金融市場が暴風雨に見舞われる中、必死に製薬資本に奉仕するアメリカの歪んだ医療行政

アゴラ 言論プラットフォーム

こんにちは。

今日はアメリカ食品医薬品局(FDA)がおこなったとんでもない暴挙について、ぜひお話ししたいと思います。

イメージ luza studios/iStock

金融市場は1930年代大不況並みの暴落中

まず、次のグラフをご覧ください。

とくにご注目いただきたいのは、大天井からたった7ヵ月しかたっていないのに、世界中の株式・債券市場で失われた時価総額が約36兆ドル(ほぼ4900兆円)に達しているという事実です。

今年の上半期はまだ終わっていませんが、6月21日の終値と同水準にとどまれば、S&P500株価指数は1932年の上半期以来、じつに90年ぶりの暴落を記録することになります。

気がかりなのは、コロナ禍の中で順調に株価が上がっていたFANGMAN+テスラの8銘柄中5銘柄までもが、ピークから40%以上の下落となっていることです。

FANGMANとは、Facebook(上場企業名はメタ・プラットフォームズ)、AmazonNetflixGoogle(上場企業名はアルファベット)、MicrosoftAppleNvidia、計7銘柄の頭文字を集めた造語です。

この7社にテスラを加えた8銘柄が2020~21年に起きた株式市場全体の時価総額膨張を支えていたわけで、このうちメタ、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、アップル、テスラの6社は、時価総額が一度は1兆ドルを超えたことがある「1兆ドルクラブ」のメンバーです。

すでに、ネットフリックスは▲76%、メタは▲57%、エヌビディアは▲54%、テスラは▲46%、アマゾンは▲45%8銘柄中5銘柄がピーク比で40%を超える大暴落を記録しています。

つまり、FANGMAN+テスラの8銘柄中でまだ下落幅が40%未満にとどまっているのは、グーグル、マイクロソフト、アップルの3銘柄だけなのです。

一時はヘッジファンドの先物売りが集中している株さえ買えば、どんどん値上がりしてヘッジファンドの踏み上げ買いで好成績を収められるともてはやされたミーム株」相場は完全に逆転しました。

踏み上げ買いとは、カラ売りに対する証拠金の追加請求(追い証)に応じられないカラ売り筋が、高値で買い戻さなければならなくなる状態を指しています。

業績的にはまったく買えないからこそ、ヘッジファンドのカラ売りが集中している銘柄に個人投資家が買いを入れると、流通株数が少ないのでするすると上昇していたわけです。一時の現象にもせよ、ゲームストップやAMCといった銘柄が、ミーム株相場の花形でした。

今では、正反対の形勢になっています。信用買いをした個人投資家たちが、大きな値下がりで証拠金の追加を請求されても支払うことができず、投げ売りせざるを得ないのです。

株式市場全体の時価総額激減に対応して、信用買い残も約9400億ドル(127兆円)から7500億ドル(101兆円)へと1900億ドル(26兆円)減少しています。

もう少し長期的な視点から眺めると、今回の信用買い残の膨張と収縮のスピードが異常に速かったことがわかります。

2000~02年のハイテク・バブル、2007~09年のサブプライムローン・バブル、そして2014~18年の量的緩和バブルが山脈を形成しているのに対して、今回の信用買い残膨張はずっと高いところに断崖絶壁としてそそり立ってしまったのです。

小型「成長」株はもっと悲惨

業績も株価も比較的安定しているはずのFANGMAN+テスラのような大手でさえ急落しているわけですから、個人投資家好みの小型「成長」株は、もっと悲惨なことになっています。

とにかく株価の上昇も下落も急だったので、よほど自制心、克己心の強い投資家でなければ、勝っているうちに売り抜けることはできなかったのではないでしょうか。

この死屍累々の銘柄群に、一時はファイザーとともにコロナワクチンの大量投与で収益激増が見こまれていたモデルナ株も入っていることにご注目ください。

露骨な遺伝子操作型ワクチンを市場に投入したために、いち早くコロナワクチン恩恵銘柄から脱落してしまったアストラ・ゼネカとは違い、モデルナもファイザー同様mRNA(メッセンジャーリボ核酸)タイプのワクチンを投入していました。

