マウスコンピューターのクリエイター向けブランド「DAIV」シリーズから、ノートPCラインナップの最新モデル「DAIV 6」シリーズが登場した。新シリーズのラインナップは4種類。「6H」「6N」「6P-RT」「6P」と4種類のラインナップで展開され、新たに設計されたボディを共通して採用。薄型軽量とクリエイティブ適性の高いハイパフォーマンスを両立しているのが特徴で、4モデルのラインナップ中、上位3モデルは外部GPUとしてGeForce RTX 30シリーズを搭載している。
今回はシリーズ最上位の「DAIV 6H」のハイスペックモデル「DAIV 6H (プレミアムモデル) [Windows 11]」の評価機を入手したので、レビューしよう。
今回レビューする評価機「DAIV 6H (プレミアムモデル) [Windows 11]」の主なスペックは以下の通り。Core i9-12900H、GeForce RTX 3070 Ti Laptop(8GB)、64GBメモリ、2TBの高性能SSDを搭載するぜいたくな内容だ。
【表1】DAIV 6Hの主なスペック | |
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CPU | Core i9-12900H |
CPUコア/スレッド数 | 14コア/20スレッド (6Pコア/12スレッド+8Eコア/8スレッド) |
CPU周波数 | Pコア:最大4.7GHz Eコア:最大3.5GHz |
メモリ | 64GB(32GB×2、PC5-38400) |
ストレージ | 2TB NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4) |
グラフィックス機能 | NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti Laptop(8GB) Intel Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
ディスプレイ | 16型液晶ディスプレイ、非光沢、Dolby Vision対応 |
表示解像度 | 2,560×1,600ドット |
サウンド | ステレオスピーカー(Dolby Atmos対応)、デュアルアレイマイク |
インターフェイス | HDMI、SDメモリーカードスロット(UHS-I対応)、Thunderbolt 4、USB Type-C 3.1(DisplayPort Alt Mode、USB PD対応)、USB 3.0×2、ヘッドフォン/マイク兼用端子 |
通信機能 | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5 |
カメラ | 200万画素、Windows Hello顔認証対応 |
バッテリ駆動時間 | 約11.5時間 |
ACアダプタ | 180W、独自端子 |
サイズ | 353.7×245.3×18.5mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約1.65kg |
OS | Windows 11 Pro |
カジュアルに持ち運べるスリムで堅牢なボディ
新設計されたボディは、ハイスペックなクリエイターPCのイメージからすると意外なほどスリムでコンパクトな印象。カジュアルに持ち出せるサイズ感と重量だ。フラットなフォルムなのでブリーフケースタイプのバッグへの収まりもよい。具体的な公称サイズは、353.7×245.3×18.5mm(幅×奥行き×高さ)、公称重量は約1.65kgだ。
ボディ素材にはマグネシウム合金を採用しており、堅牢性も兼ね備えている。シンプルなフォルムだが、金属ならではの質感の高さを生かした丁寧な表面仕上げがされていてビジュアルもよい。すべすべとした手触りで指紋が付きにくい点も好印象だ。
ACアダプタも薄型軽量で持ち運びやすい
ACアダプタの出力仕様は180W。高性能な外部GPUを搭載しているだけにこれくらいの出力は必要だが、それでいてサイズは驚くほどにコンパクト。65Wあるいは90WクラスのACアダプタのような見た目だ。
具体的なサイズは、実測で約64×113×23mm(同)、重量は標準のACケーブル込みで実測約484g。さらに軽量なショートタイプのACケーブルもオプションで用意し、持ち出して使うときの重量を軽くできる(ケーブル込みで実測約359g)。
また、左右側面のUSB Type-C(右はThunderbolt 4対応)は、いずれもUSB Power Delivery(PD)に対応する。本来180Wの出力を必要とするため、USB PDでの動作中はグラフィックス性能が制限されるものの、USB PDの100W対応機器であれば本体への充電が可能だという(すべての機器の動作が保証されるわけではない)。
いざというときに、市販のUSB PD対応ACアダプタやモバイルバッテリが使える柔軟性はとても心強い。ちなみに、今回試しにレノボの60WのUSB PD対応ACアダプタを使ってみたところ、YouTube動画を1時間ほど見ている間にバッテリの残容量が100%から減ることはなかった。
Alder Lake-Hこと最新の第12世代Coreプロセッサを採用
CPUには、Intel最新の第12世代Coreプロセッサを採用。高性能ノートPC向けとされる「Hシリーズ(開発コードネーム:Alder Lake-H)」の中でも上位のCore i9-12900Hを搭載している。
この世代では性能優先のPコアと電力効率優先のEコアを最適に使い分けるハイブリッドアーキテクチャを採用することで、大幅に性能を底上げしている。
このCore i9-12900Hは、6Pコア/12スレッド+8Eコア/8スレッドの合計14コア/20スレッドを備える仕様で、写真のRAW現像、レンダリング、動画エンコードなどのクリエイティブワークワークをパワフルにこなすことができる。
DDR5メモリを最大64GB、PCIe 4.0 x4接続SSDを最大4TB搭載可能
