クラシルというレシピサイトに、自宅の食卓を支配されている。
とにかく解説動画のテンポがよく、分かりやすい。
分かりやすいだけでなく、あのミニマルな動画だと、
普通の家庭料理でもなぜかおしゃれに見えてくるのだ。
じゃあ、ねるねるねるねをクラシルっぽく作ったらどうなるだろう?
やっぱりスタイリッシュな料理に見えるのだろうか?
どんな動画になったか?
というわけで、こちらが事前に用意した出来上がりの動画です。
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すごい!ねるねるねるねの作り方がたった30秒で分かる!
俯瞰のアングルといい、カットと倍速再生によるテンポ感といい
結構クラシルっぽくなったのではないか。
混ぜるのが下手でボウルがベッタベタになっているのを気にしてはいけない。
しかし、この動画を作るのがなかなか大変だった。
あなたは「30秒の動画だし、簡単に撮影・編集できそう」と思ったのではないだろうか。僕も実際に撮影するまではそう思っていた。
そう、この記事のメインテーマは、素人によるクラシル風動画のメイキング……っていうか、苦労話である。
「クラシルっぽさ」を研究する
まずは「クラシルっぽさ」を、改めて学ばなければならない。
普段、漫然と見ているクラシルの動画から、僕がなんとなく抱いていた「クラシルっぽさ」は以下の通りである。
・ガラスボウルと調味料を入れたガラスの小皿
・木目のテーブル
・倍速とカットを活用し、再生時間は30秒ほど
たしかにこれを抑えていればそれっぽくなる気がする。
でも、今回僕が作るのはクラシルに掲載されたレシピではなく、クラシルの動画そのものである。さすがに、クラシルに「クラシルの動画」のレシピは載っていない。
クラシル公式が撮影風景をアップしていた!
…と思っていたのだが、ググったらクラシル公式からメイキング動画がアップロードされていた!すごい!これがプロセスエコノミーか!
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この動画の20秒あたりを見よ。ずらっと並んだ調理台!俯瞰で固定された頑丈なカメラスタンド!高い位置から逆光で照らすLEDライト!そうそう。こういう情報が欲しかった。
他にも情報が無いかとググったところ、テレビ局がクラシルを取材した記事が見つかった。
掲載レシピ数4万超!たった1分で調理工程がわかる、人気のレシピ動画サービス『クラシル』の舞台裏…3/21(日)BACKSTAGE(バックステージ)
クラシルの特徴といえば、真上から撮影された映像。カメラの設定をはじめ、細かい基準を決めたマニュアルにしたがって撮影していく
「調理する食材はわかりやすいように中央に配置」「まな板、フライパン、包丁といった調理器具を全て統一する」
さすがに番組の公開は終了していたが、こちらの情報も大変ありがたい。
クラシルでは一日に50本以上のレシピ動画を公開しているらしく、その撮影工程は完全にマニュアル化されているそうだ。
すなわち、完成形の動画を見ればマニュアルをリバースエンジニアリングできる。よっしゃ。
クラシルの動画を見まくってわかったこと
さらにクラシルっぽさの解像度を深めるため、今度はクラシルの動画自体を30本ほど見まくった結果、以下のようなことが分かった
・動画の長さは30秒〜1分ほど
・動画の最初と最後は完成図を見せる
・調理過程のつなぎはカット。混ぜる工程はフェードインアウトでつなぐ
・手を出す方向は統一する(下から入れて下に出す。あるいは左から抜ける)
・テロップは分量のみ。最近は器に添えるのが主流
・締めのロゴは筆記体orサービスロゴ
・机の木目はタテ
複数の動画をまとめて見たところ、各動画の品質には意外にもばらつきがあることも分かった。
たとえばこちらの2つのチーズケーキの記事を見比べてみよう
混ぜて焼くだけ いちごのベイクドチーズケーキ レシピ・作り方
机の木目や色味の微妙な誤差はもちろん、テロップの位置などもまちまちである。これは撮影時期が違ったり、ABテストの痕跡なのかもしれない。
