ブラックホール級にヤバい宇宙の怪物「マグネター」とは?

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by European Southern Observatory

宇宙では人類の想像を超える現象や天体がしばしば見つかっており、その中でも特に有名なのが光さえも脱出できないほどの重力を持ち、極端な潮汐力(ちょうせきりょく)で近づくだけでバラバラにされてしまうブラックホールです。ブラックホールと同様に、「近づくと体を構成する原子が針のように細長くなって崩壊してしまう」という、にわかには信じられない強力な磁力を持つ天体「マグネター」について、海外メディアのArs Technicaが解説しています。

Behold the Magnetar, nature’s ultimate superweapon | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/06/behold-the-magnetar-natures-ultimate-superweapon/

◆マグネター発見の経緯
マグネターは、2つの偶然により発見されました。1つ目の偶然は、イギリスの天文学者・アントニー・ヒューイッシュ氏と、その教え子の大学院生であるジョスリン・ベル・バーネル氏が、ケンブリッジにあるマラード電波天文台で宇宙を観測していた時に、毎晩同じ場所から1.33秒ごとの規則正しい間隔で繰り返し電波信号が発せられているのを見つけたことです。

電波が地球上から発せられたものではないことを確認した両氏は、その信号があまりにも規則的なことから「電波の発信源は地球外文明かもしれない」と考えて、フィクションに登場する典型的な宇宙人であるリトル・グリーン・メン(Little green men)にちなんだ「LGM-1」と名付けました。

by JD Hancock

「LGM-1」の合理的な説明として、天文学者らは「超新星の爆発を起こした巨大な星の残骸である中性子星ではないか」との仮説を立てました。しかし、中性子星は極めて密度が高い小さな天体であるため、観測はできないだろうと思われていたとのこと。

2つ目の偶然は、アメリカがソ連の核実験を監視するために打ち上げたヴェラ衛星という人工衛星です。核爆発により発せられる放射線を宇宙から観測していたヴェラ衛星は、地球上からではなく宇宙から強力なガンマ線が繰り返し放射されているのを捉えました。

1973年になり、非公開だったヴェラ衛星の観測データが公開されたことで、天文学者らはガンマ線信号にも種類があることや、特に軟ガンマ線リピーターと呼ばれる天体は名前通り繰り返しガンマ線を放つことを知りました。そして、そのような現象を発生させる候補として白羽の矢が立てられたのが、強力な磁場を持ち高速で回転する中性子星、パルサーです。

こうした発見から、「LGM-1」の正体はパルサーであることが判明し、ヒューイッシュ氏は初めてパルサーを発見した功績で1974年にノーベル物理学賞を受賞しました。また、その後中性子星の中にもひときわ磁力が強いものがあることが分かり、そうした天体はマグネターと呼ばれることになりました。


◆マグネターの磁力
質量が大きい天体が一生を終えると、超新星という爆発を起こします。この時、残った核の質量があまりにも大きすぎる場合は重力崩壊を起こしてブラックホールになりますが、そうならなかったものは極めて高い圧力により電子と陽子が融合する逆ベータ崩壊というプロセスを経て、ほぼ純粋な中性子の塊となります。これが中性子星です。中性子がどのくらい密度が高いかというと、ティースプーン1杯の中性子星は、およそ1億トンの重さになるほどだとされています。

中性子は極めて高温であるため、中性子は液体のように振る舞い、残った電子や陽子は自由に動けるようになります。さらに、中性子星が十分な速度で回転している場合、高速回転、対流、自由に動く電荷の振る舞いにより、ダイナモの原理で磁場が発生します。地球の核でも同じ原理で磁場が発生していますが、マグネターはそれより桁違いに強力です。

例えば、地磁気の強さは約0.5ガウスで、これは太陽系にある岩石型の惑星としては最も強力ですが、MRI検査に使うような強力な電磁石は数万ガウスに達することもあります。しかし、マグネターの磁力は100~1000兆ガウス以上で、内部はさらのその10倍以上あります。つまり、マグネターの磁力は地球の約1兆倍、人類が作り出すことができる最高の磁力の10億倍も強いことになります。


あまりにも磁力が強いため、人間がマグネターから約1000kmの距離に近づくと生命活動を維持できずに即死します。さらに、マグネターの表面にまで近づくと、原子を構成する電子の軌道は細長くなり、やがて幅が長さの1%ほどしかない針状の形状になって崩壊します。当然ながら、原子同士が結びついて分子となるような結合も維持できなくなるので、マグネターに近づいた人体は文字通り原子レベルで分解されることになってしまうとのこと。

このような極端な天体であるマグネターですが、これまでに24個しか見つかっておらず、その発見の多くは銀河系の中でのものです。また、マグネターは寿命が短いので、人類が観測できるのはそのごく一部に過ぎないと考えられており、ある見積もりによれば天の川銀河には寿命が尽きたマグネターが3000万個ほどあると推測されています。

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