若者は何でも検索し、検索が身近な行為となっている。わからないこと、知りたいこと、興味があることは日常的に検索しており、検索サイトで検索することはとても多い。講義の最中でも、気になったことは始終検索している様子を見かける。
博報堂の調査結果からも、近年、若者の検索回数が増加傾向にあることがわかっている。同時に、TwitterやInstagram、YouTubeやTikTokなどのSNS検索も合わせて行っている。口コミ系ならTwitter、SNS映えすることならInstagram、手順やハウツーなどならYouTubeやTikTokというように、検索したいテーマに強く相性がよいSNSでの検索も行っているのだ。
一方で実は、若者は必ずしも検索スキルが高いわけではないようだ。SNSネイティブ、スマホネイティブで利用時間は長いにも関わらず、なぜそのようなことが起きるのだろうか。
SNSは使うが検索力が低い子どもたち
中学生の息子が調べ物などに必要なサイトが見つけられず、困っていることがあった。そこで筆者が検索して見つけ、教えた。すぐに役に立ちそうな省庁のサイトなどが見つかったため、なぜ見つからなかったのか不思議に思ったほどだ。
子どもがPCで検索している様子は見ており、適当にやったとか、調べていなかったわけではない。YouTubeで気になるゲームの情報を調べたり、学校の課題の資料で使う画像を探したりなどはできるが、資料に使える情報にはたどり着けなかったのだ。
検索スキルが高くないのは、小中学生などの低年齢の子どもに限らない。日常的に頻繁にスマホやPCで検索を繰り返している大学生でも、似たようなことが起きている。
「信頼性が高いメディア」がわからない大学生たち
大学で「〜について調べてくる」などの課題を出しても、見つけてくる情報はけして多くなく、出典が1つのみということも少なくない。筆者が知らないような情報を探してきたり、考察したりする学生は、残念ながらかなり少なめだ。逆に、信頼性が高くない個人ブログやまとめサイトなどを出典としていることもよく見かける状態だ。
レポートでSNSがらみの事件について調べるテーマを出しても、事件をまとめて紹介している個人ブログの記事などを堂々と出典として挙げて終わっている。本当にそのような事件が起きたのか、記載に間違っていることはないのかなどの確認をしていることもまずない。
信頼性が高い一般のメディアでもっと詳しい情報が確認できるテーマであるにも関わらず、なぜか信頼性が低いサイトまでしかたどり着いていないのだ。
若者はなぜ検索スキルが高くないのか
なぜ多くの若者は、検索能力が高くないのか。それにはいくつかの要因が考えられるだろう。
まず、出典元として信頼できるメディアを見分けられない、そもそも信頼できる情報を見つけたり見分けたりできない可能性があるのではないか。
情報の真贋の見分け方は情報リテラシーとして重要なので、信頼できるサイト、たとえば省庁やマスメディア、企業、専門家の情報を確認するという話は講義内で示している。ところが、信頼できる情報が掲載されているサイトはSEOが高いというわけではないので、ただ検索してもたどりつけないようなのだ。
また、スマホで検索することが多いことも影響しているかも知れない。スマホは画面が小さく、検索結果を複数のタブで表示して見比べるといったことができないためだ。
サービス側におすすめされた情報しか見ていない
利用しているサービスの影響も大きいだろう。たとえば、SNSでのハッシュタグ検索やレコメンドに慣れていることも影響しているのではないか。
「自分の好みがはっきりわかっているから、YouTubeではなくてニコニコ動画で調べて動画を見ている。おすすめされたものではなくて、見たい動画が見たいから」と、ある40代男性はいう。
男性の言うように、YouTubeでは詳しい検索ができるわけではなく、サービス側がおすすめしてくる動画を中心に見ていくということがほとんどだ。しかも、途中から全く関係がない動画が表示されていることも多い。
全体的に、SNSはサービス内の検索性が低い傾向にある。特にInstagramなどのSNSでは、ハッシュタグをつけている投稿しか検索できず、アンド検索などのそれ以上の検索もできない。また、利用すればするほどサービス側でユーザーの好みを学び、何もしなくても気になる投稿を勝手に表示してくれることがほとんどであり、受け身にならざるを得ないのだ。
検索するための語彙が豊富ではないとか、そもそも検索スキルは勝手に高くなるわけではないこともあるだろう。検索サイトで意図的に情報を絞っていく経験を通して積極的にスキルを身に着けていかなければ、単にネットやSNSを利用していても検索スキルが高くなるわけではないのだ。
若者は利用時間こそ長いが、検索スキルを始めとしたいろいろなスキルに長けているわけではない。必要な時には、積極的に学ぶ機会を作ったり、誰かに教わろうとする姿勢も大切かも知れない。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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