いずれにせよ、僕のようにエセクラシル動画を作ろうとしている人にとっては、都合のよい言い訳にできるのだ。
動画の撮影準備・撮影
クラシルっぽさの傾向がつかめたので、撮影のセッティングをしていこう。
撮影のコツはカメラの位置
といっても、クラシルのスタジオみたいなかっちりした機材は必要ない。
一番のコツは、カメラをしっかりと真上にセッティングすること。
そして、これがとにかく難しい。普通の三脚を使うと、画角の都合上どうしても三脚の一部が入ってしまうのだ。
色々と試行錯誤した結果、僕の場合はどこのご家庭にもあるマイク用のブームスタンドに、三脚の雲台を固定することで解決した。
ただし、マイクスタンドはカメラを支えるにはあまりにも貧弱である。油断すると容易に転倒してしまうので、このセッティング方法は推奨しない。雲台のねじがひとつでもゆるんでいれば、カメラがねるねるねるねまみれになってしまうだろう。くれぐれも自己責任。
LEDのビデオライトは、机の向こう側の高い位置から手元を照らすようにしている。ディフューザーが無いためライトにレジ袋をかぶせて少し拡散させている。大きめの窓とレフ板がある人は、窓際に机を置いてみてもいいかもしれない。
撮影に必要な小物類
クラシルっぽい木目の机は背景シートを使う。
ガラスのボウルや小皿は百均で買ってきた。
今回使う小皿は7cmのもの。できればもう一回り小さいものを用意したかった。
撮影前のイメトレや準備も必須
クラシルの動画では、「手を出し入れする方向」が決まっている。
また、各種調味料を加えるさいは、いったん手を止めて内容物をしっかりとカメラに映している。
小皿はカメラのフレームの外に置くわけだが、スムーズに手に取れるように皿を置く位置も考慮しよう。
…だいたい想像がつくと思うけど、機材の準備ですっかり疲弊してしまう。
これを毎日撮っているクラシルの人はすごい。洗い物はどうしてるんだろう。
完成!
撮影が終わったら、編集ソフトで色を微調整し、クラシル本家の動画を参考にしつつ30秒におさめていく。
これも撮影段階でカット数を意識しながら撮ったほうがよい。
もっとも、ねるねるねるねの場合はパッケージに書いてるんだけど。
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本家の机と比べると少し彩度が低い。また、照明はもう少し明るいものを利用して、手を白く飛ばしたほうが、よりクラシルっぽさが増しただろう。
ちなみにこの動画、一度高画質で書きだしたあとに、スマホでトリミングしてわざと画質を落としている。
クラシルの動画はスマホでの読み込み速度を重視しているのか、画質をぎりぎりまで抑えているらしい。
したがって、このフォーマットの動画を高画質で書き出してしまうと、見慣れた「クラシルっぽさ」が出ない。
なんかフィルムカメラや昔のコンデジの味わい深さに近いかもしれない。
でも、ねるねるねるねは結局普通に作ったほうがいいと思う
この動画自体は、前からずーっと作ってみたかったので、結構満足している。
ただ、やっぱりねるねるねるねは普通に作ったほうが美味しく食べれると思う。
今回、一番苦労したのは撮影や、慣れない動画編集よりも、ねるねるねるねの盛りつけである。
当初、フランス料理のソースみたいな盛りつけをしたいと思っていた。
しかし、僕が想定していたよりもねるねるねるねは、ずっとねばねばしていたのだ。
ならば、アイスを盛りつける「クネル」と呼ばれるやり方を試そうとも思ったが、こちらも上手くいかず。最終的に動画のようなシンプルな盛りつけになったのだ。
ねるねるねるねの調理動画は30秒もかかるが、大人が普通にねるねるねるねを作れば、おそらく30秒もかからずでき上がってしまうだろう。
そういう意味で言えば、クラシル風に調理することで
「子どもの頃、初めてねるねるねるねを買ってもらったときのドキドキ感」を楽しめると言えなくもない。たぶん。
今回はねるねるねるねだけだったけど、他の知育菓子でも同じ試みをやっていたら、もっと面白かったかもしれない。
機会があれば、また挑戦してみたい。