集団訴訟が提起されました。
Stable Diffusion litigation · Joseph Saveri Law Firm & Matthew Butterick
https://stablediffusionlitigation.com/
AI Art Generators – Copyright Litigation
https://www.saverilawfirm.com/ai-art-generators-copyright-litigation
Class Action Filed Against Stability AI, Midjourney, and DeviantArt for DMCA Violations, Right of Publicity Violations, Unlawful Competition, Breach of TOS
https://www.prnewswire.com/news-releases/class-action-filed-against-stability-ai-midjourney-and-deviantart-for-dmca-violations-right-of-publicity-violations-unlawful-competition-breach-of-tos-301721869.html
大手集団訴訟事務所であるJoseph Saveri Law Firmのマシュー・バターリック氏が主導して提起された今回の訴訟では、画像生成AIが著作権で保護された数十億の画像で訓練され、アーティストからの補償や同意なしに画像がダウンロードされ使用されているとして、Stability AIおよびMidjourney、DeviantArtに損害賠償と今後の被害防止のための差し止めが求められています。
Stable Diffusionは、Stability AIという会社によってリリースされた画像生成AIです。さまざまな画像を「プロンプト」と呼ばれる文章1つで生成できるという便利さを持つ反面、AIの学習時に使われるデータセットに著作権で保護された画像が使われているという問題もあります。
Midjourneyも同じく画像生成AIであり、文章から画像を生成するサービスを提供しています。
DeviantArtは2000年に設立されたアーティストコミュニティです。ここには3億5000万点を超える芸術作品が人間のアーティストにより投稿されていますが、投稿された作品がAI用データセットの「LAION-5B」にコピーされ、そのままStable Diffusionの学習に使われていることが指摘されています。このことに関し、バターリック弁護士は「DeviantArtはコミュニティをAIから守らず、あまつさえStable Diffusionをベースにした有料アプリ『DreamUp』をリリースしたのです。その結果、AIが生成したアートがDeviantArtに殺到して人間のアーティストを締め出してしまいました。2022年11月のライブQ&Aセッションでこうした作戦の倫理性と合法性について問われたとき、CEO含むDeviantArt経営陣のメンバーは、なぜ自分たちが利用規約とプライバシーポリシーに意図的に違反しながら、Stable Diffusionを受け入れてアーティストコミュニティを裏切るのかを説明できなかったのです」と指摘し、DeviantArtから許可を得ずに収集された画像が学習に使われている状態を放置したこと、自社のアートコミュニティの権利を違法に侵害するDreamUpを提供したことを問題視しました。
なお、DeviantArtはDreamUpリリースの際に「アーティストがAIの開発者に対して『学習に使用されたくない意思』を伝える仕組みを整備する」と発表しているため、これについての取り組みも裁判で争点になるとみられます。
以上3社に対し、バターリック弁護士は直接的な著作権侵害、偽造に関する間接的な著作権侵害、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反、パブリシティ権の侵害、DeviantArtの利用規約に関する契約違反、およびカリフォルニア州の不正競争防止法の各種違反を申し立てています。
バターリック弁護士は「Stable Diffusionや類似の製品が現在のように運用され続けることが許されるなら、これらAIは作品のアーティストそのものに取って代わることになります。AI画像商品は単にアーティストの権利を侵害するだけでなく、『アーティスト』という職業を消滅させることになるのです。本訴訟は不正行為の救済を得るだけでなく、アーティスト消滅という結果を防ぎ、これらの製品が大量の知的財産を使用する他の新技術と同じルールに従うことを目的としています。音楽ストリーミングが法律の範囲内で実現できるのであれば、AI製品も実現できるはずです」と述べました。
なお、バターリック弁護士はAIを用いたコード補完サービス「GitHub Copilot」に関する集団訴訟も提起しています。
ついにGitHubのコードで学習したAI「GitHub Copilot」が集団訴訟に直面 – GIGAZINE
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