フライパンにみっしり入った炊きたての米です。
『フライパンで米を炊くのって意外と簡単で、慣れたら炊飯器要らないくらいだ』という話を聞いた。
今使ってる炊飯器になんの文句もないのだが、それでもその話を聞いてなんてかっこいいんだ、と思った。
やってみたいと思ったので、数日に渡って5回、フライパン炊飯をして、自分なりのコツを探した。
まず、フライパンで米を炊くことがどれだけかっこいいか説明します
テレビ、洗濯機、冷蔵庫が『三種の神器』と呼ばれていたが、炊飯器なんか確実にその後ろに控えているベンチ入りの神器と言っていい。ベンチ入りでも神器は神器だ。
その神器を「要らない、自分でやる」と言ってのけるということは、神の力を、特別な道具を使わずに自ら生み出す、つまり自分は神そのものであると宣言していることになる。
つまり「神じゃん…」ということなのだ。冒頭の話を聞いて僕は「それってさあ、神じゃん…」と思ったのだ。
おいしく炊くコツを見つけたい
だから特にフライパンで米を炊く必要に迫られてはいないのだが、かっこいいのでやってみることにした。
なぜ鍋でなくてフライパンなのかというと、底面が広くて加熱ムラが起こりにくい、お米が対流しやすいなどのメリットがあって炊きやすいらしい。初心者向けなのだ。
数日にわたって何回か炊き、おいしく炊くコツをお伝えできたら幸いである。
基本の手順
複数のレシピサイトとレビューを見比べて、フライパンで米を炊く基本の手順を自分なりに決めた。
- 米を洗う
- 水を切って、米と、米1合当たり200mlの水をフライパンに入れて、30分間浸水(米を水に浸しておく)
- 浸水が終わったら、フタをして、沸騰するまで強火
- 沸騰したら中火で5分
- 米がふっくらしたら最後に1分強火
- 火を止めて10分蒸らす
まずはご飯に芯が残るのを避けたかったのでレシピの中でも火加減が強めでしっかり加熱する物を採用した。
この手順を少しずつ改良していき『僕のフライパン炊飯』を極めていきたい。
皆さんにとっての便利なレシピが見つかると最高なのだが、調べた限りではちょっとした環境や条件に出来が左右されるし、味の好みにも個人差があるので、それは難しいかもしれない。
一応今回の炊飯の環境をお伝えしておくと、ガスコンロでアルミ素材のフライパン、米は北海道のななつぼしという品種である。近い方は参考になるかもしれません。
1回目、基本の手順で
では手順が決まったら炊いてみよう。家で一人、お昼ご飯の時にやってみた。失敗しても自分一人で食べきればいいので。
浸水の時間を除くと15分ぐらいで炊けるはずなので、うまく浸水のタイミングを作れば確かに炊飯器って要らないのかもなと思う。
不安になるくらいのあぶくが出る。米を洗剤で洗っちゃったのかもと自分の記憶を疑う。
そのうちあぶくはおさまって炊けた米っぽいものが見えてきた。
火を止めたら10分蒸らす。この間ずっとフライパンの前でぼんやりしていた。毎日の米を炊く人だったら、この間におかずを用意したりするんだろう。
炊きながら竹を見ていた。偶然韻を踏んでいる。
そんなどうでもいい韻を踏んでいたら蒸らし終わった。ドキドキしながらフライパンのフタを開ける。
フライパンからホカホカのご飯が出てきた。見慣れない光景である。
あるはずのない場所に炊きたての米がみっしり詰まっている。走馬灯に出てきそうだ。
お米がふっくらしつつ、ツヤツヤしている。おいしそうだ。
初めてフライパンで恐る恐る炊いた米だが、おいしかった。かためではあるんだけど、芯が残っているという感じではない。弾力もあるし、お米の粒が感じられておいしい。シューマイとも合う。
炊飯器で炊いた時より存在感のあるしっかりした米。おいしい。好きだ。
最初かための食感で身構えるんだけどお米の優しさがちゃんとある。人に例えると見た目怖いんだけど性格が優しい人のような感じ。
この人を万人が好きかどうかは分からないのと同様に、お米の味も万人に食べさせておいしいと言ってくれるかは分からないが、少なくとも僕はおいしいと思った。
予想よりちゃんと炊けている。その喜びが大きい。
2回目、水を増やしてみる
翌日、もっとお米にもちもち感が加わったら最強だと思い、水の量を増やしてみる。
同じくぼんやり待つが2回目なので気持ちに余裕がある。食器を出した。
最後の強火の工程でパチパチと音がするんだけど、その時におこげができているらしい。おこげが好きな人はこの音をよく聞くといい。
おいしい! 昨日よりいい。ふっくらしている気がする。でも劇的に良くなったという感じでもない。かための炊き上がりではある。
3回目、浸水を1時間に
さらに水を増やしてご飯がべショッとしてしまうのは嫌だったので、浸水の時間を増やしてみる。最初にしっかり水を吸わせるのが大事らしいのだ。
浸水1時間、水は220mlで炊いたのがこちら!
