風が吹き抜ける木立の中や光が反射してキラキラする水面など、美しい自然の風景は、日々の暮らしの中ではなかなか感じにくいもの。しかしこれらの美しい自然を目にすると、人々はリラックスしたり、気分転換できたりと「心地よさ」につながる。
そんな美しい自然の情景を室内にいながら感じさせる機器が、パナソニックが販売するダウンライト型プロジェクター「BioSHADOW」(バイオシャドー)だ。2021年6月の発売以来、オフィスやマンションのエントランス、飲食店など、導入先は多岐に渡り、室内に自然の情景が浮かび上がる、新たな空間演出を提供している。
「バイオシャドー」と「スペースプレーヤー」の設置イメージ
バイオシャドーは、天井埋め込み型のプロジェクターで、床面と壁への投映が可能。壁から1メートルの距離に設置すれば、壁面に木漏れ日や水面、海中、滝、海中、流れ雲、オーロラ、波紋と、本物の自然をモチーフにした映像を投影する。
パナソニックでは、空間演出のために開発したスポットライト型のプロジェクター「Space Player」(スペース プレーヤー)を2014年に発売。映像を投影するのではなく、照明による空間演出ができる新機軸の商品として好評を得ている。スペース プレーヤーはSDカードやWi-Fiを活用したワイヤレス再生機能も搭載しているが、一方で「コンテンツを持っていないため、使い方が難しい」という課題もあった。
ダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」
バイオシャドーでは、天井埋め込み型にすることで、本体の存在感をなくしたほか、映像と音をプリインストールし、設置後すぐに使えることが特長。加えて本物の自然をモチーフにすることで、室内にいながら自然を身近に感じられる空間を即座に作り出せる。開発の根底にあるのは「バイオフィリア」という考え方だ。
バイオフィリアとは、人は自然の中で進化してきたため、自然や森林を「好ましい」と感じる性質があるとした仮説。現在、IT企業を中心に、この考え方を取り入れる動きが進んでいるほか、カフェや商業施設などでも、心地良い環境デザインの手法として、設計デザイナーらから注目を集めているという。
より自然な情景を再現できるようパナソニックでは、 世界遺産としても登録されている白神山地で、木漏れ日のロケを実施。そのほかのコンテンツも自然の情景をモチーフに光の陰影や音のコンテンツとして仕上げるなど、こだわりのコンテンツをそろえた。
プリインストールコンテンツ
バイオシャドーは、光と映像で自然の動きを感じられることが最大の特徴。別売のBluetoothスピーカーと組み合わせれば、音も加わりよりリアルな雰囲気が増す。そのリアルさは、まるで窓の外の木立が室内の壁に映り、揺れているような感覚。映像と音と光の組み合わせながら、木立をゆらす「風」までも感じられるような完成度だ。
ここまでのリアリティは、「影」にポイントを置くことによって実現したもの。光と影の切り分けにより、本当に窓から差し込んだような光の再現性にこだわったという。明るさは、一般的なプロジェクターに比べ低めの約500ルーメン、解像度も1280×720ドットにすることで、自然を感じられる空間を構築。加えて低照度のため、電気代を抑え、長時間の使用にも対応する。これにより「見るよりも感じられる」空間を作り出す。
利用シーン別体感スペース「BSP-LAB」をオープン
パナソニックでは、12月にバイオシャドーの体験ができるスペース「BSP-LAB」(東京都品川区東品川1-3-12)を開設。ラボ内には、「白壁スペース」「通路」「打ち合わせスペース」など、エントランスやオフィスといった利用シーンをイメージしながら体感できる空間を用意する。グレーや木目調などさまざまな壁面を用意するほか、観葉植物と組み合わせるなど、「実際に設置する場所」を想定した見学ができるため、設置後をイメージしやすいこともポイントだ。
