タレントマネジメントで成果を挙げている会社が実践している『当たり前のこと』

ITライフハック

日本の人口は減少傾向にあり、少子化や高齢化の加速によって、労働人口の減少が加速している。企業は働き方改革の推進が求められており、限りある時間と人(働き手)を考え、どうしたら企業を成長させられるのか? 企業はその答えを探し続けている。

企業を成長させるための一つの答えに、「タレントマネジメントシステム」の導入による従業員の活性化と生産性の向上が挙げられるものの、『タレントマネジメントシステムの正しい選び方がわからない』『タレントマネジメントシステムを導入しても上手くいかない』などの課題から、なかなか導入に踏み切れない企業もあるだろう。

「タレントマネジメントシステム」を導入して成果を上げている会社は、何をやっているのか? 気になる人もいるだろう。

そこで今回は、人事領域に特化したIT コンサルティング事業を25 年以上にわたり取り組み、様々な企業に「タレントマネジメントシステム」の導入コンサルを行ってきた、株式会社オデッセイ 代表取締役社長 秋葉 尊氏にタレントマネジメントを導入して成果を挙げている企業が実践しているポイントを聞いた。

株式会社オデッセイ 代表取締役社長 秋葉 尊氏

秋葉 尊氏は、大学卒業後、日本電気株式会社(NEC)に入社。関西並びに中国地域の中堅企業マーケットへのソリューションセールスとマーケティングを担当した後、本社に戻り、国内大手製造業向けのシステムインテグレーション営業を担当する。2003年5月父親が経営する株式会社オデッセイに入社し、代表取締役副社長に就任。2011年4月より代表取締役社長に就任し、現在に至る。2020年、SAPジャパン株式会社より「SAP AWARD OF EXCELLENCE2020」特別賞(SAP SuccessFactors)を受賞。一般社団法人タレントエコシステム・コンソーシアム監事を務める。

■高い導入効果を得るために留意すべきこと
タレントマネジメントとは、従業員を企業の重要な資本と考え、その能力、適性を最大限に活かせる職務に配置することにより従業員のパフォーマンスを最大限に引き出し、企業の経営目標を達成させる概念だ。

編集部:タレントマネジメントは多くの企業が注目しているものの、単純に導入するだけでは、導入効果は半減してしまうと聞きます。なぜですか?
秋葉氏:タレントマネジメントの導入目的が不明確でタレントマネジメントを導入すること自身が目的になってしまっているケースが意外と多いことが原因だと思います。システムを導入する際には、導入により解決したい課題、導入するシステムにより実現できる解決策、そして導入後に期待できる効果を明確にして検討を進めることが重要です。この基本的な検討を充分に進めないままプロジェクトを進めてしまうと、何を実現するのかが曖昧になり、高い導入効果を上げることが難しくなってしまう可能性がありますね。

編集部:タレントマネジメントを有効活用するためには、どういうことを念頭に置くべきでしょうか?
秋葉氏:タレントマネジメントに限らず新しいことを軌道に乗せるためには「従来からのやり方にこだわらず、新しいやり方を積極的に活用できるか」が重要だと思います。というは、せっかく新しい仕組みを導入しても従来のやり方に固執して新しい仕組みを積極的に受け入れようとしないケースも少なくないように感じているからです。

たとえば、人材情報の参照や検索が簡単にできる仕組みを導入したにもかかわらず、「人材情報は自分の頭に入っている」といって活用しようとしない人がいたり、適性のある後継者候補を全社から選抜し、計画的に育成する仕組みができても、「後継者は自分が育てた部下に任せたい」といってはなから活用する気がない人も意外と多く見受けられたりします。

いずれも従来のやり方を変える必要がないとの考えが基になっていますが、後者の「後継者計画」の件については、さらに自分の考え方を次世代に継承したいという思いが加わり、実績を挙げてきた事業責任者や部門長レベルの方に多く見られる傾向があります。様々な人材情報が確認できるタレントマネジメントの仕組みがあるのですから、その情報を活用してより適任の後継者を選定/育成しようという考え方に切り替えていただけると良いのではないかと思います。

編集部:上述のような課題を克服してタレントマネジメントの仕組みを最大限に活用するためには、どうすればよいのでしょうか?
秋葉氏:導入を決める前に会社としての導入目的や効果について、タレントマネジメントを活用してほしい役職や部門の方々と十分に議論しておくことが非常に重要です。各人が納得したうえで導入するように調整しておくことが、導入後の積極的な活用を促進し、タレントマネジメントの仕組みを最大限活用することに繋がるからです。