1回目2回目とは明らかに違うご飯だった。第一印象が違う。瑞々しさとお米の甘さがあった。今のところ一番おいしい。
しかし目指していたもちもち食感には届いていない。どうしてもパラパラとしたほぐれやすいご飯になる。これはこれでおいしいんだけど。
今度は時間がなくて20分の浸水で2回目までのように炊いた。
「いや、もう全然おいしいよなー」と思う。食べ慣れてきたのか、かたさも気にならなくなってきた。
子どもは、味以前に機嫌があまり良くなくてカレーをほとんど食べてくれなかった。カレーに乗せたポテトはたくさん食べた。そういう日もある。
5回目、2合炊いてみる
2日ほど空けて5回目、今までのパラパラ感は1合しか炊いてないからではないか、という考えに至った。
うちにある5合炊きの炊飯器でも、1合で炊くとパラパラ感が強くなる。調べても特別そういう風になる理由は分からなくて僕の気のせいなのかもしれないけど(釜が大きいと1合分の水が測りにくいというのはあるらしい)、
直感的に炊く器に対してある程度お米が入っていた方が、水分をたくさん捕まえておける気がする。つまり、勘だ。1合より2合炊いた方がおいしそうだし、うっかりもちもちしてくれる可能性がある。
もう5回目というのもあって穏やかな気持ちで準備を進める。
そして、そういう時に限って油断をしてしまうものである。米を洗った後、ザルで水を切るのを忘れてフライパンに入れてしまった。
いつもは水を切ってフライパンに入れてから、炊飯のための水を測って入れる。今回は水を切らなかったので、フライパンの中に想定より多い量の水が入っているのだ。
気づいた時にはフライパンからぶくぶくあぶくが出ていて、米が炊けるぞ炊けるぞとフライパンの中で踊っている最中だったので、僕はもう踊りを黙って見るしかなかった。どんな結果になっても最後まで見よう、そして食べようと思った。
様子を見つつ、水分を飛ばすために長めに加熱してみたりして、蒸らしも終えた。
おいしかった…!
この事例だけで「水加減はだいたいでいい」と言ってしまうのは危険だと思うのだが、少なくともこの時はこれでおいしかった。
不思議である。奥が深い。
妻もこの時初めてフライパンで炊いたご飯を食べてくれて、炊飯器と遜色ないと驚いてくれた。
今回のポイントである2合にしたところだけど、それによっておいしくなったような気もするし、特に変わらないような気もする。すごく微妙なところだ。
ただフライパンに1合の倍、みっしりみっしりホカホカのご飯が入っている高揚感は確実にあった。その分おいしく感じるのかもしれない。
『炊飯器が炊いたご飯』か『自分で炊いたご飯』か
今回分かったことを箇条書きでまとめた。
あと一番大きかったのが『自分で炊いたご飯である』というところである。
今までのうちのご飯は『炊飯器が炊いたご飯』だった。味がいまいちだったら炊飯器の調子を疑ったし、実際に壊れていたこともあった。
自分で炊くと良いところも悪いところも全部自分のせいで、悪いところは原因を見つけて改善しようとするので、思い通りにいかなくてもポジティブな気持ちで食べ終わる。
格別おいしいわけじゃないんだけど自分で作ったご飯がなんか好きだ、憎めない、という方はきっと楽しいと思う。
フライパンから炊きたての米が出てくるgifアニメ
『フライパンを開けるとほかほかのご飯が入ってる』というシチュエーションがおもしろくて、毎回動画を撮って全部gifアニメにした。