時計を名乗っているのだから、そこに視線を向けた時には時刻を教えてほしい。当たり前の願望だ。ところが、そんな当たり前の願いをかなえてくれるスマートウォッチ/バンドは、ごく一部の製品にすぎない。それでもだんだんと充実してきてもいる。今回は、比較的新しい製品として、「Amazfit T-Rex 2」とシャオミの「@@link|https://www.mi.com/jp/product/xiaomi-smart-band-7/|Smart Band 7」を試してみた。
ついに1週間超を確保した常時点灯機能
金額的にもサイズ的にも真逆の立ち位置にいるともいえる両モデルだが、両方とも、画面の常時点灯機能を備えたスマートウォッチ/バンドだ。選択肢はどんどん増えている。
Amazfit T-Rex 2は、アウトドアに特化したGPS内蔵スマートウォッチで、そのタフネスが大きな特徴となっている。その代わり大きく重い。ストラップ込みの重量66.5グラムの丸型盤面で、AMOLEDの解像度とサイズは454×454ドット 1.39型となっている。計算すると画素密度は約460ppiとなる。明るさは1,000cd/平方mだ。カタログスペックでは24日間のバッテリ寿命を誇る。
一方、Smart Band 7は、評価の高いシャオミのSmart Bandシリーズの最新版として発売された製品で、そのミニマムなサイズ感が魅力だ。ストラップをつけた状態での実測で約25グラムは秀逸だ。盤面は矩形、AMOLEDの解像度とサイズは192×490ドット1.62型だ。前モデルに対して表示領域が25%広くなったという。公開されている画素密度は326ppiだ。明るさは500cd/平方mとなっている。こちらは14日間以上のバッテリ寿命となっている。
気になる常時点灯だが、どちらの製品も、設定したウォッチフェースからグラフィカルな要素を排除して消費電力を抑制するようになっている。T-Rex 2では、任意の省電力文字盤も指定できる。輝度についても常時点灯時は抑制される。どちらの時計も炎天下で時刻を確認するのは難しい。
常時点灯関連の設定では、どちらの製品も、
・自動的にオンにする – 腕に装着しているときだけオン
・設定時間にオンにする – 時間を指定してオン・オフ
・終日 – 常にオン
の3種類を選べる。「自動的にオンにする」では、時計を外すとセンサーがそのことを検知して常時点灯しなくなる。
また、そのほかに消費電力を抑えられそうな要素としては、手首を傾けて表示をオンにしないように設定しておくほか、心拍数や睡眠、ストレス、血中酸素飽和度といった各種の健康モニタリングをオフにしておくことがある。
今回の2製品を自動的に常時点灯するようにし、手首を持ち上げてもオンにならないように設定、各種の健康モニタリングをオフにした状態で日常使用しながら試してみた。輝度は最大だ。
結果、Amazfit T-Rex 2は2週間、シャオミのSmart Band 7は1週間でバッテリがほぼ空になった。常時点灯しない時のバッテリ駆動時間カタログスペックのほぼ半分といったところだ。
毎週末または隔週末の夜に充電するように気をつけて、週明けは、フル充電から使い始めるというわかりやすさはいい。やはり、この手の製品は1週間超のバッテリ駆動時間を確保していてほしい。比較的長期の出張でも充電器はいらなそうだ。ただ、Smart Band 7の1週間というのは本当にギリギリで、7日目日曜日の午前中にバッテリが切れてしまうこともあった。1週間稼働中に届くスマホからの通知の回数などにも依存するようだ。
実は同じ会社が作っている
異なるベンダーの異なる製品だが、操作方法などは酷似している。というのも、AmazfitブランドはZepp Health Corporationによるもので、同社はシャオミの協力企業でもあり、Smart Band 7の開発元でもあるからだ。
スマホにインストールするアプリも、Amazfitは「Zepp」アプリ、Band 7は「Zepp Life」アプリを使う。名前が似ているのでややこしい。異なるアプリなので2つのウォッチ/バンドとの接続を維持できるのかと思ったが、両方の製品を1台のスマホと同時に接続状態にすることはできなかった。片方と接続すると、もう片方は切断されてしまう。1つのアプリで複数の時計を運用というのができないのだ。
