デサンティスはトランプに反旗を翻すのか?

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さざ波に終わった共和党?

インフレ、バイデン大統領の低支持率などの要因が重なり、「津波」のような勢いで中間選挙を席巻すると思われていた共和党だが、蓋を開けてみれば「さざ波」程度の結果となりそうだ。むしろ、下院の選挙結果次第では民主党にとっての「さざ波」なることも未だあり得る状況である。

上院選は識者の予想通りデッドヒートが繰り広げられたものの、13日にネバダ州で当確が出たことで、12月6日に実施されるジョージア州での決選投票を前に民主党は上院の死守した。

一方、下院選はこれまでの中間選挙における野党に風が吹く傾向が多かったことから、共和党が勝つことが確実視されるだけではなく、大勝する予測もでていた。しかし、下院もこれからの集計作業の結果次第で民主党が多数派を維持する道も残っており、仮に共和党が勝ってもトランプ派の暴走によって多数派の意味をなさない場合も予測される。

トランプをこれまで鋭く批判してきたリベラル系のみならず、保守系メデイア各社、共和党の反トランプ派の人たちは予想外の共和党の苦戦を全てトランプ氏に押し付けようとしている。トランプ氏が擁立した候補が過激すぎたせいで、取れるはずだったバイデン、民主党に対する批判票を取りこぼしてしまった。それゆえ、トランプ氏は敗戦責任としては再び大統領になるという野望を諦め、フロリダ州知事選で大勝したデサンティス氏に後継を譲るべきだという論調である。

だが、トランプ氏に一定の敗戦責任は帰せられる一方で、今回の中間選挙の結果はトランプ氏の共和党内において無視できない影響力を未だに誇っていることを示した。

選挙懐疑派で溢れる共和党

程度に差はあるものの、メデイアを騒がせた候補以外で2020年の選挙に不正があったとするトランプ大統領の主張に同調した候補の多くは当選している。ニューヨーク・タイムズ紙の調査によれば、「選挙懐疑派」と認定される約370人以上の候補のうち、11月12日時点で220人程が当選をしている。

当選した共和党下院議員の場合は180人以上が「選挙懐疑派」として大まかに分類され、このうち来年の議会で下院のキャスティングボートを握るであろう30名が前回の大統領選が「盗まれた」と言い切っている。上院選でも選挙が「盗まれた」とするトランプ氏の推薦候補であったヴァンス氏が当選した。民主党が勝つ望みがほぼないケンタッキー州選出のポール上院議員は現職でありながら、「選挙懐疑派」の中の偏った部類に入る主張を行っていた。

確かに、国政、地方レベルにおいてトランプ氏が与えた負の影響は否定できない。彼が一般の有権者だけではなく、共和党支持者も支持できないような候補を無理やり予備選で押し通したことによって勝てるはずだった選挙で共和党が負けてしまったという総括は妥当である。

しかし、トランプ氏の介入により穏健な候補は排除され、選挙に強い候補でもリップサービスでトランプ氏の主張に同意を示さなければならないという共和党内の現状はトランプ氏の党内における影響力を誇示する結果になった。また、下院が接戦となることでトランプ氏になびく議員たちの影響力が増し、トランプ氏が国政に間接的に与える影響力も強くなったとの見方もできる。

その一方で、最高裁の判決によって人工妊娠中絶の権利が州によって制限された、その可能性が出てきたことが共和党にとって逆風になったことも否定できない。人工妊娠中絶の権利の是非が問われた住民投票と合わせて行われたミシガン州の州議会選挙で民主党は40年ぶりに多数派となり、2024年の大統領候補と目されているウィットマー知事も大差で再選を果たした。

人工妊娠中絶の権利を否定する保守論客の中にはこの結果を座視せずに、トランプ氏に全て責任転嫁する言論もみられる。全米の大多数が支持している権利が撤回されることの反動に共和党がしっかりと準備出来ていなかったことも歴史的な接戦となった今回の中間選挙の結果に現れたと筆者は考える。

さらに、コラムニストのロス・ドゥタット氏の場合だと上記の要素に加え、共和党内のトランプ支持層が候補の「当選のしやすさ」を気にかけていないことにも触れている。ペンシルベニア州知事選で大敗した自他ともに認める「選挙懐疑派」であるマストリアーノ氏は、既に党内予備選での勝利が確定した段階でトランプからの推薦を受けている。

2024年の大統領選にデサンティスは立候補するのか?

中間選挙がひと段落が着けば、次のアメリカ政治界隈の注目は2024年の大統領選である。特に、今回のフロリダ州知事選で大勝したデサンティス氏がトランプ氏の対抗馬として共和党の予備選に出るかが大きな焦点のひとつとなるであろう。もし、出馬すれば、トランプ氏の実行力不足を批判するつもりだとする報道がある。

ロン・デサンティス氏 同氏HPより

デサンティス氏自身が大統領になりたいという野心は状況証拠から見られる。討論会では知事の任期途中で大統領選に出馬することを明確に否定せず、立候補に向けた選挙資金も水面下で準備している。

だが、トランプ氏に反旗を翻すことによって生じるリスクも計算すれば出馬することには障害もある。仮にデサンティス氏がトランプ氏に競り勝って大統領選に出馬しても、それは共和党内で血みどろの争いが繰り広げられた後であることが予測される。共和党が勝つことがどうでも良いと思っているトランプ氏は本選でも徹底的にデサンティス氏妨害するであろう。

中間選挙前の予備選を結果からどの州にも3割程の熱狂的なトランプ支持者が共和党内にはいることが読み取れる。過去二回の大統領選が接戦州における数万の票によって勝負がついてきたことを鑑みると、トランプ氏はデサンティス氏の本選での勝利を妨害するために拒否権を行使することもできる。

デサンティス氏に近しい存在によれば、44歳とまだ若いのだから、わざわざトランプ氏との対決し、党内の分断を煽るぐらいなら、次の次の大統領選を目指すことがデサンティス氏の考えであるとヴァナテイ・アフェアズ紙は報じている。

デサンティス氏はこれまで公でトランプ氏を批判したことがない。トランプ氏がデサンティス氏に脅威を覚えて一方的に自身のソシャールメデイア上で大々的に攻撃しているがデサンティス氏は沈黙を貫いている。デサンティ氏がトランプ氏の挑戦状を受け取るのか、このまま2024年大統領選まで沈黙を保つのかは本人しか分からない。

共和党内の2大スターの対決が今後どのような様相を帯びていくか見物である。

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