1. 接触確認アプリ「COCOA」は機能停止へ
新型コロナウイルス感染症が広がり始めた2020年半ばにリリースされた接触確認アプリ「COCOA」がその役割を終えようとしている。これは感染者数の増大によって、感染者の全件届出をする医療機関の負荷が高まったことから、今後、届出をするのは高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人にとどめるという方針が出されたことによる。
これに関して河野太郎デジタル大臣は「具体的なスケジュールについては『未定』」であるとし、「もうしばらくアプリはそのままにしておいていただき、具体的なスケジュールが決まった段階でアンインストールなどのお知らせをしたい」と述べている(ケータイWatch)。今後は「COCOAに関する反省と次に生かすための知見をまとめる目的で、利用者調査のお願いと接触情報の提出のお願いを含んだ『機能停止版』の検討および開発」も検討されているようだ(INTERNET Watch)。
COCOAに対しては立ち上がり時期からその運用をめぐり、不備や問題も指摘されてきた(ITmedia、ITmedia)。しかも、濃厚接触したときに通知が来るという「お守り」としてインストールしているだけで、日常的に得られるメリットが感じられていなかった。しかし、ここのところ、COCOAのログファイルを分析するウェブサービスが独自に開発されて、どのような行動をしたときに、何人くらい感染者と、どのくらいの距離で接近機会があったのかを可視化できるようになってきている。こうしたサービスと組み合わせる工夫が広まりつつあるところだっただけに少々残念なところもある。いまとなっては致し方ないことだが、こうした日々のレポート機能が当初からあれば、より興味を持って積極的な利用をした人も増えたかもしれない。
ニュースソース
- 河野デジタル大臣「COCOAアプリは機能停止へ」、コロナ全数把握のルール変更で[ケータイWatch]
- 機能停止の「COCOA」、アンインストールはもう少し待って――中の人が異例の呼び掛け[INTERNET Watch]
- 「COCOA」は本当に“役立たず”だったのか?[ITmedia]
- COCOA“失敗”の原因、当初の開発者が振り返る ユーザーから「役に立った」の声も[ITmedia]
2. iPhone 14で始まった衛星を使った通信機能
iPhone 14にはいくつかの新機能が追加されたことは周知の通りだが、衛星通信機能がこれからの話題になりそうだ。
これは通話をするものではなく「緊急時に限られ、通話はできず、テキストメッセージにのみ対応し、メッセージの送信には約15秒かかる。『iOS 16』に組み込まれた緊急SOS機能は、iPhoneを衛星に接続するために端末をどの方向に向ければよいかをユーザーに示し、円滑な緊急連絡を手助けする。また、衛星を介して自分の位置を『探す』機能で共有することもできる」という機能だ(CNET Japan)。しかも、いまのところ北米だけで提供されるようだが、いずれは国際展開もありうる。
記事によれば「アップルのサービスを実現する上で、Globalstarが衛星運用を担う。Globalstarの持つ周波数であるバンド53/n53(2.4GHz帯)の容量のうち85%を用いる」、さらに「両社はサービス提供に向けて地上ネットワークの強化や新たなゲートウェイの構築、地上予備衛星の打ち上げなどを実施した」ということだ(ケータイWatch)。
また、SpaceXの最高経営責任者であるイーロン・マスク氏がiPhone 14に対して衛星接続を提供することについてアップルと話し合ったことも明らかにしている(CNET Japan)。いずれは「低遅延の高速インターネットの提供を目指すStarlinkの衛星ブロードバンド」も利用可能になるのだろうか。
もちろん、アップル以外でも、ファーウェイは「中国向けモデルでは衛星通信によるメッセージなどの送信ができる機能の搭載を打ち出しているし、グーグルの幹部がAndroidの次のバージョンで衛星通信への対応を進めているとSNSで言及」(ITmedia)していることから、各社とも次のインフラとしてかなり意識をしているものとみられる。
ニュースソース
- SpaceXのマスクCEO、「iPhone 14」の衛星接続めぐりアップルと協議[CNET Japan]
- iPhone 14シリーズの「衛星通信でSOS」、アップルは米Globalstarと提携[ケータイWatch]
