「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
現在筆者は、とある事情から2022年6月より東京の自宅を離れ、香川県の実家で生活している。それ以降は主に実家で仕事をしているが、それにともなって問題となったのがネット環境だった。最終的に選択したのは、NTTドコモの「home 5G HR01」だったが、その経緯を紹介しようと思う。
楽天モバイルのモバイルルーターでは厳しい部分が
もともと実家では、ネット環境としてYahoo! BBのADSLサービスを長年利用していた。筆者も実家に帰省したときに使っていたものの、その頻度は年に1~2度程度。また、実家で生活している両親はPCやスマートフォンを使っておらず、タブレットでネットにアクセスする程度で、1カ月のデータ利用量が1GBを超えることはほぼなかった。
そこで、通信コストを見直すために、5年ほど前にADSLを解約し、筆者の手持ちで使っていなかったモバイルWi-Fiルーターに、UQモバイルの「データ高速プラン」を契約したSIMを付けて利用してもらっていた。
UQモバイルのデータ高速プランは、月額基本料金が1,078円で、データ利用量3GBまでは最大225Mbpsの速度が出る。3GBを超えると200kbpsでデータ通信が利用できるというプランだった。実際に実家に設置して使ってみると、たまにYouTubeをたくさん利用した月で3GBを超えることもあったが、やはり多くの月で1GBを超えることはなかった。
さらに、楽天モバイルが登場してからは、データ利用量が1GB以下の場合に月額料金が0円になるということと、同時にモバイルルーター「WiFi Pocket 2B」も実質無料で入手できるということで、そちらを購入し、UQモバイルを利用したモバイルルーターと入れ替えて利用していた。
それ以降も、たまにデータ利用量が1GBを超えることはあったものの、多くの月が1GB以下で推移したこともあって、実家のデータ通信コストはかなり削減できていた。
ただ、筆者が実家で生活するようになった6月以降は、筆者が仕事などでデータ通信を多く利用するようになり、データ通信量はほぼ数日で20GBを超えるようになった。それでも、楽天モバイルの料金プランは、2022年7月1日より導入された新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」も含め、データ通信量が20GB以上でも3,278円で無制限に利用できるため、料金を気にすることなくデータ通信を利用できていた。
データ通信速度は、受信が20~30Mbps程度、送信が40Mbps程度と、ADSLや光回線に比べると遅いものの、リモート会議などにもほぼ支障なく利用でき、そこそこ満足できるものであった。
ただ、実家で仕事を進めるうえでWiFi Pocket 2Bでは問題となる部分がいくつか見えてきた。
1つが、そのままでは有線LANが利用できないという点だ。筆者の仕事では、デスクトップPCを使う場面が頻繁にあるため、仕事に支障をきたす場面も出てき始めた。
もう1つが、ルーターへの接続台数だ。WiFi Pocket 2BのWi-Fi最大接続台数は16台。筆者は普段から、ノートPCを2台、Chromebook、スマートフォンを4台と計7台ほどの機器をWi-Fiに接続して利用している。そのうえ、レビューなどで利用するノートPCやタブレット、スマートフォンなどがあると、総接続台数が16台を簡単に超えてしまう。そこで、この点は早急に改善する必要があったわけだ。
このほかに、WiFi Pocket 2Bの無線LANは、Wi-Fi 4(IEEE 802.11b/g/n)の2.4GHz帯域しかサポートしていないという点も、心許ないものとなっていた。
というわけで、7月頃から実家の通信環境を刷新すべく調査を開始したのだった。
コスト的に有利なNTTドコモの「home 5G」を選択
まず最初に検討したのが、楽天モバイルのSIMをそのまま利用しつつ、ルーターを5G対応のものに変更するというものだった。しかし、残念ながら実家は楽天モバイルの5Gエリアに入っておらず、早々に断念。
次に検討したのが、光回線の導入だ。おそらく、速度はもちろん、使い方を考えても、光回線の導入がベストだったとは思う。コスト的にも、光コラボレーションモデルを活用すれば、楽天モバイル利用時よりはやや高くなるものの、大幅なコスト上昇にはならないことも確認していた。
ただ、検討していた当時は、実家での生活が長期になるとは想定していなかったことや、楽天モバイルのようにデータ通信量が少なければ基本料金が安くなるということもないため、筆者がいなくなったあとは無駄にコストがかかることになる、と考えて光回線の導入には踏み切れなかった。
ということで白羽の矢が立ったのが、携帯通信事業者が提供している5G対応のホームルーターだ。
