深夜に起きているとネガティブな思考が強まって暴飲暴食に走ってしまうのはなぜか?

GIGAZINE
2022年08月05日 23時00分
メモ



夜中にネガティブな考えが浮かんでしまい、寝付けなくなっているうちに思わず何かを口に運んでモグモグしてしまったことのある人はいるはず。人間は夜中に目を覚ましているとポジティブな感情よりネガティブな感情に注意が向きやすくなり、さまざまな行動の抑制が効かなくなるそうです。なぜ人は夜になるとネガティブな思考をしてしまうのかについて、ハーバード大学の研究チームが見解を論文にまとめています。

Frontiers | The Mind After Midnight: Nocturnal Wakefulness, Behavioral Dysregulation, and Psychopathology
https://doi.org/10.3389/fnetp.2021.830338

The Human Mind Is Not Meant to Be Awake After Midnight, Scientists Warn
https://www.sciencealert.com/the-human-mind-is-not-meant-to-be-awake-after-midnight-scientists-warn

深夜になるとネガティブな感情が増幅されてしまうのは、「Mind after Midnight」という仮説で説明されています。これは、人間の体と心が24時間の自然な活動周期に従っているため、感情や行動にも時間が影響を及ぼしているというものです。

例えば、夜中から朝6時までの自殺のリスクは、他の時間帯に比べて3倍高いとする研究結果が報告されています。実際に1時間当たりの自殺数と自殺率(折れ線)を見ると、起きている人(Population Wakefulness、棒グラフ)が低くなる午前3時~4時あたりで、自殺率がピークを迎えていることがわかります。


また、夜間は違法な薬物を摂取する人が増えるとのこと。ブラジルの監視下薬物消費センターは、夜間はモルヒネやアヘンなどのオピオイドを摂取するリスクが昼間の4.7倍になると報告しています。

さらに、長時間の覚醒と不十分な睡眠は代謝要求を高め、覚醒状態でのカロリー消費量を補うために食物摂取量を増加させることはわかっていますが、夜間の食事は単に代謝要求の結果ではない、と研究チーム。これまでの研究で、夜間の食事によるカロリー摂取量が長時間の覚醒に必要なカロリー量をオーバーしていることはよくあることがわかっています。2016年に発表された研究では、夜間に暴飲暴食をしたくなる衝動は単なる代謝要求だけではなく、「快楽報酬への関心の高まり」が動機になっている可能性が指摘されています。


つまり、深夜の時間帯になると、人類はある種のネガティブな感情や本来危険となるはずの行動を起こしやすいというわけです。この「時間帯によって感情や行動が変化する」という現象は進化論的な観点から理にかなっていると研究チームは主張しています。人間は昼間に狩猟や採集を行う方がはるかに効率的であり、夜は休むのに最適ではあるものの、狩られる側になる危険性も高くなります。夜間にネガティブな刺激に対して注目する傾向が高まるのは、危険を察知して夜間に襲われるリスクに対処するためだと研究チームは説明しています。

研究チームは、人間は「報酬」と「動機づけ」で行動を決定する生き物であり、この報酬/動機付けシステムが変化することで、人間が本来危険なはずの行動に出てしまうのではないかと主張しています。夜間に危険なはずの行動を冒してしまうのは、脳内の神経伝達物質の活動やシナプスの飽和、報酬回路の処理に問題が生じているからではないかというわけです。そして、深夜に起きていると脳内の神経伝達物質や報酬回路に影響を及ぼすのは、概日リズムのズレに起因するのではないかと研究チームは推測しています。

ただし、これまで睡眠不足と概日リズムが人の報酬/動機付けシステムにどういう影響を与えるのかを調査した研究はないとのこと。研究チームは「パイロットや医師など、交代制勤務で夜間覚醒のリスクが高い人たちを確実に保護するために、どういう理由でMind after Midnightが起こるのかを調べる必要があります」と述べました。


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