海底に住むワームが金属性の牙を持つ理由とは?

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BloodwormやGlyceraとして知られる環形動物の一部は、長さ1mmほどの小さい銅製の牙を使って獲物を捕らえ、まひ毒を注入することで知られています。これらの種がなぜこのような牙を持つのか、研究により新たな知見がもたらされました。

A multi-tasking polypeptide from bloodworm jaws: Catalyst, template, and copolymer in film formation: Matter
https://www.cell.com/matter/fulltext/S2590-2385(22)00153-9

We Finally Know How The Nightmarish Bloodworm Grows Fangs Made of Metal
https://www.sciencealert.com/we-finally-know-how-the-nightmarish-bloodworm-grows-its-fearsome-metallic-fangs

Bloodworms have copper jaws that could inspire self-building materials | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2317248-bloodworms-have-copper-jaws-that-could-inspire-self-building-materials/

Glyceraは最大35cmにまで成長する海の生き物で、海底の泥の中に数メートル潜り込むことができます。Glyceraは肉食性で、中が空洞になっている4本の牙で獲物にかみつき捕食します。牙には高濃度の銅を含むまひ毒を出す腺があり、人間でもかまれると痛いとのこと。


カリフォルニア大学サンタバーバラ校のハーバート・ウェイト氏らは、高度な分子および機械分析技術とモデリングを使用して、Glyceraの一種であるGlycera dibranchiataの牙がどのような成分でできているのか、どのような機能を持っているのかについて調査を行いました。

その結果、Glycera dibranchiataの牙は10%が銅で、残りの部分がタンパク質とメラニンでできていることをウェイト氏らは突き止めました。加えて、Glycera dibranchiataは自然から摂取した銅を触媒とし、アミノ酸をメラニンに変換する複雑なプロセスをタンパク質により制御していることが明らかになりました。

メラニンは色素と説明されることが多い物質ですが、銅と組み合わさることで牙の耐摩耗性を大きく向上させ、Glycera dibranchiataの寿命を最大5年延ばすことにつながっている可能性があるとのこと。


アミノ酸をメラニンに変換するタンパク質についてはほとんどがグリシンとヒスチジンでできた単純な組成であったため、ウェイト氏らは「このような簡易なシステムが機能と無関係に思える複雑なプロセスを実行し、複合材料を作成する方法に本当に驚かされます」と述べています。

ウェイト氏らは今回の調査結果がコンクリートやゴムを充塡(じゅうてん)したタイヤなどの複合材料の設計と製造を改善するきっかけになるのではと期待し、材料科学の可能性を示しています。

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