住めば都とはいうもののバンクーバーに31年間住んで「もろ手を挙げてバンクーバー万歳!」とは一つも思っていません。どこに住んでも長所短所はあるものの短所は見ないようにして長所だけを振りかざして「バンクーバー、いいよ!」になりがちです。ということで今日は勇気を出してバンクーバー批判をしてみましょう。
死ぬ覚悟のバンクーバー医療
先日、アメリカのユーチューバーがアメリカの医療制度では金がかかり過ぎて病気にもなれない、と嘆いていました。カナダの医療は真逆の無料ですが、カナダで病気になったら死ぬ覚悟、とアメリカ同様の状況にあります。何故か、と言えば公的医療は無料故に検査項目がポイント制なので出来る範囲が厳しく設定されていて見落としのリスクがあること、専門医にかかるのに数か月から場合によっては年単位で待たねばならないこと、医療ミスと言いたくなるヘマは頻繁、さらに、BC州は金があっても公的医療以外に原則選択肢がないのであります。我々の共通語はもちろん「病気になったら日本に戻ろう」です。
不動産がないと介護も受けられないぞ
カナダには公的な介護保険は存在しません。必要になったら民間の介護会社に依頼するしかありません。サービス料は年々上昇し、今では時間当たり40-50㌦(=4-5000円)も珍しくありません。サービスを受ける方の多くは初めは「週2回、1回当たり2時間」ぐらいですが、ほとんどのケースでは月日がたてば回数も時間も増えていくのです。止める人はいません。結果として月に日本円で数十万円払う人もいるし、重度の介護で毎日12時間とか24時間になると月に100万円は優に超えてきます。私が建築中のグループホームは世間相場よりは安くしますが、3食付きで入居費は月70万円程度になるでしょう。これを払うには不動産を売った資金がどうしても必要なのです。
業者はいい加減、請求額もぼったくり
修理業者は探すのに一苦労、ようやく見つけたと思ったら酷い仕事でとんでもない請求額というのはよくある話。特に日本人の方からその声が強いのは日本的品質の期待度の高さに対して満足度が30%しかないからです。私が550戸も作った住宅で一番苦手な買い手は日本人でした。なぜなら「日本の会社が作ったんでしょ」と思いっきりプレッシャーをかけた挙句、ダメ出しリストが数ページです。カナダで渋谷駅の工事のような50数時間に数千人の延べ作業員を投じるような奇跡はあり得ません。
スーパーのレジで駄話を禁じよ!
カナダ人は気長なのかもしれません。私のように短気の塊にとってスーパーや酒屋のレジは極めて忍耐力がいるのです。ようやく次が自分の番だと思えば前の客がとろい、店員とくだらない話をする、支払いがうまくできない…でOh My God!と思った経験は数知れず。最近、スーパーはセルフレジが出来たので「これなら駄話はないだろう」と思いきや、使い方がわからない、作業はひたすらゆっくりで私のイライラは募るばかり。
気をつけよう、雨の日の夜の交差点
バンクーバーのこの時期は雨季。そして夕方5時には既に真っ暗。バンクーバーの人の冬の服装はひたすら黒系統です。これは車の運転手からすると相当見にくいのです。特に問題は左折する際の横断歩道を渡る人で、車のピラーで死角になり、見にくいのです。轢かれそうになったことは10回では済まないでしょう。そこで工夫したのが歩行する場合、左折してくる車の運転手を見る癖。その人が私を認識し、スピードを緩めるのを見届けるようにしたら状況改善しました。自分の身は自分で守れ、です。
ペナルティだらけの公的支払い
固定資産税の支払いはバンクーバーは年2回。個人住宅の場合はその用途と居住者のステータスを毎年、インターネット上で毎年、宣誓しないと最も高い「空き家レート」を課されます。その上、支払いが一日でも遅れたらペナルティで支払額の10%程度を取られます。これは金利が10%ではなくて遅延した罰則額が10%なのです。税務当局の場合はもっと大変。カナダは全員個人で確定申告なのですが申告や納税期限厳守だけではありません。私は所得税の予納が年4回あり、これを怠ると同様のとてつもない罰金が来ます。「こんなの払えるか、税務当局と戦うぞ」とクレームを所定フォームで送ると「12-15カ月待ちです」と出ます。これでは戦意もなにもあったものではありません。
カナダに住むのはひたすら忍耐強くあること、そして性悪説で生きることです。世の中、全て間違っているという前提で疑ってかかります。サービスの内容は人によって、あるいは相手との接し方で変わります。銀行の手数料ですら支店によって課金されたり、無料だったりします。同じチェーン店でもこっちの店は良くて、あっちの店ではダメだったというのはざらです。
こんな逸話はたくさんあるので近いうちに「ひろのバトル大合戦」をお送りしたいと思います。これもきっと面白いですよ。現実の世界とは思えない数々です。
ある意味、カナダに住むということはドキドキしながら「今日は何が起きるのだろう」と思い続ける勇気と広い心が必要だともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月15日の記事より転載させていただきました。