太陽系に近い「人類が居住可能かもしれない惑星」の探査プロジェクトが中国で進行中、2026年にも宇宙望遠鏡を打ち上げか

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by NASA’s Marshall Space Flight Center

太陽系から約33光年以内にある太陽系外惑星を探査し、「人類が居住可能かもしれない惑星」を探すプロジェクトが中国科学院を中心とする研究チームにより提案されています。「Closeby Habitable Exoplanet Survey(近傍居住可能太陽系外惑星調査/CHES)」と名付けられたこのプロジェクトでは、宇宙望遠鏡を利用して約100個もの恒星を調査し、それらを周回する惑星を見つけ出すとのことです。

China plans world’s first nearby habitable planet search via telescope – CGTN
https://news.cgtn.com/news/2022-05-19/China-plans-world-s-first-habitable-planet-search-outside-solar-system-1a9W98DLA52/index.html


The Closeby Habitable Exoplanet Survey (CHES) Could Detect Exoplanets Within a few Dozen Light-Years of Earth Using Astrometry – Universe Today
https://www.universetoday.com/155926/the-closeby-habitable-exoplanet-survey-ches-could-detect-exoplanets-within-a-few-dozen-light-years-of-earth-using-astrometry/

China is looking for ‘other Earths’ to colonize | Live Science
https://www.livescience.com/china-is-looking-for-other-earths-to-colonize

太陽系外惑星の探査は天文学における重要なフロンティアの1つであり、記事作成時点では5035個もの太陽系外惑星が確認されていますが、自ら光を発する恒星と違い、光を発しない惑星を遠く離れた太陽系から探査するのは難しい課題です。そこで中国科学院紫金山天文台の研究教授であるJi Jianghui氏らは、宇宙望遠鏡を打ち上げて比較的太陽系に近い居住可能な太陽系外惑星を探査するプロジェクト「CHES」を提案しています。

一般に太陽系外惑星の探査において用いられているのが、主星(恒星)の前面を太陽系外惑星が横切る際に生じる光度の変化から惑星の存在を確認する「トランジット法」です。しかし、トランジット法はうまく太陽系外惑星が主星の前を横切らないと観測できず、太陽系外惑星について検出できるのも半径などの情報に限定されているとのこと。

一方でCHESで用いられるのは、超高精度のアストロメトリー(天文測定学)という手法です。この手法では、まず観測する天球において基準となる複数の天体について絶対位置を測定し、ターゲットとなる恒星の相対的な位置を観測します。恒星の位置は公転する惑星の重力によって微妙なぐらつきが発生するため、この相対的な位置のぐらつきから、公転する惑星の軌道や質量を正確に測定することが可能です。

Ji氏によると、太陽系から約32.6光年離れた位置にある太陽型恒星を、太陽に対する地球と同じ距離・質量で周回する惑星がある場合、恒星の軌道は0.3マイクロ秒角のぐらつきが生じるとのこと。CHESが用いる超高精度の相対天文測定学的手法は、6~8個の基準星に対するターゲットとなる恒星の相対的な位置を測定することで、このような微妙な軌道の変化を検出できるとJi氏は主張しています。

by Hubble ESA

CHESは天体の位置を正確に測定するため、(PDFファイル)モザイクCCDデバイスとレーザー測定技術を搭載した1.2メートル口径の光学宇宙望遠鏡を、太陽と地球の間で重力的に安定しているラグランジュ点(L2)を周回するハロー軌道に打ち上げることを計画しています。

ハロー軌道は地球の歳差運動や大気の影響を受けず、熱放射環境も比較的安定しているとのことで、燃料消費を抑えて長時間宇宙望遠鏡を動作させることが可能だそうです。CHESでは宇宙望遠鏡で太陽系に比較的近い100個もの恒星を5年間にわたり観測し続けることで、地球と似たサイズや軌道を持つ惑星や、地球の数倍の質量を持つスーパーアースを約50個見つけることが期待されています。

Ji氏は、居住可能惑星の探査に天文測定学を利用するには、前例のない観測精度を達成する必要があると主張。「私たちの天体観測は惑星の軌道面に制約をかけません。あらゆる軌道の惑星を検出でき、居住可能惑星の質量を直接測定できるため、近傍の太陽型天体を周回する惑星の包括的な探査を実現できます」「これらの研究は、最終的に『私たちの太陽系は特別なのか?』『私たちは宇宙で唯一の存在なのか?』といった疑問に答え、地球や太陽系の形成および進化、そして自然と生命の起源の全容をより深く理解し、私自身をより深く理解することにつながります」と述べました。

これまでのところ、CHESの実行可能性に関する予備調査は中国のさまざまな研究機関によって行われており、プロジェクトの実施にあたっては世界中の天文学者に研究への参加を呼びかけるとのこと。なお、資金調達に関する決定は2022年6月に行われる見込みで、うまくいけば2026年の宇宙望遠鏡打ち上げを目指して動き始めるとのことです。

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