子どもをしつこくSNSでいじめてくる相手を特定、その親に損害賠償請求をしたケース【どうする!? ネットの誹謗中傷】

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 今回は、当時中学2年生でいじめの被害に遭っていたAさんの事例を紹介します。2年ほど前、Aさんの母親はAさんの様子がおかしいことに気を揉んでいました。何を聞いても何でもないと言うのですが、明らかに気分が沈んでいる状態に見えるのです。その後、学校に行きたくないということで不登校になりました。

 そんな中、Aさんのスマホの待機画面にメッセージのプレビューが表示されたのをAさんの弟が見つけました。何かトラブルを起こしているような内容だったので両親に伝え、そこで母親が問い詰めると、AさんはSNSでいじめられていると告白してきました。

 学校の仲間うちでつながっているInstagramでしたが、24時間で投稿した動画が自動的に消える「ストーリーズ」という機能で、Aさんの悪口が出回っていたのです。「Aは死ね」や「ブス」といった攻撃的な悪口が繰り返し、ストーリーズに上げられていました。

AさんはInstagramで同級生から悪口を言われ続けて不登校になってしまいました(画像はイメージ)

 家族会議の結果、学校に話を持って行き、先生に相談することになりました。アカウントと生徒を紐付ける証拠はなかったのですが、いじめっ子のBという生徒が関係していると見ていたため、事実確認をしたところ、素直に認め、謝罪されました。

誹謗中傷が収まったかと思いきや再開、いじめっ子のBは「自分ではない」と拒否

 いじめっ子のBは、同じクラスのC君が好きだったのですが、C君はAさんのことを好きだったのです。それが憎らしくて、SNSでの誹謗中傷を続けていたそうです。

 Bのアカウントは削除され、誹謗中傷は収まったかのように見えました。しかし、数日後、別のアカウントでAさんに対する誹謗中傷が再開したのです。学校経由ですぐBに連絡が行きましたが、本人は「絶対に自分ではない」と言い張ります。

 そこでAさんの両親は弁護士に依頼しました。Instagramのストーリーズに上げられている誹謗中傷の内容についてスクリーンショットを保存し、Instagramに開示請求をしたのです。

Instagramでの誹謗中傷が再開しました(画像はイメージ)

 Instagramの運営元はFacebookと同じメタ・プラットフォームズで、外国法人です。仮処分や訴訟の手続きには資格やノウハウを持つ弁護士に依頼する必要があり、着手金、報酬金ともに約20万円と安くはありませんが、子どものために依頼しました。

 外国法人相手のために時間はかかりましたが、結果的にIPアドレスと電話番号が開示されました。そこで、今度はプロバイダに対し、契約者情報を開示するように請求します。

 この段階で相手には情報開示に同意するか否かを確認する通知が行きます。相手が子どもの場合、スマホの契約者である親に連絡されます。自分の子どもが誹謗中傷を行っており、弁護士が絡んでいる上に、情報開示の意見照会書が来ているのですから、通常は同意し、話し合いが始まります。

 しかし、今回のケースでは相手の親が拒否をしました。こうなると裁判を起こすしかありません。訴訟はさらにコストがかかる上、メンタル的にも負担が大きいので、ここで諦めてしまう人も多いそうです。しかし、Aさんの両親は諦めずに発信者情報開示をする裁判を起こしました。

投稿を行ったのはBの友人だった

 数カ月後、裁判所がプロバイダに対して開示するように命令する判決が出て、身元が開示されました。なんと、新たに誹謗中傷を行っていたのは予想していたBではなく、Bの友人のDという女子生徒でした。Bが謝罪するのを横目に、面白がってAさんの誹謗中傷を続けたのです。

 続けて、損害賠償請求を行いました。子どもが行った行為ですが、未成年者が他人に損害を与えた場合は親の責任となります。Aさん側は弁護士費用が100万円近くかかっているので150万円を請求しました。

 Dの家庭も大パニックになったようです。親が照会を拒否したのも、状況をよく把握していなかったことや、許可した場合に何が起きるのかよく分からなかったためだったそう。正式に謝罪もあり、DのInstagramアカウントも削除されました。その上でDも代理人を立てることになり、結果的に100万円で手打ちとすることになりました。

 子どものSNSを使った誹謗中傷は今、社会問題になっています。とは言え、お金と時間と労力はかかりますが、今回紹介したケースのように誹謗中傷を行っている相手を特定することはできます。いじめっ子の家族も大きなダメージを受けるでしょうし、賠償金の支払いという負担も生じます。誹謗中傷はしない、という意識をみんなで共有することが大切です。

ネットの匿名性を悪用する誹謗中傷が社会問題になっています。誰もが被害者になりえますし、無意識に加害者になってしまう可能性もあります。この連載では、筆者が所属する「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」が独自に取材した情報を共有し、実際に起こった被害事例について紹介していきます。誹謗中傷のない社会を目指しましょう。

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