会議用弁当をおいしく食べるための会議用弁当用会議

デイリーポータルZ

ほっともっとの会議用弁当がおいしそうだった。食べたいなと思ったが会議用弁当は会議の場で食べてこそ真のおいしさを発揮するのだろう。

会議用弁当を食べるための会議、会議用弁当用会議を開いた。

会議用弁当がおいしそうだった

お弁当チェーンのほっともっとで特注弁当の貼り紙を見た。弁当の写真があり「会議や町内会の集まりに!」と書いてある。

いわゆる会議用弁当というやつだ

長い会議がお昼ご飯時に差し掛かってくると、会議を一旦切り上げてそのままみんなでお弁当を食べるらしい。

この会議用弁当がすごく豪華でおいしそうに見えた。

会議をしなければ

食べてみたいと思った。もちろん注文してお金を払えば食べられる。しかし会議をせずに会議用弁当を食べて、そのおいしさを堪能できるのだろうか。

この間『食パンに塗るハチミツ』っていう商品を見たけど、これは食パンに塗ってこそ良さがわかるっていうものだろう。ヨーグルトにかけたりレモンを漬けて考えてみても意味がないのだ。

『卵かけご飯用の醤油』とか『甘口カレーにかけるスパイス』などもある。それぞれ持って生まれた使命があり、その通りに使われてこそ輝くことができる。

だから、会議用弁当をおいしく食べるためには会議をしなければいけないと思った。会議用弁当用会議を。

議題を決め、人を呼んだ

会議とは、複数の人間が話し合いをして何かを決めることである。会議用弁当を食べたいなと一人で考えても、僕一人では会議ができない。

人を呼びました

左からライターの爲房さん、江ノ島さん、高瀬さん、與座さん。お弁当を食べてほしいのでお腹を空かせておいてくださいと事前に伝えてある。 

「でもね、食べたいのが会議用弁当なんですよ」
「食べるには会議をしなくちゃいけない。会議用弁当用会議が必要なわけです」
「なるほど」

この時「なるほど」という声は聞こえなかったが、そう思ってもらわないことには始まらないので「なるほど」と書いた。4人全員を丁寧に説得する時間はない。勢いが大事なんだ。

そしてその会議の中身である。弁当を食べるためだけの会議なので、話し合う楽しさと何かが決まる達成感だけがあればいい。そんな苦しい要素のない、どこから見てもキラキラしているミラーボールのような議題を考えてきた。

「フルーツ四天王を決めましょう」

「無人島に何か一つ持って行くなら」とか「地球最後の日に食べるもの」とか、そういう、楽しいが中身のない会話の会議版である。これから大人5人が会議室に集まり、誰も必要としていない楽しいだけの会議をする。恐ろしいことだ。 

ここからはフルーツ四天王を決める様子をお伝えします

ここを読んでこそ、最後の「弁当がうまい」という情報が正しく伝わると思うのだけど、早くほっともっとの特注弁当を見たいという方はもちろん飛ばしてもらって構いません。だってフルーツ四天王を決めているだけだから。

まず事前に調べておいた人気のフルーツを挙げていく

「イチゴ、梨、桃、ブドウ、みかん、りんご、パイナップル、メロン…」 

「キウイとか」「バナナも」

弁当と聞いていたのに突然会議だと言われ、議題がフルーツ四天王と告げられた皆さんは当初後頭部を強く殴られたような顔をしていたが、人気のフルーツを挙げていくうちに生き生きとした表情に戻ってきた。

フルーツってすごい。そして皆さん適応力がある。ダーウィンがガラパゴス諸島で見た鳥たちもこういう表情をしていたんだろう。

このあと、そもそも四天王とは何かという話をして、現時点で各々が思うフルーツ四天王を挙げてみることにした
みんな少しずつ違う。「えー!」という声もあがる
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こうなりました。あなたのフルーツ四天王はなんですか?
みんな違うしこだわりがありそう。「これ、決まるのか? 弁当食べられるか?」という気持ちになる
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半分まできました

どうだろうか。ここまでで半分ぐらいである。

意味のない会議を「意味はない」と予告された上で読むのはけっこう大変なことだと思う。だがここがないと弁当がおいしくならないのだ。今チョロQを後ろに引っ張っているところである。もう少し引っ張らせてほしい。