NTTドコモ、au、ソフトバンク、UQ WiMAXなど、通信事業者の多くが5G対応のホームルーターを提供している。また実家は、NTTドコモ、au、ソフトバンクともに5Gエリア内であることを確認済みだ。加えて、各社のホームルーターはいずれも無線LANがWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応し、有線LANポートも備えているため、デスクトップPCなどの接続も問題ない。同時接続台数も、少ないもので32台、多いものでは128台となっており、十分な数字だ。
そのため、当初はどれを導入するかかなり迷ったのも事実だ。しかし、最終的にはNTTドコモの「home 5G HR01」(以下、HR01)を選択することにした。
HR01に決めた理由はいくつかある。まず1つが、手持ちのドコモSIMを装着したスマートフォンで受信300Mbps以上の速度が確認できていた、というものだ。筆者が利用するSIMは、NTTドコモ、楽天モバイル、LINEMOの3キャリアで、実家で5Gの速度を確認できるのはNTTドコモとソフトバンクのみだった。そして、LINEMOでも速度を計測したところ、NTTドコモに比べてかなり速度が遅かったのだ。
auについては事前に速度を計測できていなかったが、NTTドコモでは受信で300Mbps以上の速度が得られると分かっていたのはかなり大きい。
同時接続台数は64台。これも十分な数字で、筆者が仕事で多数の機器を接続して利用する場合でも足りなくなることはない。
そして、最も大きな理由が導入コストだった。各社のホームルーターは、いずれも購入時の割引施策によって比較的安価に購入できるようになっているが、ちょうど筆者が導入しようと考えていた7月後半から8月にかけて、とある大手家電量販店でHR01を一括0円で入手できるキャンペーンが実施されていた。つまり、HR01購入時にかかるのは、事務手数料の3,300円のみだったのだ。
HR01をドコモオンラインショップで購入するのであれば、事務手数料はかからない。しかし当時ドコモオンラインショップではHR01向けの割引施策は行なわれておらず、機種代金の3万9,600円を負担する必要があった。実際には、月々サポートによって36カ月間利用料金から最大1,100円が割り引かれるため、機種代金は実質無料になる。
ただ、家電量販店で一括0円で購入した場合にも、同じ内容の月々サポートが受けられる。つまり、3,300円の事務手数料を負担しても、家電量販店で購入した方が圧倒的にお得だったわけだ。
ちなみに、HR01の月額利用料は、「home 5Gプラン」の4,950円。ここから36カ月間は1,100円が割り引かれるため、3,850円で利用できることになる。
同時に、筆者はこれまでNTTドコモの光コラボレーションモデルを利用していなかったため、割引施策の「ドコモ光セット割」が適用外だった。しかし、HR01を契約すると、別途用意されている割引施策「home 5G セット割」が適用されることになる。筆者は家族の分も含めてNTTドコモを4回線(5Gギガホプレミアが1回線、5Gギガライトが2回線、データプラスが1回線)利用しており、home 5G セット割によって携帯回線の利用料金から最低でも毎月1,100円の割引が追加で得られることになる。
つまり、HR01の実質の利用料金は2,750円以下になる計算だ。当初の事務手数料3,300円を加えても、最低でも36カ月間は楽天モバイルの3,278円より安くなるため、事務手数料の負担もすぐに回収できる。
このほかにも、光回線などのような工事が要らず、契約後すぐに利用可能で、不要になった場合でも違約金なしでいつでも解約でき、回線工事費用もかからない。そのため、筆者がまた引っ越してもhome 5Gを解約して楽天モバイルに戻せばいい、と考えた。
以上の理由から、NTTドコモのHR01を選択したのだった。
ちなみに、HR01はホームルーターという性質上、持ち運んでの利用はできないようになっている。契約時に利用する住所を登録する必要があり、その住所以外の場所では利用できないのだ。今回は実家に設置して利用するため特に問題はないが、一般的なモバイルルーターとは使い方が大きく変わるため、購入時には注意が必要だろう。
ルーターとしての機能はエントリーモデルレベル
HR01は2021年8月に登場した製品なので、すでに僚誌ケータイWatchなどで紹介記事やレビュー記事が多く掲載済みではあるが、あらためて機能を簡単に紹介しておく。
【表1】home 5G HR01の主な仕様 | |
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WAN側モバイル通信 | 5G Sub-6、4G |
対応バンド | 5G:n78/n79 4G:Band 1/3/19/21/28/42 |
データ通信速度 | 5G:受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbps 4G:受信最大1.7Gbps、送信最大131.3Mbps |