「BSP-LAB」のエントランス。「バイオシャドー」と「スペースプレーヤー」を使った演出がされている
計28台のバイオシャドーを設置し、天井に取り付けた時の目立たなさを実感できるほか、スペースプレーヤーやワイヤレススピーカーなどと組み合わせた演出が一堂に見られるのはBSP-LABならでは。2700~6500ケルビンの色温度の変化の違いを比べられるほか、壁からの設置距離を推奨の1メートルに加え、0.8メートル、1.2メートルも用意することで、見え方の違いを比較できるスペースも確保する。
BSP-LAB内では、壁にフワッと木漏れ日が現れたり、歩行を促すように泳ぐ魚の影が床に浮かび上がったりと、魔法のような仕掛けの数々を体感できる。それらはバイオシャドーのほか、スペースプレーヤーやワイヤレススピーカーなどを組み合わせることで実現しているもの。1組に1名アテンドがつき、説明してくれるため、設置場所はもちろん、スペースや演出方法の相談も細やかに対応してくれる。
「バイオシャドー」の展示例。鏡を組み合わせることで予想以上の広がり感が得られる
観葉植物などと組み合わせると、リアルな葉の影とバイオシャドーによる影が違和感なくミックスされる
オフィスビルや商業施設の中には、窓が十分にとれないスペースも存在する。窓を作りたくてもできない場所にデジタルの「窓」とも言えるバイオシャドーを設置することで、窓が1つ増えたような自然を感じるスペースを確保できるようになる。昨今のオフィスや商業施設内は、植物を数多く取り入れることで、自然と建物との調和をはかっている。観葉植物のように、バイオシャドーを組み込むことで、室内に自然を取り入れられるのだ。
設置は天井埋込式で、電源線が確保できれば、施工は約1時間程度。ダウンライトをつけるような感覚で設置が可能だ。何より魅力的なのは、埋込式のため、設置スペースを気にする必要がないこと。室内のインテリアを邪魔することなく、導入できる。
本体は、床面照写向けの中角タイプ「NTN91011」と壁面照写向けの広角タイプ「NTN91012」をそろえ、それぞれ枠色はホワイトとブラックを用意。インテリアにも配慮する。
パナソニックでは、スピーカー付きダウンライトや照明器具などバイオシャドーと組み合わせて使える機器も数多く用意。いずれも天井設置ができるため、設置スペースを気にする必要がない。中でもバイオシャドーは埋込式のため、ひと目見ただけではどこから光が発せられているかわからず、映像だけが壁や床から「ふわり」と浮かび上がり、より自然な情景を作り上げやすい。複数台の組み合わせも推奨しており、映像をバランスよくつなげることで、コンテンツに広がりが感じられ、リラックスしやすい空間になるとしている。また、照明用のコントローラやタイマー子機と組み合わせることで、複数台の一括操作や、スケジュール運用なども可能になる。
BSP-LABでは、バイオシャドーに加え、スペースプレーヤーの演出例も数多く体験できる。建築模型や絵画とプロジェクションマッピングを組み合わせ、一瞬にして家具が配置されたり、モノクロの絵画が色鮮やかに映し出されたりする演出は、ほかでは体験できないような驚きに満ちている。向い合せの鏡の中にスペースプレーヤーを設置したスペースでは、BSP-LABの一角にもかかわらず、永遠と連なる映像の中で、日常とはかけ離れた感覚を味わえる。
向い合せの鏡の中にスペースプレーヤーを設置したスペース。無限に連なる映像を体験できる
コロナ禍を経て、公共の場に求められているのは、雨風をしのげる、快適な温度設定であるといったことに加え、リラックスできる、心地よいといったメンタル面にも訴えかけるような仕掛けだ。プロジェクターとしての映像投影と、照明技術の蓄積による空間演出。双方の要素を取り入れたバイオシャドーは、オフィスやマンションのエントランス、飲食店など、身近な場所を別空間へと導く、唯一無二のダウンライト型プロジェクターだ。