ところが、今回のワクチン大量投与で最大の恩恵を受けたファーザーとは違い、実用化直後からあちこちで副作用、後遺症などの薬害が相次ぎ、この会社もワクチン恩恵銘柄から脱落していったのです。

その差は次の2枚の株価チャートに歴然と表れています。


モデルナは、今回のコロナワクチンまでは実用化されていた薬品がひとつもなかった、純然たる研究開発型のベンチャー企業でした。なんとか「ピークから20%超の下落」というベア相場入りをまぬかれている製薬業界世界最大手の一角を占めるファイザーとは、企業として格の違いがあります。それにしても、2018年末の新規上場時には20ドルにも達していなかったモデルナ株がピークの2021年9月には450ドルまであと一歩と迫りながら、その後70%超の下落で100ドル台まで下がってしまったのは、あまりにも大きな乱高下でした。

製薬会社のCEOが愚痴を言うと……?

そこでもう一度ご注目いただきたいのは、直近22日の終値でモデルナ株がピークから70%未満の下落率まで戻しているという事実です。

そのときどきの時流に乗って急騰した銘柄がいったん急坂を転げ落ちるような暴落過程に入ると、かなり大きな好材料でも出ないと小さなリバウンドさえむずかしくなります

モデルナ株のピーク比下落率が76%から69.7%まで戻したについても、非常に大きな支援材料があったのです。

世界経済フォーラム主催の「ダヴォス会議 2022年」にスピーカーのひとりとして招かれていたモデルナ社CEOステファン・バンセルは、スピーチというよりこんな泣き言を言っていました

ファイザー社のワクチンでさえ、当初はアメリカ国立衛生研究所(NIH)やFDAと結託して75年間も隠蔽する気でいた治験データを情報公開法によって公開せざるを得なくなってからは、治験過程で出た死亡者の多さが衝撃を呼んでいます

モデルナはコロナワクチン実用化レースで、そのファイザーにもボロ負けしていたのです。

多くの国ではmRNAタイプのワクチンのうちファイザー製しか認可していませんし、2社のワクチンがともに認可されている国でも、消費者は明らかにファイザーのほうがまだマシだと思っています。

つまり、だれもモデルナワクチンを欲しがってくれないのは、これほど危険性の高いワクチンを平然と実用化してしまった自社の責任なのです。

にもかかわらず、モデルナのCEOがダヴォス会議で愚痴を言うと、さっそく支援に向かったのがFDAの医薬品許認可部門でした。

おっとり刀で救援に駆けつけるアメリカFDA

アメリカの医薬品行政は、毎年多額の献金をくれる大手製薬資本の言いなりになっています。この事実は、アメリカ社会がいかに深く利権政治のドロ沼にはまりこんでいるかをご存じの方なら、だれひとりとして否定しないでしょう。

アメリカの医薬品行政当局は、最近どんなに「3~6ヵ月ごとのブースター(追加接種)が必要だ」と宣伝してもあまり成人のあいだで追加接種を受ける人が少なくなっていることを懸念していました。

そこで打ち出したのが、長い人生の何年後、何十年後に遺伝子の異常が発生するかわからないmRNAタイプのワクチンを、生後6ヵ月~5歳の乳幼児にまで接種させようという、ほとんど狂気と言っても過言ではない方針です。

しかも、ちょうどモデルナCEOの愚痴を聞いたばかりだったので、成人たちの間で圧倒的に接種事例の多いファイザー製ではなく、多くの国で成人向け接種さえ認可していないモデルナ製を強引に認可してしまったのです。

この決定に至った治験データを比較すると、どちらもプラシーボ(ニセ薬)を接種したときよりは若干感染事例が下がる、つまりワクチン効率はそこそこ高いことになっています。

ただ、どちらも治験事例があまりにも少ないので、95%の信頼性の範囲内に、ワクチン接種をすると感染率が高まる、つまりワクチン接種は感染を促進するという可能性も否定できない中途半端な結論が出ています。