メモリとストレージは、BTOでカスタマイズしてオーダーすることが可能だ。メモリは最新の高速規格である「DDR5-4800(PC4-38400)」を採用。最大で64GBまで搭載できる。ストレージはPCIe 4.0 x4接続のM.2 SSDのデュアル構成が可能で、最大で4TBまで搭載することできる。
クリエイティブではゲーム以上にメモリとストレージの速度、容量が快適度に貢献する場面が多く、大容量を選択できるのはとてもありがたい。
クリエイティブにもゲームにも強い高性能NVIDIA GPUを搭載
GPUにはGeForce RTX 3070 Ti Laptop(8GB)を搭載。ノートPC向けのGeForceシリーズの中では上位のモデルで、リアルタイムレイトレーシング、DLSS/DLSS 2.0といった最新技術を活用したタイトルを含め、現行のゲームタイトルを高画質で快適にプレイできる描画性能を備える。
最近のクリエイティブツールではGPUも積極的に活用されるようになっており、レンダリング、プレビュー、エンコード、AIを活用した超解像処理や特殊効果の適用など、さまざまな処理を高速化できる。特に超解像処理など、AIを活用した処理ではAI推論に特化したTensorコアを統合しているRTXシリーズのアドバンテージが大きい。
Thunderbolt 4を含む2基のUSB Type-C。Type-Aも2基搭載
キーボードはアイソレーションタイプで、3列テンキー付き。キーピッチ約19mm、キーストローク約1.2mmといった仕様だ。白色バックライトも搭載している。
Enterキーとテンキーとの間隔が狭いことや、カーソルキーが独立して配置されておらず、タッチ感もやや頼りない。テキストの入力/編集を多用する用途では少し気になるが、それ以外であれば許容範囲だろう。
USBポートは、Type-CとType-Aを2基ずつ搭載。このうちType-Cは、右側面がThunderbolt 4対応で、左側面はUSB 3.1対応となる。いずれもUSB PDおよびディスプレイ出力(DisplayPort Alt Mode)が可能だ。
ディスプレイ出力端子は、このほかにHDMIも搭載しており、本体内蔵の液晶ディスプレイとあわせた4画面同時出力が可能。たくさんの画面で作業したいというニーズにもスマートに対応できる。
3世代前のデスクトップPCを圧倒するパフォーマンス
ベンチマークテストの結果を掲載する。評価機の構成は、Core i9-12900H、メモリ64GB、ストレージが2TB(PCIe 4.0 x4)、グラフィックス機能がGeForce RTX 3070 Ti Laptop(8GB)、OSがWindows 11 Proという内容だ。比較対象として、Core i9-9900Kを搭載した自作PCのスコアもあわせて掲載している。
【表2】比較対象となった自作PCの主なスペック | |
---|---|
CPU | Core i9-9900K |
CPUコア/スレッド数 | 8コア/16スレッド |
CPU周波数 | 3.6GHz~5GHz |
メモリ | 16GB(8GB×2、PC4-21300) |
ストレージ | Intel 760p(512GB、PCIe 3.0 x4) |
グラフィックス機能 | Intel HD Graphics 630(CPU内蔵) |
OS | Windows 11 Pro |
【表3】ベンチマーク結果 | ||
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DAIV 6H | 比較用自作PC | |
Cinebench R23 | ||
CPU(pts) | 15,007 | 10,627 |
CPUシングルコア(pts) | 1,935 | 1,319 |
CrystalDiskMark 8.0.4 | ||
SEQ1M Q8T1/Read | 3,925.98 | 3,178.23 |
SEQ1M Q8T1/Write | 3,249.37 | 1,531.08 |
RND4K Q1T1/Read | 69.4 | 68.69 |
RND4K Q1T1/Write | 184.96 | 167.79 |
PCMark 10 | ||
PCMark 10 | 7,618 | 4,986 |
Essential | 10,635 | 9,930 |
Productivity | 10,360 | 7,311 |
Digital Content Creation | 10,891 | 4,636 |
PCMark 10/Modern Office Battery Life | ||
Battery Life | 6時間20分 | – |
Battery Life Performance | 6,454 | – |
3DMark | ||
Fire Strike | 20,162 | 1,359 |
Graphics | 22,300 | 1,471 |
Physics | 27,802 | 21,912 |
Combined | 9,462 | 457 |
Time Spy | 8,718 | 543 |
Graphics | 8,306 | 467 |
CPU | 12,139 | 8,117 |
Port Royal | 5,110 | – |
FINAL FANTASY XIV:暁のフィナーレベンチマーク | ||
1,920×1,080ドット最高品質 (SCORE) |
19,054 | – |
1,920×1,080ドット最高品質 (ローディングタイム) |
11.169 | – |
UL Procyon Benchmark Suites | ||
Photo Editing | 8,727 | 5,983 |
Batch Processing | 8,461 | 5,405 |
Image Retouching | 90,002 | 6,623 |
Video Editing | 7,566 | 1,553 |