無線LAN | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、1ストリーム(1×1)、ビームフォーミング対応 |
無線LAN速度 | 5GHz帯域:最大1,201Mbps(Wi-Fi 6) 2.4GHz帯域:最大573Mbps(Wi-Fi 6) |
無線LANセキュリティ | WPA2/WPA3 |
無線LAN同時接続台数 | 64台 |
有線LAN | 1000BASE-TX 1ポート |
サイズ/重量 | 95×95×170mm/約720g |
まず、WAN部分については、NTTドコモの4G/5Gサービスに対応。なお、5G通信で対応するのはSub-6のみで、ミリ波は非対応。
通信速度は、5Gが受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbps。4Gが受信最大1.7Gbps、送信最大131.3Mbps。筆者の実家は5Gエリア内なので、十分な速度が期待できる。
続いてルーター部分。無線LANは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠となる。ただし、アンテナが1本の1ストリーム(1×1)対応にとどまるため、通信速度は5GHz帯域が最大1,201Mbps、2.4GHz帯域が最大573Mbpsとなる。
無線LANは、5GHz帯域と2.4GHz帯域を同じSSIDで利用するだけでなく、複数のSSIDを登録して利用する「マルチSSID」に対応しているため、5GHz帯域と2.4GHz帯域それぞれに個別のSSIDを登録して利用することも可能。無線LANセキュリティはWPA3やPMF(Protected Management Frames)をサポートしており、大きな不安はない。
有線LANは、1000BASE-TX対応のGigabit Ethernetポートを1ポート用意。もちろん複数ポート用意されていた方が複数の機器を接続できるためありがたいが、そこはハブを利用することで対応できるため、特に気にはならない。
このほかのルーター機能としては、MACアドレスで接続端末を制限するMACアドレスフィルタリングや、ファイアウォール、IPアドレスフィルタリングなどの基本的なものを用意。ただ、全体的に機能は豊富というわけではなく、どちらかというとエントリークラスの無線LANルーターとほぼ同等と考えていい。個人的には機能面の弱さにやや不満はあるものの、全体的にはまずまず安心して簡単に利用できる製品と言っていいだろう。
サイズは95×95×170mm、重量は約720g。比較的軽量コンパクトなボディなので、置き場所には困らないはずだ。正面上部には電源や動作状況などを示すLEDインジケータが用意され、背面には電源コネクタと有線LANポート、WPSボタン、再起動ボタンを配置される。
そして底面にはNano SIMカードスロットとリセットボタン、そしてメンテナンス用と思われるUSB Type-Cポートを備える。また、底面には初期設定のSSIDとパスワード、スマートフォンなどを無線LANに接続するためのQRコードなども記載している。
LEDインジケータは、左からWAN側の接続状況、電波強度、ステータスの3つを用意。WAN側の接続状況は、青で点灯すると5Gで接続、緑で点灯すると4Gで接続していることを示す。このほか、動作に異常がある場合には青や赤で点滅したり赤で点灯する。
電波強度は、青が強、黄が中、赤が弱の順で電波の強さを示す。
ステータスについては、正常に動作している場合は青で点灯する。また、WPSでの接続待機中は青で点滅。そのほか、何らかの異常やソフトウェアの更新などがある場合には、黄色や赤で点灯または点滅するようになっている。なお、本体に電源ボタンはなく、ACアダプタを接続すれば即電源が入るようになっている。
利用時には、底面のNano SIMカードスロットに、契約時に渡されたNano SIMカードを装着し、ACアダプタを接続するだけで、即座にデータ通信が可能となる。
やはり設置場所は重要
無事HR01を8月上旬に入手し、実家で利用しはじめた。ただ、モバイル回線を利用したデータ通信サービスということで、懸念されるのが設置場所によるデータ通信速度の違いだ。スマートフォンでも、建物の窓際付近と内部とでデータ通信速度が大きく上下することがあるが、それはHR01についても同様。実際に多くのHR01利用者が設置場所で速度が大きく変わることを報告している。そこでまず最初に行なったのが、どこに設置するのか速度をチェックしながら決めることだった。
まず、実家内で自分が使っている部屋の中央付近で速度をチェックしてみたところ、受信速度は136Mbps前後だった。