■最適なツールと信頼できるパートナー選定が重要
編集部:タレントマネジメントは企業にとって有効な考え方だと思いますが、日本企業の中には導入を躊躇している企業もみられます。なぜ、導入に躊躇するのでしょうか。
秋葉氏:確かに、何らかの形でタレントマネジメントを導入している企業が多いなかで、「日本企業に合わない」という先入観で、導入を迷っていらっしゃる企業も、たまにお見受けします。どうやら、従来から日本企業の人事制度は「職能型」なのに対して、タレントマネジメントは欧米企業の「職務型」を基本としているため、日本企業では使えないと思い込んでいらっしゃることが原因のようです。実際には日本の多くの企業がタレントマネジメントを導入され、活用されていますので、他社での導入事例を研究されるなどして各企業が工夫されている点を参考にされるのが良いと思います。

編集部:タレントマネジメントを導入する際のツール(サービス)選定も重要ですね。
秋葉氏:ツールの選択は非常に重要です。タレントマネジメントを実現するためのツールは、パッケージソフトやクラウドサービスなどのかたちで、各社から提供されています。その中から自社に合ったツールを選択する必要があります。

編集部:日本でも多くのベンダーがツール(サービス)を提供していますが、どのように選んだら良いのでしょうか。
秋葉氏:
まず、検討してきた導入目的や効果を実現するために必要となる機能の範囲やレベルを備えているか否かを確認する必要があります。
自社が直近で利用を検討している機能を実現できるのは当然として、将来実現しようとしている機能も同じツールの拡張で対応可能なのか、別のツールが必要になるのか等、ツールの拡張性を確認しておくと良いですね。拡張性のあるツールを選択すれば、自社が計画するタレントマネジメントの構築を新たなツールを追加することなく、スムーズに進めることができるのでお勧めです。

編集部:ツール選定と並行して導入を担当する導入ベンダーも選定する必要がありますね。
秋葉氏:自社のパートナーとして頼りになる導入ベンダーの選択も重要です。導入ベンダーの選定にあたっては、いろいろな意見があると思いますが、私はタレントマネジメントに関するノウハウを保有しているか否かがもっとも重要なポイントと考えています。まず導入ベンダーの専門領域と導入実績は最低限確認しておきたいですね。導入ベンダーが自社のノウハウに基づき開発した導入テンプレートを保有しているとコストパフォーマンスの高い導入が期待できるので、独自の導入テンプレートを保有しているか否か、そして今回の提案がそのテンプレートを使用した内容になっているかも確認しておきたいところです。

タレントマネジメントを導入する際の注意点を語る、株式会社オデッセイ 代表取締役社長 秋葉 尊氏

タレントマネジメントシステムをうまく活用すれば、従業員だけでなく企業としてのパフォーマンスを大幅に改善できるだけに、導入したいと考えている会社は多いだろう。しかし、タレントマネジメントシステムを導入したからといって、必ずしも良い結果が得られるわけではない。

タレントマネジメントシステムを導入して成果を上げるには、会社としての導入目的や効果について、社内で正しく情報共有されている必要がある。さらに、自社のパートナーとして頼りになる導入ベンダーの選択が重要だ。

労働人口は今後も減少傾向になることから、企業が厳しい時代に打ち勝つため、タレントマネジメントシステムの導入は必要不可欠に思われる。タレントマネジメントシステムの導入を検討している企業は一度、株式会社オデッセイに相談してみるとよいだろう。

株式会社オデッセイ

参考:
企業力を高めるための「タレントマネジメント」【第2回】タレントマネジメントを有効に活用するために押さえておきたい4つのポイント(1)
https://www.g-soumu.com/articles/column-2018-08-talentmanagement2

企業力を高めるための「タレントマネジメント」【第3回】タレントマネジメントを有効に活用するために押さえておきたい4つのポイント(2)
https://www.g-soumu.com/articles/column-2018-09-talentmanagement3

企業力を高めるための「タレントマネジメント」【最終回】タレントマネジメントを有効に活用するために押さえておきたい4つのポイント(3)
https://www.g-soumu.com/articles/column-2018-10-talentmanagement4

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石山恒貴
中央経済社
2021-07-02