- iPhone 14で注目集める「スマホと衛星の“直接通信”」 急速に実用化が進む背景とは[ITmedia]
3. デジタル化が進む行政手続きの簡略化
事あるごとにデジタル化が遅れていると指摘される行政の手続きも一歩ずつ改善されているようだ。
デジタル庁は給付金などの給付事務を行う行政機関に対して、公金受取口座登録された口座情報の提供を開始すると明らかにした(日経XTECH)。公金受取口座登録制度「銀行などの預貯金口座情報をあらかじめ自身のマイナポータルに任意で登録しておく制度で、国民は給付金申請の際、申請書への口座情報の記載や通帳の写しの添付が要らなくなる。行政機関は口座情報の確認作業が不要になり、給付事務を簡素化できる」ことがメリット。
さらに、電子納税証明書(PDF形式とXML形式)の交付、納税証明書の郵送による書面交付を、従来のe-Taxソフト(WEB版)に加えて、e-Taxソフト(SP版)からも申請ができるようになる(Impress Watch)。
また、消防庁は救急隊による搬送時に「傷病者のマイナンバーカードを活用して、救急業務の迅速化や円滑化を図るための実証実験」を実施すると発表している(ケータイWatch)。これにより「健康保険証として利用できるようになったマイナンバーカードから読み取れる医療情報を救急業務に活用し」、本人の同意のもとで「薬剤情報、特定健診等情報、透析・医療機関名などを取得。これにより、搬送先医療機関の選定などを円滑にし、より迅速な傷病者の搬送を目指す」としている。
そして、これまで規制されていた分野でも進展が見られる。「企業が銀行口座を介さず、スマートフォン決済アプリや電子マネーに給与を振り込むデジタル給与」が2023年春にも可能になると報じられている(日経XTECH)。これは厚生労働省が9月13日の労働政策審議会労働条件分科会で制度設計案を示したことによる。
ニュースソース
- デジタル給与が2023年春にも解禁、厚生労働省が制度設計案[日経XTECH]
- デジタル庁が公金受取口座登録の情報を行政機関に10月から提供、給付事務を簡素化[日経XTECH]
- マイナンバーカードから病歴確認、迅速な救急搬送の実現に向け実験[ケータイWatch]
- 電子納税証明書(PDF)の請求・受取がスマホで可能に[Impress Watch]
4. 2日連続のe-Gov障害について河野デジタル大臣が報告
9月6日・7日に発生した行政情報の総合窓口サイト「e-Gov」の接続障害について、河野太郎デジタル大臣がメディア向けに説明をした(ITmedia)。
それによると、6日の障害は「原因は外部から大量のアクセスを受けるDDoS攻撃だった可能性が高い」としている一方、7日の障害は「原因はシステム内部の問題であり、外部からの攻撃の影響ではなかった」ということだ。すでに「ロシアを支持するサイバー犯罪集団『KILLNET』が攻撃を仕掛けたことをほのめかしている」ことは知られているが、「どの程度詳細を分かっていてどのように対応しているのかという手の内を明かすことは相手を有利にするだけ」という理由から、詳細には言及していない。
これからこうした犯罪も増えることが予測されることから(ITmedia)、デジタル庁をはじめとして、防御体制はより一層の強化と適切な情報公開も必要となる。
5. 「デジタルツイン・キャンパス ラボ」が本格始動――慶應義塾大学SFC研究所とソフトバンク
慶應義塾大学SFC研究所とソフトバンクは神奈川県藤沢市の慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に設立した「デジタルツイン・キャンパス ラボ」をこの10月から本格始動させると発表している(CNET Japan)。記事によれば、この施設は「5GやBeyond 5G/6Gなどの先端技術を活用する、次世代の情報インフラを研究開発する場になる」という。「各種センサーや動画像認識、空間センシングなどを活用し、キャンパス空間をより精緻にデジタル化。実際のキャンパスとなる物理空間とデジタル化したキャンパスとなる仮想空間を相互連携させ、問題発見や課題解決、自己位置推定技術といった研究開発を実施」することが計画されている。来たる9月29日にはシンポジウムも計画されていることから、今後の予定や将来の構想についてより詳しく報じられることになるだろう。
ニュースソース
- 慶大SFCの「デジタルツイン・キャンパス ラボ」が本格始動–ソフトバンクと共同で[CNET Japan]