またどちらも有害な副作用や後遺症については、何の論拠もなく「心配するほど多くの事例が出ているわけではない」の一言でお茶を濁しています

あえて違いを言えば、モデルナ社製は4週間の期間を開けて2回の接種で済むのに、ファイザー社製は最初の接種後3週間開けて2回目を接種し、さらに8週間開けて3回目の接種で終了と合計11週間、80日近くの日数を要することぐらいです。

しかし、それは逆にファイザー製は成人向けに対して大幅に希釈しているのであとあと遺伝子異常などが発生する危険は低く、モデルナ製は希釈率が低く濃いワクチンになっているので異常の発生する危険が高いことも意味します。

FDA諮問委員会の21人は、それぞれ病理、小児病臨床の専門家、疫学、感染症対策、薬品開発などで顕著な実績のあった人たちです。その人たちがひとりの反対もなく、乳幼児へのモデルナワクチン接種に賛成したのです。

アメリカでは、医薬品行政だけでなく、学術研究者のあいだでさえ巨額の寄付や献金、研究助成をくれるスポンサーには逆らえない状態になっている証拠ではないでしょうか。

贈収賄が正当で合法的な政治活動と見なされるようになって久しいアメリカでは、学術研究者のあいだでさえ「巨額の研究助成を引き出した研究者が有能な学者」という評価が定着してしまっています。

そうした風潮を反映して「アメリカの学者の97%は、常に意見がスポンサーと一致する。残りの3%はマスコミからもSNSからも締め出されているので、何を考えているのかわからない」という言い伝えめいたものがあります。

案外、この比率は正確なのではないかと心配になってきます。もうひとつ、諮問委員会のメンバーはどんなに立派な肩書でも誠実さのない、ずるい人たちだと思います。

実名を挙げたコメントを求められると、「これで感染が防げる」とか「重症化しなくなる」とか、事実に反することはいっさい言いません

「おじいちゃん、おばあちゃんに孫の顔を見せたいけど、子どもが自覚症状のない感染者で、おじいちゃんやおばあちゃんに感染させて、重症になったらどうしようと思っていたご両親は、これで安心して孫の顔を見せにおじいちゃん、おばあちゃんを訪ねられるでしょう」という程度の「効能」しか期待できないと明言した人もいました。

ようするに、自分たちが恐怖宣伝で大げさに言いふらしたありそうもない事態への「対策」程度の気休め的な効果しかないと言うのです。

それどころか「ワクチンによる感染抑制効果は、予想以下でがっかりした」と言っているメンバーもいました。

結局のところ、将来乳幼児へのワクチン接種がどんなに悲惨な結果を招いたとしても、責任逃れをするための保身策は講じているのです。

モデルナCEOは、莫大な利益を得ている

それにつけても不愉快なことがあります。

それは、モデルナCEOの泣き言はたしかに企業業績については当てはまりますが、当人は絶対にこんなに株価が上がるほどの業績はついてこないと知っていて、自社株が急上昇していてた頃に、みごとなタイミングの吹き値売りで巨額報酬を得ていることです。

取得価額はほとんどタダみたいなものですから、まだ株価が400ドル以上だったころに売り払った1回目の売りだけで数億ドルの利益を得ていたでしょう。

2回目の放出による80億ドル弱から35億ドルまでの急傾斜は売って代金を回収した分と、株価下落による評価損が相まっての激減でしょう。

しかし、その株価下落は「CEOでさえ売りに回っているのだから、今後の上昇は期待できない」と手仕舞い売りをした投資家も多かったはずですから、自業自得と言えます。

こんな強欲な人間をもっと儲けさせてやるために、何十万人、何百万人の乳幼児を死や一生残るかもしれない障害の危険にさらすとは、開いた口がふさがらないほどひどい医薬品行政です。

最後にたった3%に過ぎないかもしれない良心的な学者や知識人も、なんとか情報発信をしていることをご紹介したいと思います。

どうか、ひとりでも多くのアメリカ国民にこうした声が届きますようにと願わずにはいられません。


編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2022年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。