「日本インターネットガバナンスフォーラム2022 ~IGF 2023日本開催を見据えて~」が今週、開催される。10月26日がプレイベント、27日・28日がテーマセッションという日程で、会場はエッサム神田ホール1号館(東京都千代田区)だが、オンラインでも参加できる。参加するには10月25日17時までに登録が必要で、参加費は無料。会場の定員は50人、オンラインの定員は設けていない。
現代のインターネットの課題は、リテラシーの向上や権利の保護といった個人レベルのことから、通信インフラや事業環境の整備、情報セキュリティという社会レベルのこと、国家間対立のような国家レベルのことまで多岐にわたっている。
このような課題を解決するために国連主導でスタートしたのが「インターネットガバナンスフォーラム(Internet Governance Forum:IG)」であり、「広くさまざまな関係者が『対話』する拘束力のない『場』」として2006年から毎年、会合が行われている。参加者は、国連加盟国をはじめとする政府や政府間組織、民間、技術コミュニティ、市民社会と幅広く、これらの参加者が課題解決に向けた知恵を出し合う。来年の「IGF 2023」は日本での開催が予定されている。
今回行われる「日本インターネットガバナンスフォーラム2022 ~IGF 2023日本開催を見据えて~」は、「今、改めて問われるインターネットの自由」をテーマに開催。IGF 2023の日本開催に向けて発足された「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」が主催する。日本政府、ビジネス、市民社会、技術コミュニティなどマルチステークホルダーのグループだ。
10月26日の「Day 0」(15時~16時30分)はプレイベントとして、「バーチャル美少女ねむさんとのトークイベント『メタバース時代のインターネットガバナンス』」を開催。メタバースの定義や必要な機材、メタバース時代のインターネットガバナンスなどをテーマにしたトークショーのあと、寄せられた質問に答える。
10月27日の「Day 1」(15時~18時30分)は、オープニングセッション「今、改めて問われるインターネットの自由」ののち、テーマセッション1の「電気通信事業法の改正とインターネット・ガバナンス」において、改正電気通信事業法について解説する。電気通信事業法の改正は「ユーザー保護」がポイントとなっているが、何が問題なのか、どこに落ち着いたのかを踏まえて、今後どのようにしていくべきかマルチステークホルダーで検討する。
テーマセッション2の「オンライン海賊版の現状と、対策の現在地点」では、海賊版サイトの問題を共有・討論する。「漫画村」などの海賊サイトの対策では、出版社の対策チームが3大サイトを閉鎖させたりするなど成果を挙げているが、漫画村の“後継サイト”は次々に生まれている状態だ。CDNを悪用し、ドメインホッピングで追及の手を逃れているケースや、拡散防止、検索エンジン、SNSなど、現在直面している問題について共有する。
10月28日「Day 2」(15時~18時30分)のテーマセッション3「スプリンターネット2.0」は、“スプリンターネット(分割したインターネット)”の問題についてだ。最近では、ウクライナ政府がICANNとRIPE NCCに対してロシアのドメインとIPアドレスの無効化を申し立てた。これはスプリンターネットにつながり、インターネットの根幹を揺るがす事態になりかねない。このセッションでは、現状は本当にインターネットは一枚岩であるのか、そもそも一枚岩であることに合理性はあるのか議論する。
テーマセッション4「日本のインターネット(通信網)は大丈夫か?」では、2つのテーマが掲げられている。1つ目は「全国網の課題」だ。ISPの利用料金は全国一律だが、一般的には東京から離れるほどコストが高くなる。また、P2Pなど一部の通信を除いてユーザー間で直接通信をしたり、学校のオンラインホームルームのように多くのユーザーが同じ時刻に同時に接続することはなかった。このようにインターネットの利用形態が変化している現在、日本のインターネットも変わっていく必要があるとしている。
2つ目は「レジデンシャルネットワークの課題」だ。IPv4アドレスが枯渇し、IPv6の利用が進んでいるが、その際、IPv4とIPv6の通信が混在できるトランスレーターが必要だ。しかし、接続を誤るとブロードバンドルーターのNATを使うことになり、IPv4とIPv6やアドレスの変換が正しく行われず遅延が発生したり、場合によっては通信できない障害が発生したりする。このような家庭内ルーターの課題と、家庭までのラストワンマイルに関係する課題を報告する。
最後に行われるのは、特別セッション「IGF2023日本開催へ向けて」。インターネットガバナンスとは何か、IGF 2021で議論されたインターネットの「2030年の悲観的なシナリオ」の論点を参考に、IGF関連の会合が初めての人でも参加できるかたちで議論するとしている。