ネット上の集団行動は鳥の群れに驚くほど似ている

GIGAZINE
2022年11月14日 21時23分
メモ



夕暮れ時になると、空の一部を埋め尽くす勢いでムクドリの群れが飛んでいることがあります。群れは一方向に飛ぶわけではなく、まるで渦を巻くように動いたり、密になったり疎になったりと、なにかリズムがあるかのような動きを見せますが、人間のネット上での集団行動もこのムクドリの群れの動きに似ていることが指摘されていると、情報サイト・NOEMAでルネ・ディレスタ氏が報じています。

How Online Mobs Act Like Flocks Of Birds
https://www.noemamag.com/how-online-mobs-act-like-flocks-of-birds/

ムクドリの群れがうねるように動く姿は、生物学で「Murmmuration(マーマレーション)」と呼ばれています。このとき群れの中でムクドリは、自分の近くにいる7羽を見て、それに応じて動きを調整しているとのこと。以下がマーマレーションの実例。

Starling murmuration 2020 #Geldermalsen – YouTube
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この群れの行動を研究する計算生物学者やコンピュータ科学者は、マーマレーションで起きていることを「局所的な行動反応の近隣への急速な伝達」と表現し、異質な生物の集団がまとまった単位となって動くマーマレーションを「集団行動」と呼んでいます。

SNSにおいて人間は協調したり嫌がらせをしたり、あるいはサイバーカスケードのように多数派の意見を選択することがあります。これは、局所的な反応が周囲に広がったものといえます。

局所的な反応がどう伝わるかは、ネットワーク構造で決まります。鳥の場合は前述のように周囲7羽の鳥の動きに合わせますが、ネット上で人はコンテンツや他のユーザーに合わせることになります。そして、そのコンテンツは、アルゴリズムが媒介して提供されるニュースフィードから送られてくるので、いわば、アルゴリズムが周囲7羽の鳥を決定しているといえます。

SNSがネットに現れた当初は、あくまで現実の人間関係のつながりをネット上に移しただけのもので、つながりがある人の数は、安定的な関係を築けるとされる「ダンバー数」の150人に満たない数だったと考えられます。しかし、友達やフォロワーの数がプロフィールに表示され「人の評価の対象となる数字」になると、人々は自分の友達だけではなく、「知人の友達」「友達の友達」とも友達になっていきました。

やがて、人々は現実世界でのつながりの使い果たしますが、プラットフォームとしてはサイト上に長時間いてもらうために、レコメンドシステムなどによって、人々がこれまで出会ったことのない新たな群れとの出会いを提供するようになりました。さらに、統計的結果をもとに、特定のオンラインコミュニティへの参加を推奨していきます。この仕組みは「協調フィルタリング」と呼ばれています。

反ワクチン運動について調べていた筆者のディレスタ氏は、アルゴリズムによって、2016年アメリカ大統領選挙の民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が人身売買・自動性的虐待に関与しているという「ピザゲート」のコミュニティに参加するよう推奨されたことがあるとのこと。「ピザゲート」のあとに陰謀論者がまとまったのが、匿名掲示板「4chan」をベースに勢力を拡大した「QAnon(Qアノン)」です。

Twitterのトレンドも、新たな「群れ」を生み出す原動力の1つになっているとディレスタ氏は指摘しています。

一方で、ユーザーも主体性がないわけではないので、流されっぱなしではなく、時には「エサに食いつかない」という選択を取ることができます。特定のツイートが広まったときに「バイラル(拡散)」や「バズった」などと表現しますが、これはどのようにして広まったかという要素を排除し、参加した人の責任を免除する魔法の言葉になっているとディレスタ氏。注目を集めたものが広がりやすい構造になっていても、うわさは「私たちが広めたから広まったのだ」と、厳しい目を向けています。

今後、「7羽の鳥」の対象を見直すように改善したとしても、また「群れ」は形成され、当然、有害な群れが生まれることもあるとディレスタ氏は述べ、解決策の1つとして「ゼロから出発して、現存するエコシステムからまったく新しいものへとみんなで脱出できれば、社会としてよりよいものを提供できるかもしれない」と論じています。

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