さて、それぞれのフルーツ四天王をざっと見ると、一人しか挙げていないフルーツが二つあった。江ノ島さんが挙げたメロンと、高瀬さんが挙げたマンゴーである。

「メロン、どうですか?」と聞いてみる

魅力をプレゼンしてもらうか、そこまで熱意がなければ削らせてもらおうと思った。

江ノ島さんは「いや、みんなが入れないなら全然いいんですけど、でもメロン入れないんだ、とは思いますよね」と言っていた。

そう言われると四天王にメロンがいないのはおかしい気がしてきた。

話し合った結果、メロンに魅力がないわけではなく、メロンを四天王に入れた時にそれに釣り合う他の三つが出せないんじゃないか、ということになった。四天王なので四つが同じくらいの存在感を持っていてほしい。メロンを入れてしまうと一つだけギフトっぽすぎるのだ。

マンゴーも同じ理由で入れにくいね、となった。これだけ南国っぽすぎるのだ。マンゴー、バナナ、パイナップル、ライチとかだったら釣り合うが、これは南国フルーツ四天王だ。

ここから、ギフトっぽいフルーツ(メロン、桃など)と実家っぽいフルーツ(みかん、りんごなど)に分けられそうという話になった。でもこれは出身によって印象が違うのかも

このあと「季節ごとに一つフルーツを当てはめたら四天王では?」というアイデアが出たが夏と秋は競合が多すぎて絞れずに断念。 

「四つと言わず、有力なやつを並べて削っていったら?」という意見が出る。ここまででよく話題に挙がっていた六つに絞られた(赤い丸のところ)

桃、ブドウ、イチゴ、梨、みかん、りんごである。どれも強いフルーツであることは間違いない。

ここで「りんごと梨って四天王に入れるならどっちかじゃない?」となり、今回は味・親しみやすさ・アイコン的存在感からりんごを選出。りんごが入ったことから全体のコンセプトが決まり、なんとなく高級な感じがしすぎてしまう桃を外して四天王が決まった。 

ブドウ、イチゴ、みかん、りんご。この四つをフルーツ四天王とします
「いいんじゃない?」「分かる分かる!」「なんか色合いもいいし」「のど飴の味みたい」

メロン・マンゴーを入れるかどうかの議論から穏やかに地続きでここまで来た感じがする。

弁当のための便宜的な会議なので「どうせなら楽しくやろう」という気持ちと「弁当食べたいからちょうどいいところで結論出そう」という気持ち、しかし「より良い結論を出したい」という気持ちもしっかりあり、それらがちょうどよくブレンドされた理想的な会議になったと思う。

何事も、フルーツ四天王を決める時のように話し合っていきたい。 

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やっと弁当を食べます

さあ、弁当である。会議がひと段落したこのタイミングこそ会議用弁当の食べ頃である。

配る。なんだかすごく喜ばれる
会議用弁当で出てきそうなお茶も用意した。紙パックのお〜いお茶
中はこんな感じ

会議用弁当、というにはすごくわんぱくなラインナップ。そこにすごく惹かれてしまった。

江ノ島さんが箱を開けてすぐ「エビフライがあるのにエビ天もある!」と叫んでいた。クイズ王のスピードだった。弁当クイズ王。

あとはもう食べるだけだ。いただきます
うまい
うまいよ

弁当はもちろんおいしい。見るからにおいしいおかずばかり入っていて、どれも見た目通り、いや見た目以上においしい。

そしてやっぱり会議をしてから、というのが良かった。意味のない会議なのにちゃんと一体感が生まれたし、その締めとしてみんなで同じものを食べているというのが、なんだかすごく安心する。

チームでマンモスを狩り、皆で喰らってきた遺伝子の記憶が今も残っているのかもしれない。

狩りの成果(ホワイトボード)を眺めながら食べるとうまい

與座さんが「こうやって食べてると社長が来て、会議の結論ひっくり返すんですよね」とマジの会議のあるあるを教えてくれた。イヤだな。もうフルーツ四天王は変えないで欲しいよな。

そんなことを話しながら会議同様、穏やかに談笑しながら食べ終えた。量も多くて大満足である。最初から最後まで良い思い出しかない。

やはり会議用弁当をおいしく食べるためには良い会議が必要だ。

会社の研修とやってることは同じ

あとから考えて、会社の研修みたいなことをしたなと思ったのだが、会社の研修でこんなに清々しい気持ちになったことはない。「成長」とか「ためになる」とか、そういう要素が一切なかったのが良かったのかもしれない。

あと目的が違う。弁当のために研修をやる会社はきっとない。

研修っぽい写真

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