パナソニックホールディングスは、国際芸術祭「あいち2022」の連携企画事業であるプロジェクト「Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions」において、ミスト、サウンド、ライティングを活用したインスタレーションの実証を行う。スイス連邦工科大学チューリヒ(ETHチューリヒ)、東京大学、モンタージュらとともに、新たな空間演出のあり方を模索する。
「Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions」(c)Ayako Suzuki、(c)T_ADS Obuchi Lab
Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructionsは、7月30日から10月10日まで、愛知県常滑市で開催されているプロジェクト。木造建築をミストや光、音を加えて演出するインスタレーションになる。在日スイス大使館が、ETHチューリヒのGramazio Kohler(グラマツィオ・コーラー)研究室と東京大学のT_ADS 小渕祐介研究室と共に実施しており、建築におけるデジタルプロセス、人とロボットとの協働、技術的、文化的相互作用を追求するスイスと日本の協働プロジェクトになっている。
東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻T_ADS准教授の小渕祐介氏は「タイトルの築き合うとは、建設することと同時に、「気がつく」など、一緒に共感する形で気づきあうプロジェクトという意味も込めている。地元や来場者の方にどういう形でプロジェクト体験してもらえるのか考えた結果、モンタージュの方に空間演出を、パナソニックの方にミスト、光、音の演出をお願いすることで、産学連携のプロジェクトになっている」と説明した。
木造建築は、ETHチューリヒがスイスで組み立て、コンテナを使って日本に送られたもの。ETHチューリヒのHannes Mayer氏は「釘やネジなどの金属を使わず、完全に木材だけで作り上げたことが最大の特徴。組み立てはロボットが行っている。私たちは、宮大工などの伝統的な手法をロボットにどのようにアップグレードするかを模索している。単なる仕事の置き換えではなく、ロボットが伝統技術を請け負うことで、神社仏閣など限られた環境でしか使われていない宮大工の技術を、現在の建築に取り入れられるようになる」と話した。
スイス連邦工科大学チューリヒでの組み立て(c)Ayako Suzuki、(c)T_ADS Obuchi Lab
木造建築には、のれんのようなものがつけられているデザインで、これは常滑焼の陶器で作られたもの。「常滑焼の作家の方に協力していただいた。陶器は水を吸い込み、蒸発し、周りの空気を冷やすという環境効果がある」(東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 T_ADS学術専門職員の小俣裕亮氏)と詳細を話した。
陶器ののれん(c)Ayako Suzuki、(c)T_ADS Obuchi Lab
パナソニック ホールディングスが手掛けたミストも、噴霧することで、周りの温度からおよそ3~5度冷却する環境効果があるとのこと。採用しているのは、極微細ドライ型ミスト「シルキーファインミスト」。平均粒径6マイクロメートルの極微細ミストで、「濡れずに漂う」ことで、雲海のように足元を覆うような演出が可能になる。
パナソニックでは、ミストを用いた空間演出を「MORPHIC(モーフィック)」と名付け新たな空間演出のあり方を創造しており、今回も照明や音響と組み合わせ活用しているとのこと。「ネガティブをゼロにする暑さ対策だけでなく、『涼を楽しむ』空間づくりに使っていきたい。風鈴の音を聞いて風を感じるような、五感の相互作用によって涼しさを感じ、涼を楽しむ空間を、ミスト、サウンド、ライティングを使って作り上げる」(パナソニックホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部主幹の田端大助氏)とした。
空間演出はモンタージュが担当。「会場となる常滑市に訪れたところ、高台があり、風が吹き抜けていた。風が強いという環境特性も取り込めないかと考え、センサーによって風向きや風力をセンシングし、照明や音響がリアルタイムで変化していくプログラムにした」(モンタージュ 制作部プロデューサーの大田俊吾氏)とし、昼と夜でまた違う雰囲気を楽しめるという。
会場には、合計102本のミストノズルを設置しており、過去最大規模の実証になるとしている。