就寝中を含めて常時着けっぱなしを想定すると、さすがにT-Rex 2は大きく重いと思う。でも、Smart Band 7なら現実的だ。だからこそ、両者を付け替えて同時に使えるようになっていればよかった。むしろそうすることで、同系列のアプリを使うことの優位性が出てくるだろう。使い勝手もほぼ同じなので混乱もない。
Amazfit T-Rex 2は、アウトドア指向ということもあって、GPSも内蔵し、ランニングやウォーキングなどで移動した軌跡を記録し、アプリでGoogleマップを使って確認することができる。アプリの画面はグラフィカルでとても楽しい。また、速度、高度、勾配分布、ケイデンス、ラップ、心拍数など詳細データが細かく記録され、あとで確認することができる。
このデータの一部は、GPXファイルとしてエクスポートもできる。これをGoogleマップで読み込めば、パソコンの大きなモニタで移動履歴等を確認することもできるが、全データを読み込めるPC用のアプリも用意してほしかったところだ。欲をいえばExcelなどに出力して分析したいとも思う。どうにもスマホと時計だけで完結したい姿勢が見てとれる。
完成に近づいたスマートウォッチ/バンド
時計としていつでも時刻を確認することができ、スマートウォッチ/バンドとして、スマホからの各種通知を的確に伝える。そして、必要に応じて各種の運動情報を記録する。また、望めば、24時間の健康モニタリングを委ねることもできる。
今回の2製品は個人的にも、もっとも気に入っている製品だ。どちらも通知などの日本語表示は、もうちょっと美しく視認性を高められそうだが許せる水準にはある。ただ、facebook Messengerアプリなどで、たまに通知をこぼす難点もあるので油断は禁物だ。
何よりも、気に入った理由の筆頭は常時点灯状態でも1週間を超えるバッテリ駆動時間だ。以前も各社の製品を紹介したが、その中には1週間を充電なしで使える製品はなかった。
常時点灯利用時のバッテリ駆動時間は長いにこしたことはない。月に1度の充電頻度で十分に満足していても、そのうち、せめて3カ月、いや半年と長期を望むようになるのは見えている。それよりも、最低限の期間として1日を超えたところで、1週間、2週間といった区切りを達成したのは本当にうれしい。これが10日間だと、充電タイミングを誤ってしまうかもしれない。毎10日ごとに1のつく日は充電の日というのは煩雑だ。週というのは区切りがいいとぼく自身は思う。時計の表示に日付が欲しいのは、それを忘れることが多いからだ。
手首を傾けて表示というのは、常時点灯にすると実用的なバッテリ駆動時間が得られないという不便に対する苦肉の策だったはずだ。腕に目をやっても暗黒のディスプレイが見えるだけというのでは、せっかく時計を身につけているのにガッカリしてしまう。それに、腕を傾けても表示がされないことも少なくなく、ちょっとしたイライラが発生してストレスを感じる。
今回紹介した両製品ともに、腕時計を身につけている時だけ常時点灯がオンになるというモードが実装されているが、個人的にはキーボードを叩くときなどは時計を腕からはずして傍らに置いておきたいと思う。その時に時計に目をやっても何もわからないというのは寂しい。
すでに、これ以上をスマートウォッチ/バンドに何を望むのかと言われそうなくらいに機能は充実した。1万円以下で購入できるSmart Band 7でも不満はない。願わくば、24時間表示の時刻と日付、そして日本語での曜日表示、願わくばバッテリの残り容量だけをもっとシンプルに大きく表示するウォッチフェイスが欲しい。今回の2製品はシンプルな表示をサポートする方だとは思うがまだ足りない。
ついにここまできた感のあるスマートウォッチ/バンド。でも、バッテリが劣化したらそれでおしまいというのはなんとかしないといけない。これまではバッテリが劣化する頃には世代が進み、別のデバイスのような進化が得られていた。だから買い替えようという気にもなれた。でも、これからはその進化速度は落ちていく。バッテリが寿命を迎えたことで、デバイスそのものを処分することになるのはつらい。バッテリの交換にもコストがかかる。場合によっては買い換えの方が安上がりの可能性もある。完全ワイヤレスイヤフォンなどでも同様だ。
仮に1度の充電で1カ月バッテリが持つなら、バッテリの寿命はデバイスの寿命とは無縁になるだろう。バッテリとの一蓮托生運命共同体的腐れ縁は、ウェアラブルデバイスの宿命かもしれないが、このあたりをどう解決するかが、このカテゴリの製品の次の課題だといえそうだ。
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