それに対して窓際に設置したところ、受信速度が468Mbps前後に上昇。双方の距離は3mほどしか違いがない。場所によって速度に違いが出るとは想定していたが、ここまで大きな違いが出るとは思っていなかったので、少々驚かされた。それと同時に、HR01のような5G対応ホームルーターを利用する場合には、設置場所の見極めが重要と言える。
というわけで、HR01は窓際に設置して利用することにした。
概ね満足しつつも、LANの仕様には強い不満が
HR01を使い始めて4カ月ほど経過している。その間、WANの接続が4Gに落ちているということが数回あったが、それ以外には大きなトラブルなく利用できている。接続が4Gに落ちた場合には、本体を再起動すれば5G接続に戻るため、設定で用意されている定期的に本体を再起動する機能を活用し、1週間に1度自動的に再起動するように設定して利用している。
接続機器は、ノートPCやスマートフォン、タブレットなど常時9台ほどの機器を無線LANに接続するとともに、NASやデスクトップPCはハブを介して有線LANに接続している。常時12台前後の機器を接続するだけでなく、レビュー作業を行なう場合には15~18台ほど接続することもあるため、楽天モバイルのモバイルルーターではさばききれない数に達する。もちろん、HR01は最大64台の機器を接続できるため、すべての機器を問題なく利用できている。
データ通信速度は、受信は安定して300~400Mbpsの速度が得られているのに対し、送信は利用開始当初で20Mbps前後、11月中旬以降は30~40Mbps前後で推移している。HR01のWAN側通信速度は、理論値ではあるが受信最大4.2Gbps、送信最大218Mbpsということなので、筆者の利用環境での実効速度は双方とも理論値の10分の1程度となっている。おそらく設置場所の電波状況によるものと思うが、まあこんなものか、という印象だ。
ただ、5Gということを考えると少々物足りないのは事実だ。特に受信速度はもう少し速いと期待していたので、いま一歩と言わざるを得ない。何より、4G接続の楽天モバイルでも送信速度が40Mbps前後だったことを考えると、5G接続なのに4Gと同等か遅い送信速度しか発揮できないというのは残念だ。
また、製品の仕様についてもいくつか不満がある。その1つは、ルーターとしての機能面が弱い点だ。これについては、製品の性質上しかたのない部分もあるかもしれないため、我慢できないものではない。しかし、もう1つの不満はかなり大きなものとなっている。それはLANの仕様だ。
HR01では、WAN側の5Gのデータ通信速度として理論値となる受信最大4.2Gbpsを大きくアピールしておきながら、LAN側は最大1,201Mbpsの無線LANと1Gbpsの有線LANしか用意していない。つまり、無線LANと有線LANを同時に利用したとしてもWAN側の最大受信速度を活かせる仕様ではないのだ。製品ページには、脚注で「Wi-Fi通信時の最大伝送速度は1201Mbpsとなります」と書かれてはいる。実際にそういう意図はないにしても、消費者を欺いていると言われてもしかたがないと感じる。
データ通信速度の理論値と実効速度に大きな開きがあるのは常だ。特にモバイル通信の世界ではその傾向が強く、理論値に近い速度が得られることはほとんどない、ということは理解している。とはいえ、WAN側で理論値の速度をアピールするのであれば、実際には理論値の速度が得られることがなく実利用でまったく不都合がないとしても、LAN側はWAN側の理論値の速度を活かせる仕様であるべきだ。そういった意味でHR01は、非常に中途半端な製品と言わざるを得ない。
それでも、これら不満はあるものの、HR01を利用し始めて以降、大きなデータをクラウドにアップロードするのに時間がかかるということ以外には特に不都合なく利用できている。近年増えているWeb会議でも、映像が止まるといったトラブルはまったく発生しておらず、導入コストやランニングコストなどもあわせて、概ね満足してHR01を利用できている。そのため、HR01の選択は間違っていなかったと思っている。
なおNTTドコモは、HR01の後継モデルとなる「HR02」を2022年10月に発表。HR02では、5Gのアンテナを4本搭載して受信感度を高めるとともに、無線LANが4ストリーム(4×4)対応で最大通信速度が4,804Mbpsに、有線LANが最大2.5Gbpsのデータ通信が行なえる2.5GBASE-Tにそれぞれ仕様を強化している。
5G部分の速度は理論値で受信最大4.2Gbps、送信最大218MbpsとHR01と同じ仕様だが、LAN側の仕様が大きく強化されたことで速度面の不満が解消されている。HR02の発売は2023年2月を予定とまだ少し先だが、これからNTTドコモのhome 5Gを手に入れようと考えており、時間に余裕があるということであれば、HR02の発売まで待つのもよさそうだ。
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