2030年冬季オリンピック開催地として検討していたカナダ、ブリティシュコロンビア州は招致活動を止めると発表しました。費用に見合わない、が理由です。もともと冬のオリンピックは規模が限定され、かつ、開催地が限れます。その上、このところの異常気象ではその時雪があるのかわからない不確定要素もあるでしょう。日本では札幌市が手を上げていますが、高橋治之元組織委員会理事の暗躍がマイナスイメージを作り、国内世論の盛り上がりに欠いています。オリンピックもそろそろ抜本的に形態を変える時が来たのではないでしょうか?
では今週のつぶやきをお送りします。
変わる市場の風向き
日銀が相変わらず金融緩和を継続すると決定しましたが、私が注目したのはカナダ中央銀行が今週発表した利上げ。それは大方の0.75%引き上げ予想を覆す0.50%の利上げでした。その理由はインフレ率が6月の8.1%をピークに3か月連続で下がっているためです。その間の利上げ幅は225bpとなります。一方、アメリカは現在までその間で1.50%利上げしているので来週0.75%利上げすればカナダと同じ2.25%幅の引き上げになります。カナダが先行して利上げ幅を下げ始め、12月には0.25%-0.50%引き上げが見込まれます。仮にアメリカとカナダが似た経済状況だとすればアメリカの12月の利上げも0.50%程度に留まる可能性があり、利上げ競争のトンネルの出口が見えてくるかもしれません。
パウエル議長の強硬な利上げ姿勢に対して外部から厳しい批判が出ていることも事実です。とすれば考えすぎかもしれませんが、アメリカ中間選挙が間近に迫る中、リップサービスとして12月は「状況次第ではやや緩やかな引き上げもありうる」と述べるかもしれません。そうすればほぼ総崩れとなったGAFAMを中心としたハイテク株に薄日が差す公算もあります。選挙は株価対策というのは洋の東西を問わないのですが、バイデン大統領はこの部分をすっかり忘れてしまったようです。パウエル氏が援助の手を差し伸べるか注目されます。金曜日のNY市場の大幅高は催促相場のようにも見えます。
もう一つ、私が見ているのは円ドル相場でこちらは以前申し上げたようにプラザ合意で生み出したドル円のレンジ相場を抜けずに済むのではないか、という気がしています。アメリカの利上げ圧力が下がれば米ドル一強は崩れます。つまり円高に向かう公算です。年末140円を割るぐらいまで戻してもおかしくない気がしています。日本は10月に再開国したばかりですがこのインパクトは大きく、「濃霧で忘れられていた神秘の国」がうっすらとでも姿を表せば日本再評価にもつながってくるでしょう。23年は日本向け不動産投資の活性化を見込んでいます。あの目黒雅叙園もついにカナダのファンドの手に落ちそうな勢いです。
不評な39兆円総合経済対策
岸田首相ほど何をやっても受けない方も少ないでしょう。一言で言うと「頓珍漢」でセンスに欠けるのだと思います。今回、29兆円の補正予算、国と地方合算で39兆円規模の対策、民間資金も入れれば71兆円と目がくらくらする数字が並びます。しかも岸田氏は当初の25兆円の補正予算案に「足りない!」として4兆円上乗せさせています。財政規律については一切質問に答えていません。
何が不評かといえば「数字ありきのバラマキ」です。上述したように日本は再開国し経済は上向きになります。総需要が足りないのは鎖国し様々なコロナ規制を敷いていたことが大きく、これは今後、変わるでしょう。また総需要が足りないと指摘されますが、総供給が多すぎると誰も指摘しないのも片手落ちです。また経済対策の中身を見るとインパクトがあってわかりやすいものが少ない上にアクセルとブレーキを両方踏む内容もあります。例えばエネルギー補助金を出せば輸入額は増え、貿易赤字は増え国力を削ぎます。英国のトラス前首相の史上まれに見る失態と重なる部分もあるのです。
インフレ対策と銘打っており標準家庭で45000円ほどの負担軽減になるとされます。問題はこれで余剰が消費に回るのかであります。個人的には我慢を強いられた生活をしている人は限られており、支出軽減がそのまま貯蓄に回る公算が高いとみています。特に高齢者層ではその傾向が強いでしょう。つまり、極端な話、39兆円の政府支出は家計への付替で、経済学的に期待したい社会全体へのお金のトリクルダウンが生じないとみています。今のGoToキャンペーンも同様で誘い水になるものの売り手側はコロナ禍と違って、値上げするのではないでしょうか?政府は為替介入でしこたま儲けたのだからその還元ぐらいに思ったほうがいいのかもしれません。
加速する世界の不和
ブリンケン国務長官がカナダに来ています。理由はカリブ海のハイチの非常事態についての協議です。日本のメディアは一切着目していませんが、昨年、大統領が暗殺され、大地震もあり現在、大変な飢餓状態となっており国体維持の危機にあります。そんな問題を抱えた国は今、地球儀を見渡せばいくらでもあります。スリランカ、パキスタン、スカーフ問題で揺れるイラン、北朝鮮、ミャンマー、中国チベット自治区のデモ、南アフリカは2年間の国家非常事態宣言を解除したら次はテロのリスクが急浮上しています。これらは自然現象やコロナが原因のものもあれば政治的問題もあります。
今週末、ブラジルの大統領選、最終決戦があり、現状、左派のルナ氏が優勢ですが、現職の右派、ボルソナロ氏は負けを認めないのではないか、とされています。トランプ氏の退任劇と全く同じ構図が再現される可能性はあり、国は二分しています。イタリアでは極右、ファシズム源流のメローニ氏が首相につき、どんな施策に打って出るのか注目されています。一部では短命だろうと言われていますが、英国の前首相のようになるのか、あるいは世界を震撼させることが起きるのでしょうか?
左派化する国家が増えているのは富と権力の偏在化が理由でしょう。一方、現代の資本主義は寡占化し、優勝劣敗が推し進められやすい仕組みになっています。これが国民が期待する財やサービスの提供とならず、不満が鬱積しているのでしょう。サクセスストーリーも効率化も企業買収も全て資本主義ゲームの一環ですが、そこには社会還元の仕組みが欠落しています。1‐2年前にSDG’sが話題になったのにその言葉をメディアで見ることは激減しています。加速する世界の不和の背景はそのあたりにも理由がありそうです。
後記
世の中、決算発表真っ盛りですが、私の主要2社の9月年度末決算が昨日ようやく終わり、会計士にファイルを送りました。売り上げは最高更新、利益は税務対策を施し、どうにか妥協できるところで着地です。これから今年度の予算作成に入るのですが、厳しめに見積もるつもりです。どうみてもポストコロナで踊り過ぎです。一部の取引業者から泣きが入っているのは全般にコストコントロールが効いていない証拠でしょう。来年の景気後退はマイルドだと思いますが、しっかりシートベルトは締めておきます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月29日の記事より転載させていただきました。