街には文字がある。それらは必ず何かを伝える目的でそこにある。何かを禁止するためなのか、広告のためなのか。歩いていて出会った文字をかたっぱしから調べて集計してみた。
街には文字がある
街にある文字は、たとえばこんなふう。
これらは何かを伝えようとしてそこにある。街にあるものには必ずそこにある理由があるのだ。それを知りたい。
通りを歩いて、出会った文字をかたっぱしから分類する
そこで、街を歩いて出会った文字をとにかく全部記録して分類することにした。街にある文字って結局は「広告」が多いよ、とか、いやいや「注意」が多いよとかが分かるといい。
で、本当は結果だけを先に伝えたいところなのだが、途中の分類についての葛藤が意図せず面白かったのでそこを共有したい。ここがハイライトだったかもしれない。
まずはこんな景色だ。この道を奥に向かって歩いていくことにした。
看板がある。ここの文字が伝えようとしているのは、車両の通行を禁止する、ということだ。「禁止」という分類にしよう。
この質屋マルヨは「広告」にしよう。
ここまではよかった。しかし次が問題だった。
これはなんだろうか。
明らかなのは、これは「会社名」だということだ。じゃあ分類は「名前」にしようか。
しかしちょっと待て。さっき「広告」 に分類した「質屋マルヨ」だって、それだけを見れば会社名じゃないか。同じ名前なのに、片方だけは広告なのか。
「何を」と「何のために」を分けてみる
悩ましい。そこで初心に帰ることにした。知りたいのは、文字が何を伝えようとしているのかだった。
それでいえば、「質屋マルヨ」は会社名を伝えようとしている。「広告」はその目的なんじゃないか。つまり「広告」のために「会社名」を伝えている。
「サンヨー化学」も同じく会社名を伝えている。しかし目的は「会社がここにあることを伝えるため」だ。
書かれている内容は同じでも、目的は違うということがありうる。
「目的」も難しい
しかし目的もよく考えると難しい。1つじゃないし、階層がある。
たとえば「広告」にしても、じゃあなんで広告を出すかといえば「儲けるため」だし、なんで儲けたいかといえば「ご飯を食べるため」だ。終わりがない。そもそも最初の段階で「儲ける」以外の目的もあるだろう。
結局、内容とか目的とかを1つ決めるのは諦めて、タグづけの考え方をすることにした。「質屋マルヨ」でいえば「広告、会社名」のように複数のタグをつけて、タグを集計する。
で、結局何を伝えようとしているのか
長くなって恐縮だが、この悩んでいる過程がハイライトだったので紹介したかった。そういうのってあるよねと思ってもらえると嬉しい。
結果はこんなふうになった。
そしたらなんだ、やっぱり広告が1位なだけじゃないか、となった。予想どおりじゃないか。
しかし発見はある。「広告」として想像するポスターや看板以外にも、広い意味で広告であるものは結構あるのだなと気づいた。
たとえばこれ、路上の段差スロープと車止めだ。それぞれ「キャスコーナー」「バリカー」と商品名が書かれている。
単に商品名ではあるが、そこにわざわざ書くのは、やっぱり路上で見かけたときに商品名を知ってほしいからだ。この段差スロープ「キャスコーナー」っていうのか、じゃあ注文しようかな、となるかもしれない。名前が分からなかったら、いいなと思っても買えない。
2位の「蓋」とはこういうやつだ。
路上にはこういう何らかの蓋がやたらとあって、それぞれにほぼ必ず文字が書いている。それは広告ではなく、この下には何があるのかを明らかにするものだ。「水道メータ」「仕切弁」などなどと書かれている。
3位の「ここです」はこういうの。
いくつも看板があることによって、「巣鴨餃子坊」が他ではないここにあることが分かる。広告の意味もあると思う。他には家の表札も「ここです」だ。
6位の「禁止」。
街では場所によってあらゆるものが禁止されているとよく分かる。駐輪、駐車、持ち去り行為もだ。
よく見ると左下の蓋に「積載禁止」と書いてある。下に空間があり、見た目ほど強くないのだろう。気づきづらいことであっても、結果が重大な場合はそれを禁止する文字が書かれる。
分類は難しく、面白いと知った
段差スロープの商品名を見て「これは広告なのでは?」と思うのは楽しかった。結局のところこれは何のためにあるのか?といちいち考えたりはしないからだ。それが楽しかった。
結果として広告が1位で想像どおりだったが、それはそれでいい。2位の蓋は意外だった。よく考えると何も書いてない蓋はない気がする。なにかルールで決まっているのかもしれない。