Video Editing Export | 7,566 | 1,553 |
CPUの馬力がストレートにスコアに反映される「Cinebench R23」では、マルチスレッド(CPU)で約1.4倍、シングルスレッド(CPUシングルコア)で約1.6倍と、比較対象を大きく上回っており、第12世代Coreプロセッサの優秀さ、そして本製品もしっかりそれを引き出していることが分かる。
実際のアプリを使ってPCの用途をシミュレートする「PCMark 10」でもEssentials(日常操作)、Productivity(オフィス作業)、Digital Content Creation(デジタルコンテンツ制作)、いずれも比較対象を圧倒。特にクリエイティブアプリを利用したコンテンツ制作をシミュレートするDigital Content Creationでは旧世代PCの2倍以上のスコアを記録し、総合スコアでも約1.5倍のスコアをマークしている。
「3DMark」によるゲーム性能もご覧の通り。2,560×1,440ドット、あるいは1,920×1,080ドットの解像度において、ゲームを高画質でプレイできる水準のスコアが出ている。「UL Procyon Benchmark Suites」のPhoto Editing(写真編集)、Video Editing(動画編集)のスコアも非常に優秀だ。
クリエイティブの実践テストでも良好な結果
Lightroom ClassicとPremiere Proでの手動計測テストも行なった。Lightroom Classicで計測したのは以下の4つの処理だ。
- 500枚のRAWデータ(4,240万画素)をカタログへ読み込み、プレビューを作成
- 読み込んだ500枚のデータにプリセットの現像パラメータを適用し、プレビューを更新
- 現像パラメータを適用した500枚のデータを長辺3,000ドットのJPEGファイルとして出力
- 50枚のRAWデータ(2,420万画素)を「スーパー解像度」機能による超解像処理でピクセル数を4(2×2)倍にする
結果はご覧の通り。特にJPEG出力とスーパー解像度では比較対象を大きく上回った。JPEG出力は、プログラムがCPUのメニーコア/メニースレッドを効果的に利用できるよう最適化されていることに加えて、負荷としては軽い処理を大量に行なう内容だけに、CPUのマルチスレッド性能や、メモリの性能/容量もかなり効いているものと思われる。
【表4】Lightroom ClassicおよびPremiere Proでのテスト結果 | ||
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DAIV 6H | 比較用自作PC | |
Lightroom Classic CC(秒) | ||
カタログへ登録(4,240万画素RAW500枚) | 17.8 | 20.2 |
プリセット適用(4,240万画素RAW500枚) | 55.6 | 64.4 |
JPEG出力(4,240万画素RAW500枚) | 186.0 | 795.0 |
スーパー解像度(2,420万画素RAW50枚) | 238.0 | 3,250.0 |
Premiere Pro CC(秒) | ||
11クリップ配置(4K60p) | 3.2 | 4.6 |
シーケンス書き出し(4K60p、H.264) | 454.0 | 2,610.0 |
動作音(環境音33dB、室温27℃) | ||
アイドル時 | 35.2 | – |
Premiere Proテスト時最大 | 55.8 | – |
また、スーパー解像度はAIを活用した超解像度処理であり、GeForce RTX 3070 Ti LaptopのTensorコア(AI推論に特化したコア)の恩恵がはっきり出ている。
Premiere Proでは、4K(3,840×2,160、H.264)のビデオクリップ11本(合計約10分)で構成したシーケンスを作成。全体にプリセットのLUTを適用、BGMを付けてクリップ間にトランジションエフェクトを設定し、ソースファイルと同じ解像度/フレームレートでMP4ファイル(H.264、ハードウェアエンコーディング)に書き出す時間を計測した。
結果はこちらもDAIV 6Hの圧勝。作業過程でプレビューがカクついたりすることもなく、ビデオ編集も快適にこなす実力を持っていることを実感できた。
高いパフォーマンスを発揮できている一方、高負荷時の動作音は大きめで、ボディの発熱もやや高めな傾向にある。少し攻めた薄型軽量化をしているだけに仕方がないところだろう。市販のノートPCクーラーなどを利用するとより快適に作業できそうだ。
高性能と可搬性を両立した強力クリエイターPC
ベンチマークテストで実証したように、DAIV 6Hのクリエイティブにおけるパフォーマンスはきわめて優秀だ。高性能なCPUとGPUを搭載し、メモリとストレージはBTOでカスタマイズが可能。さらに、16:10でsRGB相当のディスプレイ、高速インターフェイスを含め、クリエイターの道具として申し分ない。
薄型軽量でACアダプタも軽量という可搬性の高さも特筆できる付加価値だ。これだけの高性能と可搬性を両立した製品はこれまであまり例がないだけに、スタジオやロケでのテザー撮影用に持ち出したいという方、外出先やカフェなどでも作業したい場合に気軽に持ち出して使いたい方にとっては、より魅力的に映るだろう。
今回レビューした評価機「DAIV 6H (プレミアムモデル) [Windows 11]」の直販価格は42万9,800円。メモリ64GB、2TB SSDというハイスペックな構成だけに高価ではあるが、内容は価格に見合う。また、BTOでは保証期間も最大3年に延長可能。通常保証は対象外となる落下や火災、水没、盗難なども補償する「破損盗難保証サービス」なども追加できる。長く使いたい方にとっては魅力的な内容で、こちらも検討するとよいだろう。
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